4.この熱は誰の所為?

最近、燭台切さんや一振さんが家事を手伝ってくれるので家事も大分楽になってきた。藤四郎兄弟の皆は一振さんと最近仲間になってくれた岩融さん達が遊び相手になってくれてとても楽しそうに過ごしている。そんな皆を見て、私も楽しい……のは間違いないんだけれど。

(頭、いたい)

がんがんと私に訴える頭の痛みが、部屋から出たい意思とは裏腹に、身体はその場から動けなくなる。今日は燭台切さんが僕が朝ごはんを作るよ、と張り切ってくれていたから、ご飯は大丈夫だろう。洗濯物は、太郎太刀さんが今日は私がやりましょうと言ってくれたから、それも大丈夫。……あと、何をしなきゃいけないんだっけ。

「あ、」

そうだ、朝一回起きた時、資材が貯まったから鍛刀しようと思ったんだ。2時間半と時間を告げられたから、仮眠を取って丁度完成した所だろう。早くご挨拶を、と慌てて立ち上がれば、今日一番の痛みに身体がふらついた。

「うぐっ!!いい、痛いい……!!」

自分の身体を上手く支える事が出来ず、無残にも倒れこむとまた別の痛みが身体を襲う。暫く痛みに耐えていると、遠くから慌ただしく足音がこっちに近付いてきた。やばいと一先ず身体を起こすのと、私の部屋を開けられるのはほぼ同時で。

「今とても大きな音が聞こえましたが、大丈夫ですか…!?」

「えっ一振さん!?」

「ああ良かった、お怪我は特にないみたいですね。安心しました」

優しく背中に手を添えて頂き、何とか立ち上がる。ありがとうございます、と御礼を言えば「いえ、何処までもお供致します」と爽やかに輝かしい笑顔を見せてくれた。わあああ絶対今顔赤くなってる私、でもこんな近い距離にこんな整った顔、しかも性格も素敵だなんて、この世界に来る前は出会ったこともなかったし、って誰に言い訳しているのか分からなくなってきた。

「ええっと、あの、あ、あー!そう!そうです!!新しいひと、会いに行きましょう!」

「?はい、かしこまりました」

頭痛の事は今は無理やり置いておいて、一振さんを連れ新しいひとに会いに行く。大分揃ってきたみたいだけど、実際何人いるんだろう?そんな事をぼーっと考えつつ、隣にいる一振さんにどんなひとか楽しみですねと話しかければ、何故か一振さんはいつもの笑顔より暗い顔をしていた。

「刀集めですか…」

「え?あ、何かごめんなさい…?」

「いえ、文句はありません」

そう呟いた後は、静かに前を歩いてしまった。……もしかしてだけど、嫉妬してる?そう思うも嫉妬してますかなんて聞く事も出来ないし、とりあえず、あの、一振さん。

「可愛いかも……」

「どうかされましたか?」

「いっいーえ!何でもございません!ささ、早く行きましょ!」




「綺麗な次郎でーす!!あれ、なーんかノリ悪くない?まっ今後ともよろしく!」

「太郎太刀さんの弟さんですね」

「お、おお……!!」

また真新しいひとが来た。他の刀剣男子とは全然違う、何ていうかジャンルが違う。加州さんも綺麗好きというか可愛いもの好きって感じだけど、次郎太刀さんは全身から綺麗な感じだった。次郎太刀さんはすぐに私に気づいたようで、私の目の前にその綺麗な顔を近付ける。

「んー、んん?何か顔色悪くない?アタシと一緒にお酒飲むかい!?」

あ、やばい。そう直感的に感じた。まだ会って5分とも経っていないのに何故分かったのかと疑問に思うよりも早く「女の子は見れば分かるんだよ!」と突然身体を持ち上げられた。俵を担ぐかのように持ち上げられた世界は、普通の人に持ち上げられた世界より大分高くて変な声が出てしまう。でも、実際無理やり置いてきた頭痛は、今もなお私を蝕んで止まなかった。


「ひぃっ!!じじ、じろーたちさん、高いです!!」

「もー暴れなさんなって!あんた、この子の部屋に案内してくれるかい?」

「勿論です。…すみませんでした、私がもっと早くに気づけていれば」

部屋へと担がれていく最中、一振さんがそう告げる。別に一振さんのせいじゃないのに、元はと言えば私が頭痛なんて発症するのがいけないんだ。気にしないで下さいと一振さんに伝えたいけれど、次郎太刀さんが歩くたびに身体が揺れて意識がさっきより朦朧としてくる。この揺れはダメだ、そう理解した瞬間身体はいつもより火照ったように感じ、病は気からとは本当なんだなあとまた訳の分からないことを考えてしまった。…でも、この火照った感じの温度、この前の大倶利伽羅さんに抱き付いた時の温度に近いかも。今は次郎太刀さんが近いから華のような香りがするけど、あの時大倶利伽羅さんは、どんな香りだったっけ…?

「大倶利伽羅さん……」




(会いたい、)

「大倶利伽羅、どうした?何か面白い物でも見つけたか?」

「…何でもない。一々俺に構うな」

「ははっ振られちまった。だが、大方は主の事でも考えていたんじゃないのか?」

「興味はないな。そんな事より、さっさと終わらせて帰るぞ」

「ほう……?帰る、ねえ。やっぱ面白いな」

あんたに呼ばれた気がした。勿論、そんなものはまやかしに過ぎないだろう。ただ脳裏に浮かぶあんたの顔が苦しそうだったから、いつも以上に敵をこの刀で斬った。早く帰れば、あんたは喜ぶんだろう?例え誉を取らずとも、全員にあの言葉を言うやつだ。今頃本丸で光忠達とくだらない事を話しているはず、なのに、何で早く帰らなきゃいけないと思っているんだ。帰る場所を考える必要なんて、ない。

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