触れ合って感じる体温
「鈴羽!」
「?あっ翔ちゃん」
教室に向かう朝、後ろから声をかけられて動かしていた足を止める。振り向けば翔ちゃんが手を振りながら小走りに駆け寄ってきて。その腕には昨日私が見つけた翔ちゃんのアクセサリーがついていた。
「鈴羽、サンキューなこれ!どっかいったと思って探してたんだよなーほんと、助かった!!」
「ううん、全然大丈夫!見つかって良かったね」
「ああ!…んでなんだけど、さ」
「うん?」
「これの礼したいから今日暇作れねーかなって…いや無理なら良いんだけどさ!!お、俺が勝手に思っただけだし鈴羽が暇ならたまには一緒に外行けねーかなとか…」
視線を逸らしながら頬を少し掻いて言う翔ちゃんに、今日の予定が空いている事を告げる。告げた瞬間、待ってましたと言う感じに授業終わりのプランを嬉しそうに話し始める翔ちゃんに自然と笑いが込み上げた。
「あははっ翔ちゃん可愛い」
「な゙!!?!なっなな何言ってんだ俺様は男であって可愛いとか言われても嬉しくねえ!!」
「ふふっごめんねちゃんと知ってる、翔ちゃんは格好良いって」
「!!わ、分かってるなら良いけどよ…」
怒っているかと思ったらそう言う訳じゃなくて、照れながら「は、早く教室行くぞ!」と言いながら私の手を引いて歩く。されるがままに手を引かれながら歩いていれば、前に教室へ入ろうとするレンとトキがいた。
「よっ!お前ら珍しいなー2人で来るなんて」
「レン、トキ、おはよう」
「ああ、おはよう鈴羽におチビちゃん」
「おはようございます、鈴羽、翔」
挨拶を交わせば、レンとトキの視線がふと下に向かう。その視線に合わせて下を見れば、そこにあるのは私と翔ちゃんの手で。繋がれたままの手にいち早く反応したのは翔ちゃんで、勢い良く手を話したと同時に顔も赤く染まっていた。
「…翔、貴方も油断なりませんね」
「ばっ違!!これは別に深い意味はなくて…ゆ、友好を深める為だ!そうだよな、鈴羽!!」
「?んと、翔ちゃんが言うなら」
「へえ…友好、ね。なら…鈴羽、おいで」
「う、何?レン…、ゃうっ!?」
名前を呼ばれレンの方に行けば片腕を強く引かれ胸元にダイブする。顔を上げればすぐ近くにレンの首筋が目に入って、頬が赤く染まると同時に恥ずかしさで身体が固まる。腰に手を回されてくっつく身体が、体温を上げる事を止めてくれなくて。感じる鼓動にまた私の心拍数が上がった。
「う、な…あ…レン…!」
「!?んな゙おまっレン何してんだよ!?」
「初だなおチビちゃんは…何って、これが俺の友好を深めるやり方さ。ね?鈴羽…」
「うぁっあううううぅうわわわ分かんない…!!」
艶のある声でそう言われてまた更に心拍数が跳ね上がる。動こうにも動けない状態にどぎまぎしていれば、腰に回っているレンの腕を掴んで離すトキに肩を掴まれて引き寄せられていた。
「!トキ、」
「レン、貴方と言う人は…鈴羽を周りにいる人と同じにしないで下さい。鈴羽も、もう少し警戒心と言う物を持って行動するように、良いですね?」
「えっあ、うん、ごめんなさい」
反射的に謝れば分かればよろしいと言う様な物腰で私の頭を一撫でする。そのまま私の手を引いて教室に入る頃には、HRがもうそろそろで始まる時間になっていた。
「…あれ完全に保護者だろ…」
「おチビちゃんも、やっぱりそう思うかい?」
「っんのだから俺様はおチビちゃんじゃねええええぇえ!!お前らがデカすぎるだけだろ!!」
「はは、もう少し中身も成長した方が良いかもしれないね?ね、おチビちゃん」
「(油断ならないのは君の方だよ、イッチー)」
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