作品 | ナノ


09

 おれには、愛しい恋人がいる。
 この船の狙撃手・ウソップだ。


 三週間前に告白した。
「女至上主義のお前に言われても、信じられねェ」
と、言われ、どれだけ本気か、どれだけ惚れてるかを伝え口説いた。
 恋する男、舐めんなよ?

 二週間前にようやくお付き合い開始。
「海の上じゃデートとか出来ねェし、付き合うって言ってもあんま変わんねェな」
と、言われ、仕込みを終わらせた夜中に、特別な二人きりの時間を作った。
 お前だけっつーのをわかれよ! 

 一週間前にキスしたいと言った。
「…………」
 逃げられた。
 一言もなしか、おい!!


 そして今日。
 明日の仕込みをする俺の後ろ、ダイニングにはウソップ。
 デート代わりの二人きりの時間だ。

 仕込みを終えたおれは、ウソップの向かいの席に腰を下ろした。
「で?なんで逃げた?」
 いつもより、声が低くなったが仕方ねェよな。
「だ…だってよォ〜」
「だって?」
「急に…キ、キス、なんて言うし…」
「いきなりしたわけじゃねェだろ」
 呆れてそう言えば、ダンッ!とテーブルを叩き、ウソップが立ち上がる。
「お前にとっちゃ、キス、なんて簡単かもしれねェけど!」
「おれにとっちゃ一大事なんだよ!!…その…初めて…だし…」
 仁王立ちでおれを指さし啖呵を切るが、最後が情けねェ。
「簡単ねェ〜…」
 煙を吐き出し、おれは視線をウソップへと向けた。
「お前…おれをそんな風に見てたのか?」
「へっ?」
 まあ、今までの事を考えれば仕方ねェが、おれだって傷つくぞ。 
「確かにお前に比べりゃ恋愛もしてる。キスも経験済みだ」
「だがな!」
「お前が言うとこの『女至上主義』のこのおれが、男のお前に告白して、キスしてェって言うのが
どんだけ勇気いると思ってんだ!」
 煙草をビシッと突きつけ、言い切ってやった。
「それと」
「おれはまだ、お前とキスしたことがねェ」
 なんだ、その顔。意味わかんねェって顔だな。
「ようするに、おれとお前の『ファースト・キス』はまだしてねェってことだ」
 おれの言葉に、ウソップがあきれ顔になる。
「そりゃ屁理屈だろっ!」
「屁理屈だろうが何だろうが、事実だろうよ」
 拗ねた顔でそっぽを向くウソップに苦笑が漏れる。
 こうなるだろうと予測はしたけどよ…。
「あのな…」
「何度も言ってるが、おれは本気でお前に惚れてる。いつでも一緒にいてェし、抱きしめてェしキスもしてェ」
「できれば、その先もしてェと思ってる」
「え?その先って…」
「ナニ」
 意味ありげな目で見てやれば、あいつの顔が一気に赤くなった。
クソ可愛いな!犯すぞ、コラ!
「なァ、ウソップ…」
「どうしても嫌か?」
 ウソップの目をじっと見つめてやれば、複雑そうな表情で俯く。
 沈黙に耐えられなくなったおれはため息を一つつき、
「わかった…」
 そう言って立ち上がった。
「もう寝ろ。おれも寝る」
 まあ、急ぎ過ぎたんだろうなァ。
 ああ…灰皿片付けねェと…。ん?
「ウソップ?」
 俯いたまま、おれの腕を掴んでいる。
「……んきか?」
「あ?」
「本気でおれにキスしたいのか?!って聞いてんだよ!!」
 ウソップのあまりの剣幕に、一瞬ビビる。
「どうなんだよ!」
「本気だ」
「何度も言ってるが、おれはお前が好きだ。お前の全部が欲しいし、おれの全部をやりてェ」
 おれの返事に、ウソップがそろりと顔を上げた。
 決意を秘めた視線がおれを捉える。
「なら、教えてくれよ。お前の本気を」
 ああ、本当に。こういう時は男前だよな、お前。
「お安い御用で」
 おれはウソップの隣へと座り直し、そっとその頬に手を添えた。
 それだけで、あいつの身体に緊張が走る。 
「ウソップ、愛してる…」
 そう言って、おれは唇を重ねた。
 ただゆっくりと唇を合わせるだけのキス。 
「どうよ?」
「よ、よくわかんねェ…」
 …もうちょっと、艶っぽい感想ねェのかよ…。
「わかんねェけど…気持ち、よかった…」
 耳まで赤くして俯き、そう呟くウソップの姿におれの理性が1本切れた。
 逃げようとするウソップを捕まえ、キスを繰り返した。
 つい図に乗って、舌まで使っちまったのはご愛敬ってことで。



 それからおれは、なにかにつけウソップにキスをした。
挨拶と一緒に、礼の代わりに、理由がなくても。
 最初は驚いていたウソップも、おれがキスするのが二人きりの時だけだとわかったら、
安心したようだ。
 最初が肝心だよな。
 
 で、そろそろってことで、その日もウソップにキスをした。
 仲間の前で。

「ばっ…おまっ……!!!」
 おーおー、顔真っ赤だな。
「バカ!バカ!!お前、何してんだよ!!」
「何って『仲間の前でする初めてのキス』?」
 しれっと言ってやれば、ウソップのやつ、わなわなと震えだした。
「バカ!バカ!大バカ!バカサンジ―――――っっ!!」
 相変わらずの逃げ足で。
 キライって言葉を言われなかっただけ、おれ、自惚れていいよな?
「つか、語彙力ねェな、おい」
 思わず笑いがこぼれた。


 呆れてるナミさんと楽しそうなロビンちゃんに一礼し、
目ん玉と口開けっ放しのクソゴム船長に踵落としを食らわせて、
眉間に皺よせて、チョッパーの目を塞いでたマリモヘッドに中指立てて、
大人組のフランキーとブルックには、ニヤリと笑ってみせた。


 さてと、おやつにプリンとゼリーを追加してご機嫌伺いに行きますか。
 おれの愛しい恋人のところへ。


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