次郎太刀さんと!

「いつもありがとうございます、次郎太刀さん」

「良いってこと!おっ今日はお酒じゃないか!」

大太刀として多くの敵を一気に倒す事が出来る次郎太刀さんには、結構頼りっぱなしな毎日。今日も今日とて出陣して頂いたので御礼と共にお酒を持ち次郎太刀さんを迎える。思わずハートマークが語尾につく勢いで喜ばれてしまうと、ついたまには良いかなとお酒をあげてしまう私がいる。ギリギリまで入ったお酒を何個か渡せば、さっきまで出陣してたとは思えないあどけない笑顔を見せた。……また、甘いって皆さんに言われてしまいますね。

「ねえ、一緒に飲まない?」

「えっ?か、構いませんけど……あの、そんなに私お酒は強くないのでってわわっ!?」

「こっちこっち!夜の酒は特に美味しいんだよねえ。受けた傷も癒えるってね!」

勢いよく手を引っ張られ縁側に座ると、夜に輝く星々がとても綺麗だった。こんなにキラキラしているのは、こっちの世界にきて初めて知ったなあと物思いにふけっていると、いつの間にか私の手には盃が持たされており次郎太刀さんから急かされるようにお酌して頂いてしまった。夜空に煌めくお酒は、いつもより美味しそうだ。試しに一口と口つけると、やはり予想通り、とても美味しかった。




「うぅ………ん……もう、ダメ」

「あっはっは!!まだまだこれからだよ!!」

私の限界具合とは裏腹にどんどんとお酒が追加される。天地の差とも言うべきか、次郎太刀さんのテンションは底知れない状態でどんどん上がっていく。他の皆さんに助けを求めたいけれど、最早喋るのも億劫になるくらい限界です。それでもまだ私の盃にお酒を追加しようとするものだから、次郎太刀さんにしがみついて止める行動に出た。

「お、おお?今日は随分と積極的だねえ、って……?」

「も、もう、やめてくださあい…っ!」

「あーらら、顔が真っ赤だ。流石に飲みすぎたのかね」

以前もして頂いたように、私の暖まった全身をパタパタと扇いでくれる。ふと見上げた先に見えた次郎太刀さんは、とても美しいと思った。何だか、性格とか色々含めてお姉さんみたい………って失礼な事を考えているのは今の私には全く実感が湧かない。

「………じろ…たち、さん」

「うん、何だい?」

「いいにおい、します……」

すん、と嗅ぐと花のような柔らかい香りがした。あくまでお酒の匂いは置いておいて、といった形だけども優しい香りに思わずおでこを擦り寄せる。ふう、と小さく息をはくと少しだけ酔いが先程よりマシになった気がした。それでもやっぱり動く気にはなれなくてジッとしていれば、徐に次郎太刀さんは私の頭をよしよし、と撫で始めた。

「…ふふっ……もっと、なでてください」

「良いよ。何なら寝ても良いけど、どうするかい?」

「んー………もう少し、このままで」

「はいはーい。………甘えたな主なんて、中々見れないもんだよ」

ボソボソと上から呟かれたけどよく聞き取れなかった。もう一回言って下さいと言ったものの、気にしない気にしないと言われてしまったのでそれ以上は詮索しないことにした。火照った身体に夜風が当たって気持ちいい、そう思いながらぼうっと目の前の景色を何を思うわけでもなくただ何となく見つめる。その間も私の頭を撫でる手は止まらなくて、ふにゃりと嬉しくて顔が笑ってしまった。やっぱりお酒が入ると、心がころころ変わってしまいます。次郎太刀さんも段々と落ち着いてきて、始まりが終わりに近付くように私達の会話も少なくなる。未だに次郎太刀さんにくっついたままの私は、眠気が増してきた。




「………やっと寝たね」

「…………すぅ…」

「あーあ、アタシも男なんだけどなあ。まっ周りは男しかいない訳だし、アタシがしっかり癒してあげないとね」

腰に手を回されたまま、静かに寝息を立てる可愛い可愛いアタシ達の主。再度頭を撫でてあげると、蕩けるような表情で私にまた擦り寄ってくる。あらら、このまま誰かに見られたら何処かの誰かさんに斬られそうだねえ、なんて思いつつ動かす手は止めようとは思わない。男が多いと気負う事も沢山で大変だろうに、私達の主はそんな素振りはまるで見せない。今回はちょっとばかし強引に飲ませて酔わせてみたけど、それでも弱音は出さなかった。でも、甘えたになるのは意外だったかもしれない。多分、普段はあまり甘えるのが得意じゃないからだろう。ある刀剣の前を除いては、だけど。

「そうやって無防備なのは可愛いけど、アタシも平気で見て見ぬフリは出来ないんだよねえ」

頭を撫でていた手を徐々に下げていけば、柔らかな頬に辿り着く。ちょっとした悪戯心で鼻をつまんでみたら少し眉間にシワがよってぷっと吹き出してしまった。ああ、可愛いなあ。唇はきっと誰かさんが奪っちゃったから、ならアタシはーーー。

「………明日が大変だねえ。まあ、アタシがちゃんと責任持つけどね!」

暑さでいつもより晒された首筋に引き寄せられるかの如く吸い付いた。ちゅっ、と独特の音を立て離れると、そこは赤の印を残す。多分、明日誰かが見たら何かがあった事くらいは分かるだろう。こんな何十人もいる刀剣の中で、果たしてアタシと分かるものがいるかどうか。アタシだってやる時はやるんだから。ふふっと笑みを零し見上げた空には、一段と煌めく星があった。


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