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信じ成し遂げる心


「ふう、授業終わったー…」

一息ついて深く椅子に腰掛ける。今日も1日…何も問題もなく終わる、平和な日常が一番良いと思う。この学園は何も起こらない方がむしろ奇跡と言っても良い位本当に波乱万丈な所だから、こんな何にもならない日が凄く有り難く感じる。

「今日はゆっくり休もうかな、」

教材を一つに纏めて椅子から立ち上がる。そのまま廊下に出て歩き出せばもう皆思い思いの時間を過ごしていて。そういえば、レンは今日は何をするのかな…女の子と、遊ぶのかな。そう考えた瞬間、また何故か胸がキュッと締め付けられる気がして。

「(どうしてこう…苦しくなるんだろう)」

片手を胸元に当てて考えるも、理由は分からなくて。もやもやする中寮に向かって歩き続ける。丁度階段に差し掛かった瞬間、考え事をしていたせいで、後ろからの気配に私は気づく事が出来なくて−

「っゃ、な…!!?!」

思いっきり強く誰かに押されたせいで、身体はそのまま階段の方に倒れ込む。体制を変える事も出来ずに倒れる身体は止まる事を知らなくて。確実に…ぶつかる− そう思ったら急に死ぬかもしれない恐怖を感じて何も出来ない、自分の世界が、スローモーションに感じる。視界が、暗く染まってゆく。





「……ぃ……い…おい…大丈夫か、」

「……ぁ…れ…、私…?」

「漸く気がついたか」

「気がつく?っそうだ、私押されて…あれ?でも何処も、怪我してない…それに、貴方は…?」

起き上がって周りを確認すれば、そこはいつの間にか自分の部屋で。ペタペタと自分の身体を触ってみても、別に痛みは感じない。優しく掛けられた布団を少し握りながら隣を見れば、知らない人。礼服を完璧に着こなしただその場に立っているだけなのに漂う気品…どうしてこの人は、ここにいるんたろう…?

「あの…」

「お前の事は知っている、さすがに後ろからは気づかなかった様だな。まあ一般市民なら無理もないか」

「えっうえ…?」

「!…ああ、まだ名乗っていなかったな。俺は円城寺円だ」

「円城寺、円さん?」

聞き覚えのない名前に今までの記憶を辿ってみるも、何も思い出せない。多分これが初対面に間違いはないはずだけど、向こうは私を知っている…?とりあえず私からも名前を言えば、「それはもう知っている、知らなければ助けてなどいないからな」と一言。…と、言う事はもしかして、さっき助けてくれたのは円城寺さん?

「あの、助けてくれたんですか?」

「…偶然そこに居合わせたから、手を貸しただけだ」

「!あっありがとうございます…それと、どうして私の事を…?」

恐る恐る気になっていた事を告げれば、途端に視線を鋭くして私を見る。その視線に驚きながら逸らさずに彼を見つめていれば、不意に視線を逸らされて。再度声をかければ軽いため息と共に、一言一言告げられる。

「俺は契約を交わし、あいつが一人前になるまで見守る役目がある。あいつのパートナーはお前だからな、お前の事も把握済みと言う訳だ」

「あいつって、もしかして…レンの事…?」

「そういう事だな。本業は殺s…ボディーガードだ」

ポカーンと呆然しながら円城寺さんを見る。ぼ、ボディーガード…やっぱり財閥の領域って凄いんだなあ、きっと家には使用人の人達が沢山いて家に帰ればお帰りなさいませご主人様み、たいな?でも、まさか全寮制のこの学校にまで着いていくなんて、さすがと言うべきか…あっでも一回一回家に帰ってるのかな?ふと思った疑問に恐る恐る尋ねれば「何を言う、俺は正真正銘この学園の生徒でAクラスだ」ときっぱり告げられて。

「へ、え!?え、Aクラス…とっ隣にいたんですか…!?」

いつも春ちゃん達に会いに行く時によくAクラスに行っていたけど、全く気づかなかった…こんなにも分かりやすい服装なのに。やっぱりボディーガードなだけあって目立つ行動とかって、控えてるのかな?

「…それよりお前は、あいつの事をどう思ってるんだ」

「う?れ…レンは、パートナーで…えと、信頼してます…よ」

「ほう…何故だ?」

「えっ何故?な、何故…って、」

唐突に何故と聞かれ、まだフル回転しない頭を動かして考える。レンの歌は、凄く艶があって華やかで、聴く人を虜にする様なそんな魅力があって…女の人に優しくて、ファンを大事にして、それで、それで―

「俺が見る限り、レンはまだ本気を出していない様に見える。才能があるはずなのに、持て余し表に出さない…それでも、お前はレンに何を求める?」

何を求めると言われても、歌と言ってそれが正解なのか、急に分からなくなる。レンに歌ってほしいのは事実だけど、それだけじゃ何か足りない様な気がして。私は作曲家として、レンのパートナーとして、レンと一緒に…

「私は、レンと一緒に…デビューしたい…レンが本気になるかどうか、私にかかってるんです。私の曲で、レンの本気の歌が聴きたい…彼はきっと待ってくれてる、私は、レンを信じてます」

キュッと手に力が入りながら円城寺さんを見てそう言えば、少しの沈黙の後にフッと微笑まれる。また私は知らない間に何か面白い事を言ったのかなと思ったけど、それとはまた違う様で。でも「中々に面白いやつだ」って、それ同じ意味じゃないんですか円城寺さん…!!!

「お前なら、変えられるかもしれないな。いや、もう変わり始めているか…」

「、?円城寺さん?」

「いや、何でもない。俺はそろそろ行こう…安静にしていると良い」

「えっあ、はっはい」

「あいつを…レンをよろしくな」

「もっ勿論、です!!」

パタリと閉じて静まり返った部屋の中でただ閉じた扉を見つめる。円城寺、円さん…あの人は、レンを沢山知っていて。そんな人に、よろしくって頼まれて…私、もっと頑張らなきゃ。今のままじゃダメ、もっともっと、上を目指して行こう。私に出来る事から一つずつ、進んで行かなきゃ。





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