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心の中に咲くリズム


小走りに部屋に戻って、五線譜にペンを走らせる。メロディーを忘れない内につらつらと書き連ねていけばあっという間に一枚二枚と様々な音が生まれてきて、気がつけば沢山のジャンルやメロディーが譜面を埋め尽くしている。

「凄い…メロディーが、沢山」

たった一回でこんなにも音が生まれた事に自分でも吃驚する。初めて聴いたレンの歌、それが私に色んな音を作り出してくれて今まで作った事のないような音調まで生まれた。自分でも信じられない程に、まるで私の心を映し出したかの様で。

「こんな曲…私でも作れたんだ…」

自分が書いたはずなのに他人が書いた様に思えて、何度も譜面を見返す。時間も忘れて作業していたせいか外は真っ暗で、就寝しようとしていた時間はとうの何時間も前に過ぎていた。

「!さっさすがにそろそろ寝なきゃ」

譜面を一枚一枚大事に纏めてファイルに仕舞い椅子から立ち上がる。反射的に机の電気を消してしまい、部屋が真っ暗で何も見えなくなる。慌てて電気を着ければさっきと同じ明るさが戻って、安心と同時に寂しさが込み上げてきた。

「っどうしよう…誰か…」

そう思って机に置いてある携帯をふと見つめる、そうだっこういう時に一番頼りになる人が…ってダメダメ私もう彼には頼らないって決めたんだから、一人で寝なきゃ…!!





「…それでこの有り様ですか、鈴羽」

「う…だってトキしかいなかったから、」

「まあ、誰も頼らずに夜更かしするよりはマシですよ。出来ればもう少し時間を早めてもらえたらもっと良かったですが」

「うー、ごめんなさい」

結局自分に負けてしまった私はトキに電話して部屋に招き入れた。いつもなら私がトキの部屋に行くけど、今日はおとが部屋にいるからって事で私の部屋で寝てもらう事にしてもらう。トキはとても眠そうで、さっきまで寝ていたであろう寝癖が少しついていた。

「あ、もう寝る準備は出来てるから、寝よう?」

「仕方ないですね…何か、見返りを求めたくなりますよ」

「見返り…?何かしてほしい事、あるの?私で良かったら何かするよ」

さすがにこんな夜中に呼び出しておいて何もしないのは自分勝手すぎるよね。軽く受け入れた私に驚いたのかトキは少し目を見開いて、でもその後すぐに溜め息吐いた。

「君と言う人は…では、今度HAYATOと私で早乙女学園をレポートする企画があるのは知っていますね?」

「うん、早乙女さんが企画したやつだよね」

「はい、そこで私が必要な道具を運んでほしいのです。お願い出来ますか?」

「全然大丈夫!その位なら、私でも出来るよ」

思っていたよりまだ簡単そうな用件で少し安心する。HAYATOって事は、はるちゃんが凄く喜びそうだなあ…こっそりはるちゃんも誘ったら、はるちゃんHAYATOとお話出来たりしないかな?

「(明日はるちゃんに言ってみよう)」

「それでは、お願いしますね。もう夜遅いですから早く寝ましょう」

「あ、うん」





「ね、トキ」

「何ですか?」

「今日ね、レンの歌聴いたの。低くて、艶があって、凄くて…ドキドキした」

「!…そうですか、歌が聴けて良かったですね」

「うんっ」

それからたわいもない話をしていれば、寝転がっているせいとずっと作業していたせいか眠気がやって来て、瞬きをする回数が増えてくる。それにしても、今日は少しだけこの季節にしては寒い気がする。トキは隣にいるけど少し距離があるからか肌寒い感覚がした。

「もう寝ますよ、鈴羽」

「ん…うん、トキー…」

「はあ…今度は一体何ですか」

「寒いからもっとくっつきたい…ダメ…?」

「!…今日だけですよ」

「ふふーありがと、トキ」

そう言ってさっきより近づく、温もりが伝わってきてとっても暖かい。顔を上げれば唇が触れてしまいそうな位近いけど、いつもなら羞恥心を感じる距離も眠気が強すぎるせいか特に恥ずかしくはなくて。今は、誰かの傍にいたい気持ちでいっぱい。

「トキー、おやすみ…」

「ええ、おやすみなさい鈴羽」





「(無自覚程怖い物はないですね…)」




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