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一歩ずつ距離縮めて


昨日結局あの後は部屋に戻って、ともちゃんとはるちゃんの所に頼み込んで夜を明かした。同じ女子寮だからすぐ自分の部屋に戻れるけど、やっぱり一人部屋でもちゃんと慣れて一人で寝ないと…。

「!あ、」

「レディ、おはよう」

「おはようレン、教室…入らないの?」

「少しレディに用があってね」

「そうなんだ?じゃあ先に教室入るね私、」

「待って、どうしてそうなるんだい?」

レンの横を通り過ぎて教室に入ろうとした寸前に、腕を掴まれ目の前に回り込まれる。レンは背が高いから私が立つと首筋辺りが目に入って。レンはいつもわざと着崩して着ているからその、胸元が、見えてて、わっ私が恥ずかしい…。そんなに女の子を誘惑して、何が良いんだろう。

「えっと…だって、分からない」

「何が分からないのか、教えてくれるかい?」

「レンは、女の子皆レディって呼ぶから、だから私を呼んでいるのか分からないよ」


最近思った疑問。レンは女の子の事は名前で呼ばない。それはパートナーの私も例外じゃなくて、安定のレディ呼び。別に私自身それでも良いんだけど、正直自分の事なのか周りにいる女の子の事なのか一瞬じゃ把握しきれなくて。別に名字でとか名前でとかで呼んでほしいとかじゃなく、ただ単に区別が欲しいだけで。

「じゃあ、レディは何と…呼んでほしいのかな」

「私は何でも良いけど…とりあえず、区別がつくようにしてくれたら、嬉しいな…なん、て」

「そうだね…そしたら、レディの事は名前で呼ぼうか。パートナーだからね…鈴羽で良いかい?」

「!ぁ、うん…ありがとう」

まさか名前で呼ばれるとは思っていなかったから、少し…いやかなり今驚いてる。意外とあっさり名前で呼ぶから、女の子の名前を呼ぶ事に抵抗がある訳じゃないんだ。

「それで本題、話しても良いかな」

「、何?」

「練習の事だけど…もう少し、時間が欲しい。待つのは嫌かもしれないけど、レディ…鈴羽なら待っていてくれると思ってる。だから、」

「うん、全然大丈夫だよ。無理しなくて大丈夫、レン。昨日ちゃんと考えてちょっと自己中すぎるかなって思ったから…だから練習出来る様になったら言って欲しいな、私…えと、待ってる、から」

「…ありがとう、鈴羽」
 
「うっうう…うん」

さっきまでずっとレディって呼ばれていたから名前で呼ばれるのが凄く、緊張する。他の皆はほとんど早い段階で名前呼びが定着してたから何ともないけど…たっ多分、緊張するのはそれだけ。他の理由は、多分ない、はずだよね。





「(誰か…いるかな)」

「あれ、鈴羽ちゃん?」

「なつ、一昨日はその…あっありがとう、おかげで熟睡、えと、出来ました」

「僕も、鈴羽ちゃん暖かくて…良く眠れました、ありがとうございます」

「あた…!?とっとりあえず、ありがとう」

サラリと凄い発言をするなつに慌てて否定しても、天然な彼は多分気づかない気が気がする。とりあえずお礼だけはきちんと言って話していれば後ろから思いっきり誰かに抱きつかれた。

「ひっうぅ!?」

「鈴羽!来てたんだ!」

「おおおぉおおと!?ななっな、何して…!?」

「え?あっごめん…!嬉しくてさ、へへっ」

と言いつつ離れてくれていないのは一体何の嫌がらせ…?まあ、おとはそう言うのじゃないの分かってはいるけど。体が固まって動けないのを良い様に思ったのか、おとはさっきより強く抱き締めてきて。早乙女さんってこういう時こそすぐ来てくれるんじゃなかったの…!?

「馬鹿者…っ無闇に女性に抱きつくなど、言語道断だ」

「うわっ!?」

「!まさ!」

「…大丈夫か、」

「うん、大丈夫、ありがとう」

半ば強引におとを引き剥がしたまさにもお礼を言う。おとの様子を窺えばいじけてしまったのか眉を下げて少しうなだれていて。…やっぱり、おとのこの顔本当に凄く申し訳なくなる…!いたたまれなくなって頭を軽く撫でてみれば、すぐに喜んだ表情になった。

「ーっ!鈴羽ー!!」

「うっえええぇええ!?」

「あっ音也君ズルいです!僕も鈴羽ちゃんぎゅってしますっ!」

「はぇ!?まっ待ってやああぁああああ!?」

おとに真っ正面から抱きつかれたかと思ったら、今度はなつが後ろから抱きついてきて。むっむむむむむり無理ムリ何これ挟まれてるなんで!?離れたくても前はおと、後ろはなつで動けようにも腕しか動かす事しか出来なくて、思考も既にショート寸前。

「止めないか2人共、女性に無闇やたらに触れるなどはしたないものなどない!」

「う、あうっまさあ…っ!!」

2人の首根っこを掴んで引き剥がすまさが頼もしすぎて、感動。まさは2人を床に正座させて紳士としての嗜み?を熱弁に教え込んでいて、ああ本当にまさは良い人で…紳士だなあって思う。…けど、

「まさ…その、手…が」

「ああ、気にしなくて良い」

「(えええぇえ…!!)いや、あの」

左手に伝わる熱が私自身の体温も上げて、さっきから熱上がりっぱなしで正直私今熱があるんじゃないのかなって位かなり体温高いと思う、凄く、熱い。

「!鈴羽、此処にいたんですか」

「トキ…?どうしたの」

「私に話が…あったのではなかったのですか」

「あ!そっそうだったね…うん、そう!話あった!だから、まさ…その、えと、手…」

「…仕方ない、な」

何故かまさは渋々ながらも手を離して、少しずつ温もりがなくなっていく。やっと落ち着いてひと息つけたかと思えば、また今度は右手に温もりがって、いい加減慣れてきそうだよこれ…。

「(もう諦めるしかないのこれ…)えっと…じゃあ、おと、まさ、なつ、また来るね」

「…もう良いですか、行きますよ」

「うんうん、今行くよトキ」




「(なんかトキヤって鈴羽に構いすぎじゃない…?)んー…、」

「どうかしたのか?」

「一ノ瀬君って…よく鈴羽ちゃんと一緒にいますよねえ」

「それ!俺も思った!」

「「「もしかして…」」」





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