初心者の余裕 [ 2 / 12 ]

「ほら!しっかり立てって」

『んんっ、イヤッ…こんなとこで』

「こんなに垂れててよく言う」

『……ハァッ…んん…』

「早くしねーと旦那に見つかるぞ…ってお前…そう言ったら“口”締めんのな」

『あぁあーーっ…グフッ…ん…』

「ほら、顔見せろ」

『んふっ…クチュ…ハァ…』

「…んだよ…ハァ、そんな吸い付かねーと、声、我慢出来ねぇのか…」







5年前。
片隅にも残っていなかった言葉。飲み会の席でのこと。


こんな事で?そう、そんな小さなキッカケだった。


初めは由実の興味本意。

互いに家庭ある者同士の、一夜の過ち程度。

酔いの席での社交辞令から、幾度か遠回しに思いを受け取った気がした。

一度なら…頻繁に会う相手でもなし。



豪さんの奥さんがいい。
ナンパするなら豪さんの奥さんに声かけて良いですか?

そんな子どもじみた言葉で揺らいだ、しかも直接言われたものでもない。

しかし。何とも思ってない者の言葉でも好意的なものはやはりどこか嬉しいもので、夫婦のやり取りから実際の彼に逢うまでそう時間はかからなかった。


初めて2人きりで過ごす夜…
一緒に居るのを後悔するほど別人で 。ろくに話しもせずチビチビ酒を手酌し何処か気取った感じのその姿に苛ついてしまうほど。


もう少し若ければ誰かにメールでもして、ちょっと今いる状況から救ってよ!なんてSOSでもするけど…

そんな独り身でもなし…適当な相手も居るわけもない。

こんな状況下、心を許した旦那以外の異性と言葉は古いけど、密会してるわけで…行為に及ぶまでには何とか「酔っぱらって頭痛い」と帰る。

そんな言い訳しか思い浮かばず、本当に頭痛がしてきて、蒼白い顔は見られたもんじゃない。化粧室で鏡を見れば…納得。ヤル気は失せたみたいだ。


それならそれで好都合。
私は“綺麗なまま”で居られるのだから…

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