2.どうしよう好きみたい

最近、藤四郎兄弟が増えてきました。でもお話を聞く限り、1番上のお兄さんがまだいないそうで、最近何処か寂しそうにしているのが分かった。あの魔法のレシピで何回か試してみるも、世の中そう上手くはいかないものなのか、お兄さんにはめぐり合う事が出来ず。一体全体、どうしたものか。

「はあ……」

「いかにも困ってる、って表情だな」

「鶴丸さん!?一体どこから、」

「屋根裏だ。中々興味深いぜ此処は。一緒に入ってみるかい?」

「え、だ、大丈夫です!」

やんわりとお断りし、魔法のレシピに再度目をやる。3時間20分の壁は厚く、やっと出たかと思えば違うひとで、藤四郎兄弟を元気には出来ていない。はあ、と再度溜め息をつけば、いつの間にか屋根裏から出ていた鶴丸さんが、お隣で魔法のレシピに目をやっていた。

「何だこれは?」

「わわわ見てはだめです!これは、社外秘というやつで!」

「しゃがいひ?何だか面白そうだな……で、何でこれを読んでたんだ?」

「そ、それは……」

諸々を省略し、とりあえずお兄さんを探している事を伝えた。彼の名前は一期一振さんというらしく、鶴丸さんにお話ししたところ、じゃあ連れてきてやる!と何故か自信満々に告げられた。そこからの彼の行動力は凄まじく、今すぐに出陣すると言ってやまない状況で。

「大倶利伽羅さん…!」

「またあんたか」

「お願いがあるんです。無理を承知で頼みます、1軍隊長になってください!」

「……は…?」

案の定、何で俺がそんな事をと言いたげな表情は見て取れる。でも今の状態の鶴丸さんが出陣してしまったら、一緒にいる隊員さんも怪我をしてしまうかもしれない。例え強くなっていたとしても、怪我はしてほしくないのだ。勿論、大倶利伽羅さんも。

「このまま鶴丸さんを隊長のまま出陣したら、きっと足元を掬われてしまいます。大倶利伽羅さんが、良いんです。……おねがい、」

「はあ………俺は一人で戦う。後の奴らは勝手にしろ」

そう言って自分の刀を持ち部屋を出た姿を、見つめた。今の言葉は、隊長になるのを許してくれたってこと?逸る気持ちを抑え、私も彼の部屋を飛び出す。まだ伝えてない言葉があるのだ、それと渡したい物も。

「大倶利伽羅さん!!」

「もう行くぞ、早くしろ」

「っそ、その前にこれ、持っていてください!」

短い距離なのに、彼の元に辿り着いただけで少し息が切れる。徐に彼の手を取り掌にお守りを乗せた。このお守りは、初めてひとに渡したもの。普段も彼の生き様にハラハラしているけれど、今回は敵の強いエリアというのもあって、不安だった。本当なら鶴丸さん達皆にお守りを渡したいけど。

(あなただけは、)

「私、此処で待ってますから……どうか、帰ってきて、ください」

(失いたくないから)





(いってらっしゃい)

初めてあんたに会った時、吉行達におかえりと告げたあの一言が、俺に向けられた。実際には俺だけじゃない、光忠達にも言ったのは分かっている。だが、目線は俺だけに向けられていた。この守りを渡したのも、俺だけに。守りなんか無くとも、俺一人で十分だというのに何をそこまで不安がっているのか。ただ、あんたが馴れ合うやつらを失いたくないのなら、失う前に敵を倒せば良いだけの事だ。

|

[しおりを挟む]
[Back]

「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -