作品 | ナノ


18

「お前のこと、クソ愛してるんだ」
そんなこと言われたって、信じられるかよ。
「ウソじゃねェよお前じゃねェんだから」
嘘だと言ってくれよ。そう言おうとしたのに先手を打たれちゃ叶わねェ。
だって嘘じゃなきゃ、このずっと隠しておこうと思った感情が、隠せなくなっちまう。
悪ィけど、お前の想いには応えられねェ。
だからそう嘘をつく。だっておれなんかがお前の隣にいていいハズがねェんだから。
なのに勝手に腕引き寄せて抱きしめて「そんなウソつくんじゃねェクソが」なんて言うんじゃねェよ。
おれの気持ちなんか、知らないクセに。バカサンジが。

「じゃあなんで、そんなクソ辛そうな表情するんだ」
ぎゅうぎゅうに抱きしめられながらそう言われる。おれは今自分の感情を圧し殺したつもりだったのに、嘘をつくのがヘタクソになったのか。それともそれ以上の想いだったのか。
「…おれは、そんなにヒデェ面してんのか」
そう聞く声は震えていて、聞かなきゃ良かったと後悔した。自分のことなんか自分が一番よく分かる。ぎゅうぎゅうに抱きしめられているから腕も動かせないのに、目の縁に溜まる熱いものを拭いたくて仕方ない。胸が苦しいのも力一杯抱きしめられているせいじゃない。分かってる。分かってるけど。
「正直に、言っちまえよ」
あやすように背中を優しく撫でられて、声が詰まる。優しくしないで、吐いた嘘を信じて蹴飛ばして欲しい。今の会話も全部無かった事にして、何事もなかったように明日の朝を迎えたい。だからもう一度、同じように嘘を吐けばいいのに。
「なん、で」
気づけばそう口から出ていた。ありとあらゆる感情がグチャグチャになって、しっかりと固めておいたはずの決意やら何やらがボロボロと剥がれ落ちていく。知りたくなかったはずなのに知りたい。なんでおれなんだとか。ナミとかロビンとか女じゃないのかとか。嘘じゃないのかとかいろいろ。
「恋はハリケーンだ、おれにも分からねェ」
「…答えになってねェよ、バカ」
なのにそんな抽象的な表現で返され詰まる声でツッコんだけれど、きっとそれ以上の回答は得られねェだろう。だっておれも、なんでこんな女好きのコックに惚れたのか分からねェんだ。
だけど、あの言葉が嘘じゃねェ事が、何より嬉しくて仕方ない。
「じゃあ本当に、おれのこと」
「そんなウソつくわけねェだろ。…テメェも正直に言いやがれ」
抱きしめる力を緩めて正面からそう言われれば、もう答えるしかない。
あァクソ、一生隠し通すつもりだったのに。こんなにアッサリと。悔しいけれど、嬉しさのほうが上回った。

「おれも、サンジのこと、好きだ」

苦しくて溢れた涙が、嬉しさとともに更に湧き上がって押し流し、頬を伝う。サンジがそれを拭ってくれたけれど、どんどんと溢れ流れる。サンジのシャツを濡らしていくけれど、今だけは許してほしい。
こんな幸せな瞬間はもう二度と来ないだろうから。
「絶対離さないから、クソ覚悟しとけ」
「っ、おう!」
もう一度、今度はおれからも抱きしめて、この瞬間を忘れないように深く深くキスをした。

…ファーストキスがディープだなんて、おれだって想像つかなかったけど。
それだけ愛が深いと受け取ることにした。




受け取ったから。ウォーターセブンで決闘をして自分から突き放すとき辛かった。
だけどおれはあの時嘘はついてねェんだ。けど本当にゴメン。離さないって言われてたのに勝手に離れて悪かったと思ってる。
だからもう一度、今度は本当にもう二度と離れないと誓うから聞かせてほしいんだ。
「おれのこと、まだ好きか?」

「クソ当たり前だ、アホが!!!!!」

ありがとう、おれもお前のこと、大好きだから、これからも隣にいさせてくれ。約束だ。


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