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表と裏、白と黒


「春ちゃーーーーん!」

「あっ鈴羽ちゃん…!おはようございます!!」

「うん、おはよう!」

6月も終わり。もうすぐ目の前に7月が見える中、今日はHAYATOのライブへと春ちゃんに誘われ行く朝の事。春ちゃんはとっても楽しみだったのが目に分かる位にお洒落をして来ていて、気分もルンルンと今にも鼻歌を歌いそうな感じで、一緒にいる私も自然と楽しくなる。

「HAYATO様のライブ…ああっ私は今日をどれほど待ちわびていたか…!!今行きますHAYATO様っ!!」

「(春ちゃん凄い…人が違うみたい)」

「鈴羽ちゃん?具合でも、悪い…?大丈夫?」

「う?全然悪くないよ、むしろ元気!」

「良かった…!!じゃあ早く行きましょうっ鈴羽ちゃん!!!」

「うえっあ、はっ春ちゃ…!!?!」

いつもの春ちゃんとは比べ物にならない位に強い力とこの積極的な感じに少しうろたえつつも引っ張られるがままに春ちゃんに着いて行く。HAYATOへの執念…恐るべし春ちゃん。そのまま学園を出て電車に乗り、いかにも都会と言う都会へと足を運ぶ。さすが人の量は尋常じゃなく多くて、次から次へと横を通り過ぎて行く人達に春ちゃんと繋いでいた手に少しだけ力を強くした。


「ひ、ひひ人が多くて前が見えないです…!!」

「落ち着いて春ちゃんっ大丈夫、会場はこっちだよ」

そういえば春ちゃんは人混みとか苦手だったと思い出しあまり人と接触しない様にデパートの地下等を使って会場へと進む。階段を上って外に出てまた地図を見る。春ちゃんは右も左もこんがらがってるらしく、終いには此処、何処…!?と完全にテンパっていて。…今日用事がなくて良かったと切実に思った。

「さすがに会場も中々人いるね…春ちゃん、大丈夫…?」

「は、はひ……大丈夫…HAYATO様の為なら…!!!」

「あれ?もしかして、鈴羽ちゃんと七海さんですか?」

「っへ、え?」

振り返って見れば、そこには頭に大きなピヨちゃん帽子を被ったなつがいて。時間差で翔ちゃんが「なああつううきいいいいいい!!!!!」と大声を上げながらこっちに来る。もしかしてなつと翔ちゃんもHAYATOのライブに来たのかと聞けばそれは違うらしく、どうやらHAYATOのライブの後にピヨちゃんのイベントがあるのだとか。…ピヨちゃんのイベント?って、なっ何するのかな…。

「折角会えたんですっ一緒に見ましょう鈴羽ちゃん!!」

「あっ私は全然良いんだけど…!春ちゃんと翔ちゃんは、大丈夫?」

「私も、大丈夫です!HAYATO様さえ見れれば!!」

「あー…お、俺も別に…寧ろそうしたいと言うか…」

「う?翔ちゃん…?」

もごもごと口籠もる翔ちゃんに聞き返せば、「なっななな何でもねえ!!とにかくっ俺も大丈夫だ!!」と何故か顔を真っ赤にして。それに対して「翔ちゃんは今日も可愛いですっ!!ぎゅーしちゃうぎゅーっ!!」と翔ちゃんを力強く抱き締める。抱き締めと言うか、もう、締め付けてるだけな気も…!!?!そのまま話していれば、次第に照明が暗くなりステージがそろそろ始まる時間になって。

「HAYATO様HAYATO様ハヤトサマ…っ!!」

「あ………始まる…!」



「おーはやっほーーーーっ!!!」

盛大な歓声と激しい演出と共にHAYATOがステージに現れる。外に設置された会場はそれなりの広さにも関わらずトップアイドルのライブを一目見ようと沢山のファンが駆け付けて今にも押しつぶされそうな勢いで。さりげなくそれに気づいた翔ちゃんとなつが私達を挟んで立ってくれているからとっても助かってるけど、やっぱり、HAYATOは凄い。ここまでの人を虜に出来る魅力をちゃんと持ってる。

「……?(春、ちゃん?)」

ふと春ちゃんの様子が気になって横に視線を移せば、さっきまでのテンションとは何処か少し違う様な気がする。楽しんでるはずだけど、何か違和感を感じている様な。思わず声をかけようと口を開いた瞬間に、HAYATOのファン達が一斉に騒ぎ出し急に今まで立っていた場所に立てない位に押し付けられる。

「わ、あ…………!!?!」

「、鈴羽!大丈夫か!?」

「しょ、翔ちゃん…うん、ありがとう」

ドンッとぶつかられて体制を崩した瞬間に、翔ちゃんに手を引っ張られ何とか転ぶ事はなかったけど、春ちゃんとなつと離れてしまう。視線だけで探せば、春ちゃんとなつもファンにぐちゃぐちゃに巻き込まれてて、気づいた瞬間には時既に遅しの状態で。思わず翔ちゃんと繋がれた手をきゅっと握り締めれば、翔ちゃんは何故か焦っていて、なつに視線を戻せばそこにはいつもある眼鏡がぶつかられた反動で、床に落ちていた。



「……さっちゃん…………?」

小さく呼びかけた声に重なる視線は、とても冷たく、でも何処か凄く熱い何かを感じた。





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