「あー…えっと」
視線の先には、何処か退屈そうにしているあの人がいて。近付こうにも近寄れない様な何だか不思議な雰囲気は前と変わらなくて、この人が私の、上司に当たる人。
「!っま、ままま待って!」
もうこの部屋にいる意味がないと感じたのか部屋を出ようとした瞬間に、条件反射で彼の腕を掴む。
「………何か用があるのかな、お嬢さん」
「おじょ…?わ、私ユナです!ユナ、補佐頑張るから、えっと、えっと………」
「…ククッ、面白いお嬢さんだ。私はジョーリィ、ファミリーでは君の上司に当たるね」
「は、はい!!!あの、よろしくお願いします!!」
「ああ、よろしく。…別に無理して敬語はいらないがね」
「、うん!!」
思わず緩くなる頬をそのままにしながら挨拶を交わす。新しい幹部として、彼の補佐として、良いスタートを踏んだと思う。挨拶を交わしたらジョーリィは出て行ってしまったけど、これから彼と仕事が出来ると思うと俄然やる気が湧いてくる。
「どうやら、幸先は良いようだな」
「モンドさん!でも、私パパとママに何も言わずに出て行って来て…」
「なるほどな…。それで、その事に後悔しているのか?」
「こ、後悔はしてない!!けど、もしそれでアルカナ・ファミリアに迷惑をかけたりしたら、」
「そうだな、ではそれに対しては私が引き受けよう。お前は心配しなくて大丈夫だ」
「…!ありがとうございます!!」
出会ってばかりの関係で、でももう私はファミリーの一部な訳で。そこら辺も、覚悟が必要って事。
「(迷惑かける分…私が、頑張って働けば良いんだ)」
「ところでさー」
「………え、私?」
「ああ!お前って、何かタロッコとかあるのか?只の幹部だったら、俺達全員集めなくても良いだろ?」
「た、たろ、っこ??」
聞き覚えがあるようなないようなその単語に眉をひそめていると、隣にいたモンドさんが自信気に皆に言い聞かせる。それは正直、私も聞いたのは初めてで。あまりにも身に付きすぎて、私も気づかない程だったのかもしれない。
「皆に言っておこう。ユナには、2つタロッコを所有している」
「へ…………?はっ!?」
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