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冗談に聞こえない嘘を止めて


あのアイドルの証の件から数日がたった。未だに私とレンの練習量は他の皆にはかなり劣るものの、元の実力があるからなのかレンの歌は他の誰よりも引けを取らない。女の子との遊びはまだ止めていないらしく、それでも前よりは格段に遊ぶ回数が減ったんだとか。周りの女の子が最近レンが全然遊んでくれないと言っていたから多分、これは本当の事だと思う。

「えっと、次の課題は…っと」

プリントに目を通して課題を黙々とこなす。次に一番近いテストはリズムレッスンだっけ…リズム感覚だけは私は他の皆よりもある…自信はある。ただ自信があるだけで実際本当に他の人よりリズム感覚があるのかは分からないけれど、こないだ日向先生に褒められたから少しはあると思いたい。

「一回リズムレッスンの練習して、終わったら少し休憩でもしようかな」

そう思いパソコンを立ち上げプログラミングされた練習用のリズムレッスンを始める。一回でパーフェクト、やっぱりリズム感覚だけはある…と言うより、今はリズム感覚しかないに等しい。作曲、作詞はまだAクラスにもいられるかいられないかの力量。最近はやっと作詞作曲の仕方もかなり身に付いてきたけど、まだまだ私の力ではプロにはほど遠い。

「んーっ…休憩しよ…」

リズムレッスンを終えて立ち上げたパソコンを一旦閉じる。軽く伸びをしてひと息つき、ベッドに倒れ込む。それにしても、最近凄く調子が良い気がする。先生に褒められる事も多くなったし前のパートナーでは考えつかなかった曲まで作れる様になっているし。それもこれも全部レンがパートナーになったからなのかは…こればっかりは自分の事なのに分からなかった。

「…眠くなってきたかも…う…?」

ふいに振動し電話を知らせる携帯に視線を向ければ、相手は春ちゃんから。不思議に思いながら起き上がって電話に出れば、今月の終わりに暇がないかとの誘いの内容で。今月の終わりの方はたしかまだ何もなかったから大丈夫と伝え何があるのか聞けば、なんとHAYATOのライブがあるらしく。

「えっは、ははっHAYATO、のライブ…!?」

「?うんっ鈴羽ちゃん、大丈夫かな…?」

「あっえと、うっうん!だ…だだ、大丈夫…多分」

用事はとくにないから、行く事自体には何も問題はないのだけれど…この間の事がつい頭を過ぎってしまい、頬が赤く染まる。あの時はたしか、最後HAYATOに…す、すす好きって言われて。冗談だとは思うしライブだから絶対向こうは気づかないとは思うけど、やっぱり少し意識してしまいそう。

「(あれはファンサービスだよね、うん…サービスサービス)」

「鈴羽ちゃん?」

「!あっうん、空いてるから…一緒に行こっか!」

「ありがとうっ鈴羽ちゃん!HAYATO様のライブ…、楽しみにしてるね!!」

電話を終了して、携帯を閉じる。大丈夫って、言っちゃったけど…だ、大丈夫かな…。でも、プロの仕事を間近で見れるのは良い機会だし、もしかしたらHAYATOの歌を聴いたらまた新しい何かが思い付くかもしれない。

「これで、また成長出来たら良いなあ…」

作るのはHAYATOの曲ではないけれど、プロの歌声、プロの作った曲が直に聴けるのはとっても貴重で凄く勉強になると思う。そう考えたら、この前の事も気にならないかもしれない。HAYATOは良い人だと思うけど、突然あんな事を言われてしまったら…どうしたらいいか分からないのは皆そうだよね…?

「あの好きは、きっと友好的の好き。私がトキと仲が良いから、だよね…多分」

決めつけはよくないかもしれないけれど、それ意外は思いつかなくて。なんたってHAYATOと会って直接話したのはあれが初めてなんだから…絶対そうだよね、うん。

「深く考えないでおいた方が…良いのかな」

それでも、声調的に冗談に聞こえなかったのがどうも気がかりで。冗談に思いたいのに冗談に思えないのは…きっと。

「っ今日は、早く寝よ…」

頭を振って変な考えを打ち消す。こんな憶測にすぎない考えは、自分勝手すぎるし相手に失礼だよね。今は何も他の事は考えないで、作曲の事だけ考えていよう。全てはそう、夢の為に。レンと二人一緒に、デビュー出来る様に。






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