3.まるで恋のように

「私は一期一振です。弟達の面倒をずっと見ていてくれたのですね、ありがとうございます」

本当に有言実行してくれました。水色の綺麗な髪を靡かせ、優しい表情を浮かべる彼は藤四郎兄弟の兄であり、唯一の太刀。此方こそ来てくれてありがとうございます、と言い自己紹介をした。1軍の皆は怪我は少ししているけれど、皆生存している。本当に良かった、と思い皆を見つめ、ふと思った。

「大倶利伽羅さん……?」

「そういえば、帰還してすぐに自分の部屋の方に向かっていたよ」

「そうなんですか?わ、私も行きます。燭台切さん、ありがとうございます」

「馴れ合うつもりはないって言ってるけど、構ってあげたらきっと喜ぶから」

ね、とウインクをサラッと決める彼に思わず頬が赤くなった。ナチュラルにこんな事が出来る人はそうそういないだろう。まだ一期一振さんとも全然お話が出来ていないけれど、燭台切さんにこの場をお願いし、彼の部屋へと走り出す。少し息が切れた頃に、やっと彼の背中を見つけた。出陣前に見た背中とは違い、服は所々破けている。刀装も無い、まるでそのまま消えてしまいそうな背中が胸を苦しくさせた。

「っ大倶利伽羅さん!!」

「!?何だ、って……あんたか」

「………っ」

思い切り後ろから抱き付けば、彼の体温を感じた。ああ、彼はまだ生きている。大丈夫、大丈夫と自分に言い聞かせるも、僅かに震える手は服から離すことは出来なくて。怖くて目をぎゅっと瞑っていれば上から静かに溜め息が聞こえて、やっと今の自分の行動が理解出来た。や、ややややばい私なんて事をしているんだろう、でもまだ離れることもしたくないし、でもでも大倶利伽羅さん絶対怒ってる!!どうしよう、って頭で必死に考えている内に、静かに私の上に重なった手が、私の思考を全てストップさせた。

「お……くり、からさ…ん」

「……また、震えてんのか」

「だって、大倶利伽羅さん傷だらけで、でも、よかったあ……っ」

大倶利伽羅さんと会話する度に、どんどん安心する。やっとの思いで彼から離れた瞬間、去ったぬくもりが酷く恋しく感じた。涙は零れていないものの、零れる寸前まで溜まっていたから目は少し赤いだろう。でも今はそんな事気にならない。突然私がこんな事をするもんだから、流石に冷静な彼も戸惑っただろう。私に身体を向けてくれるものの、目線はどこかぎこちなく見える。そんな私も、つい先ほどまでの自分の行動で、恥ずかしい気持ちでいっぱいだった。

「あ、あの、とりあえず手当と着替え、しましょう。それから、」

「おい」

「はい!!」

「…受け取れよ」

「え?っわ!?」

片手に持っていた資材の入った袋を突然私に押し付ける。どっしりと重みのある資材はかなりの量と見れる。鶴丸さん達は一期一振さんを連れてきてくれて、大倶利伽羅さんは皆を守りながら資材までちゃっかり持ってきてくれて。ああもう、どんどん胸が苦しくなるよ。

「……えへへ」

「何で笑う」

「皆さん優しいなあって。あっそれと、大倶利伽羅さんにまだ言ってない事があるんです」




(おかえりなさい!)

「やっぱり此処にいたんだね」

「燭台切さん!」

「ちゃんと資材も渡せたみたいだな、うんうん、良かった」

「その顔、気持ち悪いぞ」

「それはちょっと言い過ぎじゃないですか…!?ああっ燭台切さん落ち込まないで!」

そうやって慌てている姿は、あいつらに普段見せているものだ。だが、さっきあんたが俺に見せた顔は俺も初めてだった。さっき見せた顔を、もう一回見せてくれよ、この俺に。



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