「はあ…はー、疲れた……」
ひたすらに走った先に見据えた抜け道。多分犯人は毎回この道を使っていた、だから今回も絶対、この道を使っている様な気がする。奥からは話声が聞こえるから、これはきっと、今捕まえるチャンスなんだと思う。
「―ディヴァール・レ・アニタ―………けっ剣!」
力を使って短刀を出すも、実はこんな武器を使うのは初めてで。今まで家に閉じ込められた分、こうやって街中を走り抜けるのもやった事がなかった。そんな中この仕事が出来るのか不安にもなるけど、一発本番でやるしかない…数は3人しかいないんだから、きっと出来る。
「今だ、一発っ!!」
「ぐあっ!!」
「っ何だこいつ!?まさか俺達を捕まえに来たのか!!」
「そうだよ!新人幹部ユナの初仕事、上手く成功させてよ……っね!」
そう言ってまた一人に峰打ちを当てようとするも、意識を向けられた状態しかも戦闘初心者の私の攻撃はスルリとかわされてしまう。人数はあと2人…逃がさない為にも、どうにかして捕まえる方法を考えないと。
「最初は油断したが、もう俺達には当たらないぜ!!この現状を見た分は、ただじゃおかねえなあ!!」
「わー………どうしよ」
握った短刀が震えるのをバレないように抑えて敵を見張る。2対1の体制で経験者と初心者だなんて不利な状況…正直冗談にしてほしい。
「くらえっ!!!」
「ぅ、わ…やば…!!」
「させるか!!」
最終的に自分を守る事にした私は受ける攻撃を最小限にしようと短刀を自分の前に出して防御する。でもいつになっても来ない衝撃に目を開ければそこにはさっきまで喋っていたリベルタがいて、彼が相手の攻撃を防いでくれていた。
「り、リベルタ!!ありがとう!」
「ああ、間に合って良かったぜ!まずはこいつらを何とかしないとな!!」
「うん!!」
「くそっ仲間かよ…!!」
「はあ…つ、疲れたー!!!」
「お手柄だったな、ユナ!」
リベルタが来てからは凄く順調で、協力して捕まえた敵は完全に降参状態になっていた。協力と言っても、私は敵を逃がさない様に防ぐ位が限界でほぼリベルタに任せてしまったのは私の力不足だった。やっぱり、戦闘初心者はキツいなあ…。
「リベルタ、ありがとう。リベルタが来てくれてなかったら多分ユナ、やられてたよー」
「おう!ユナのおかげで犯人見つけられたんだ、俺も見習わないとな!」
「いやいや、私なんか全然。リベルタは強いね」
「そんな事ないって!俺、アルカナ能力まだ使えないし…新人なのに、頼りになるな!」
「私もアルカナ能力はまだ全然使えてないよ、もっと使いこなせないと…まずはリベルタみたいに戦闘出来るようにならないとね!!」
そう言いながら短刀をしまえばどっと疲れが押し寄せてくる。今度は力を沢山使わなくても大丈夫なように短刀を持ち歩く様にしよう。思えば犯人を追いかけてからずっと力を使いっぱなしだった。
「もっと、強く…なろ……」
「っユナ!!?!」
そこからの記憶はない。意識がなくなる直前、リベルタが私の名前を呼んでいたのだけ朧気に聞こえていて。そうだ、もっと強くならなきゃって。強くなって、リベルタがいなくても今度は一人で悪い人を捕まえられるように、特訓しないと。その為には…まず。
「ユナ、しっかりしろ!…って、」
「………おなか……す、いた…」
「………ま…まさか、寝てる?」
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