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見上げればほら茜色


今日は特に何かする気も起きなくて、散歩がてら学園内を歩いていた。この学園は凄く広いから全てを見て回る事は自らが進んでやらない限りは見ないで終わる事もあるだろうと思う位に、広い。知らない所を1人で歩くのは普段なら怖くてやらないけど、ここは学校。周りを見渡せばちらほらと生徒やら先生やらがいるから、全然怖い事なんてない。

「わ、あ…!空、綺麗…」

廊下をぶらぶらと歩いていれば、ふと目に入る夕焼けの光が差し込んでいて。外に目を向ければそれは綺麗な夕焼けが空に輝いていて。もっと、近くでみたい。少し小走りにとりあえず外に出ようと進めば、丁度空を一望出来る場所が見えて。誰かいる気はしたけど、光が当たって見えない。それよりも空を見たいが為に、その場所まで走った。

「綺麗っ凄い、凄い…!」

「鈴羽…?」

「う、えっ?あっレン…!?」

「こんな所で会えるなんて、ね」

まさかさっき微かに見えていたのがレンだったなんて、全く分からなかった。って事は、はしゃいでるの見られた恥ずかしい…!!レンは此処で何かしていたのか疑問に感じて訊ねてみれば、特に何かしていた訳じゃないらしくて。

「此処は俺のお気に入りの場所でね…よく此処に来るんだ」

「そうなんだ…良い、場所だね」

「ああ…鈴羽は、空を見にきたのかい?」

「あうー…やっぱり見られてた…うん、空…好きなの」

空は、広くて、青くて、とっても綺麗で、好き。空は自由な感じがするし、開放感があるから。1日眺めていたいくらいに、よく見てたりする。…でも、

「空は好き…だけど、この時間までなの」

「それは、どういう事だい?」

「夜の空は…あんまり、好きじゃなくて」

夜は、暗いから嫌い。嫌いと言うよりは怖いと言う方が正しいのかもしれないけど。星がキラキラと夜空に輝いているのは綺麗だとは思うけど、それよりも闇の様な暗さが覆っている感じの方が強くて、怖い…1人なら、尚更。

「だから、この時間帯の空が一番好き…って、うあっ私何言って…!」

「恥ずかしがる事はないさ、鈴羽の事…1つ知る事が出来たからね?」

「なっあ…う…私、だって…」

「、どうかしたのかい?」

「!なっ何でも、ない…」

今、何を言おうとしたんだろう私。私もレンの事が知りたいって…ううん違う、これは、レンがパートナーだから、知りたいと思っただけで。他の理由なんてない、絶対、ないよね…私。

「…そろそろ、暗くなってきたね。夜は冷える、もう戻ろうか」

「、うん」

「じゃあ、行こうか」

私より先に背を向けて寮に向かおうとするレンが、何故か急に遠く感じて。何でだろう、夕焼けがもう少しで終わってしまうのと同じ様に感じて、周りにはまだ他の生徒達がいるはずなのに話し声も物音も聞こえなくて、まるで、今が夜中の様な。1人は、嫌…行かないで。

「ゃ…」

「っ鈴羽…?」

咄嗟に離れない様にキュッと彼の服の裾を掴んでしまい、動きを止めてしまう。レンは勿論驚いているけど、一番私が自分の行動に驚いていて、無意識に、掴んでしまっていた。

「!レン…っごめ…」

慌てて手を離して距離を取るより先に、今度はレンの手が私の手を掴む。レンの綺麗で大きな手は、私の小さい手を全部包む様で、暖かくて、優しい。熱が肌と肌で直接伝わってきて、また勝手に頬が染まってしまう。

「レ…ン…」

「…何かあったのか、鈴羽?」

「っう、ううん、何も…ない…何、も」

少し強く握られた手が、凄く熱い。違う…手だけじゃなくて、身体全体が熱くなってる。触れられてる手も、感じる視線も、纏う空気も、全部全部、惹き込まれそうな感じがして。少し傍にいてほしいと思うのは、もしかして、寂しい…から?

「そっそろそろ、部屋戻ろう?レ…っ、!?」

「俺には言えない?鈴羽が今悩んでいる事…」

「ぁっや、れっレン…!」

いきなり掴まれた腕を強く引かれて、レンの胸に倒れ込んでしまう。顔を上げれば目の前にレンの整った顔があって。サラサラの綺麗な髪が首筋に当たって、意識せざるを得ない位に、ドキドキしてる。腰に手が回っていて、体が密着して、お互いの鼓動が聴こえるんじゃないのか不安になる。

「俺に、教えてごらん?…鈴羽」

「う…あ、う…」

「お願いだ、俺は知りたい…君の事」

「っ!わた…私…」

少し余裕のない表情が、心を抉られるようで。まだパートナーになって間もないのに、なんでこんなに話したくなるんだろう。

「わた、し…夜は…1人は嫌…暗くて、怖くて、さ…寂し、くて…だから、レンがどっか行っちゃいそうで…やだ…寂しい、よ」

「大丈夫、俺は此処に…鈴羽の目の前にいるよ」

「う、うん…ごめんね、…ちょっと思っただけ、もう、大丈夫だから」

ゆっくり離れようとすれば、繋がれた手も自然と離れていく。距離が開いて、通り抜ける風が何故だか切なく感じた気がした。

「もう、戻ろうか」

「うん、あのっレン」

「何だい?」

「えっ、と…あ、ありがとう」

「!…どういたしまして」



「(イッチーが言った事、理解したよ)」





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