「えーっと頼まれた物は………」
朝。昨夜ジョーリィに早速仕事を受け持った私はまた街中に来ていた。今日も天気は最高のレガーロ晴れ、暖かい日差しが私を包んで段々と眠く………って。
「だ、ダメダメ!もうサボらないんだから……よし!!今日も頑張るぞー!」
「あの、これ下さーい!」
「あいよ!これとこれだね」
ジョーリィから頼まれた物リストを渡してお金を払う。紙袋に入った材料は色々あって少し重いけど、これも一種の試練だと思えばどうってことはない。他愛ない話をしてそのまま別の店に向かおうとすれば、見知った顔が見える。
「あ、パーチェ!」
「ん?あ、ユナおはよう!今仕事中?」
「うんおはよう!ジョーリィから頼まれた物買ってたんだー、パーチェは何してたの?」
「俺も仕事中。今から大事な巡回だよ!」
そう言って嬉しそうに笑うパーチェを不思議に思う。たしかにレガーロの平和は嬉しい事だから巡回が楽しい?ってのは分かるけど、パーチェの嬉しそうな顔はそれだけの理由ではない気がする。
「何か楽しい事でもあるの?」
「え?あー…………じゃあ、一緒に行く?うん、それが良い!行こうユナ!」
「あっな、何…!?わわ私、ジョーリィの頼まれ物が……!」
誘ったからにも関わらず最早強制的に手を取られて何処かへと引っ張られる。訳が分からないままとりあえず頼まれ物を落とさない様に気をつけていれば、段々と良い匂いが近付いてくる。え、良い匂い?
「んんー美味い!!やっぱりラ・ザーニアは最高だねえ、ね?」
「え?ん?………パーチェ、巡回は?」
「これも立派な巡回だよ?ほらほら、ユナも食べなよ。はい!」
「っな、なあ……………!?」
はい、と差し出されたラザニアに戸惑う。ただ単にラザニアをくれたのなら問題はないけど問題は出し方だ、パーチェは何事もなかったかの様に自分が食べていたフォークにラザニアを刺して私に差し向ける。これを食べると言う事は、よくある間接キスと言う訳で。
「い、いやっ良いよそんな悪いし…!!」
「ええ?遠慮なんかいらないって、俺全然大丈夫だからさ!」
「(絶対意味分かってないいいい!!)あの、遠慮とかじゃなくて、だから、かっかん…せつ……」
と言った瞬間に私のお腹が鳴る。まあこんな美味しい食べ物を目の前に出されてお腹が空かない何て無理な話だけども。レガーロは色々と盛んだし料理は一流並みの店が沢山だし、目の前のラザニアは美味しそうだし…ああ、もうお腹が悲鳴をあげてきた。
「もしかして、お腹空いてなかった…?」
「えっ!?そんな事は………うー…じゃあ、いただき…ます」
「うんうん!沢山美味しい物食べなきゃね!はい、あーん」
「!あ、あーん…………ん…」
結果人間の本能に抗う事が出来ず、恥ずかしながらもパーチェの好意を素直に受け取る。さすがと言うべきか、本格的なイタリア料理は日本で食べる物より遥かに美味しい。口の中に広がる世界、まさに極上!パーチェがオススメするのもよく分かった。
「んー美味しーい!!!こんな美味しいイタリア料理、私はじめて―」
"ユナ、美味しいか?"
"うん!ユナ、ラザニアだーいすき!"
"ふふっまだあるから、沢山食べてね"
"はーい! 、 !"
「っ今の…は………………?懐かしい、感じ…」
「ユナ、どうしたの?大丈夫?」
「え?ぁ………うん!凄く、美味しいよ!ありがとうパーチェ」
一瞬頭に流れた記憶に疑問を浮かべるも、考えても分からないだろうとすぐに考えるのを止める。パーチェにお礼を言えば「へへっどういたしまして!まだまだ美味しい料理たっくさんあるからさ、一緒に食べに行こうね」と笑顔で返される。私も笑顔で了承して、どんどん運ばれてくる料理にまた嬉しくなった。
「「おかわり!!」」
「ちょ、ちょっと親分、ユナさんもさすがに食べ過ぎじゃないですか……?」
「どうしたのパトリック?まだ30皿しか食べてないよ!ほらほらもっと食べよう!」
「(えええユナさんまで親分と同じ胃袋かよ!!!!!)」
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