安心するぬくもり
「お邪魔します翔ちゃん、なつ」
「んな゙っ!?なっなな何で来てんだよ鈴羽!!」
夜になって、寝間着に着替えて翔ちゃんの部屋に行けば、案の定この反応。なつは、言わなかったみたい…?かく言う私も、何も言わなかったんだけど。翔ちゃんは何故か顔を真っ赤に染めて慌てていて。さすがに黙って来たのは怒る、かな…。
「翔ちゃん翔ちゃん、今日は鈴羽ちゃん僕達と一緒に寝るんですよ」
「んなの…お前ら本気で言ってんのかああぁあ!!」
「しょっ翔ちゃん騒いだら周りに迷惑かかっちゃうよ…!!」
「誰のせいでこうなったと思ってんだ!今の状況分かってんのかよ…!?」
「まあまあ翔ちゃん、鈴羽ちゃんは僕と一緒に寝ますから」
「それが一番心配なんだよ!!」
息を切らしてそう言う翔ちゃんを見つめていれば、パッと目が合って。さっきよりも顔を赤くしながら思いっきり視線を逸らされて…えっどういう、こと?
「しょ…翔ちゃんには迷惑かけない、から、えと」
「…仕方ねえな…まったく、今日だけだぞ」
「!っありがとう翔ちゃん!大好き!」
「ばっ!!?!なっ何言ってんだよ!!?」
「?ありがとうって」
「(無意識かこいつ…!!)」
いきなり怒りだしたかと思ったら許してくれたり、許してくれたと思ったらまた急に怒って。翔ちゃんはコロコロ表情変わるから一緒にいると凄く楽しい…って、今はそう思う所じゃないっけ…?
「…可愛い!!」
「えっ?、なっぁ、ひっやああぁああ!?」
「鈴羽ちゃんは天然さんなんですね!ああ、可愛い!!ぎゅってしても良い?」
「だだっダメって言う前に抱きしめてるっま、待って、なつっわああぁあ!!?!」
突然可愛いとか言い出したから、てっきり私は翔ちゃんが可愛いんだと思ったば、ばっかりにこんな事になるなんて…!!?!なつは背が大きいから私の体なんてすっぽり収まってしまうし、こんな穏やかな顔に似合わず力は強いし…!!ままままたぬっ抜け出せないとか…!!
「はい!鈴羽ちゃん、寝よう?」
「こっこここれで!?むっむり、だめっです!!」
「那月いいぃいいい!!何やってんだ!!」
「?だって一緒に寝るんじゃないんですか?」
「それとこれははっ話が全然違ってっだ、だだ抱き締めながら寝るのはいかがかと!!?!」
とにかく離れようとしても、完全にがっちり体はなつに包まれているし、今のこの状況は…抱き締められながら寝る状態であって!!とっトキと全然違う…!!トキはただ、傍にいて一緒に寝るだけだったから他の皆もそうだと思ってたのにななっなんで…!!
「しょしょしょ翔ちゃん…!!」
「だから言ったんだよ気づけバカ鈴羽!だーっもう那月お前も離れろ!!」
「いくら翔ちゃんのお願いでも、それはダメです!」
「は!?何でだよ!?」
「約束したんです鈴羽ちゃんと、一緒に寝るって…だから翔ちゃんにはあげません」
「(そっそこは真剣になる所じゃないよね…!?)」
未だに抱き締められながら意見を言い合う翔ちゃんとなつにハラハラしながらもドキドキも収まってくれないし、別に同じベッドで寝るのは良いのだけど…近すぎるのはちょっと、自分の心が保たないと言うか…!!あ…でも、
「(少し…落ち着くか、も…)」
人に抱き締められるのは苦手だけど、凄く、落ち着く…人のぬくもりが暖かくて、鼓動が凄く気持ちを穏やかにして。何なのかな…今日は、良い夢が見られそう、で…
「鈴羽、ちゃん?」
「ん…ね…む…」
「おっおい鈴羽…まさか、寝たとか」
「………」
「…寝ちゃいましたね」
さっきまで那月が抱き締めて真っ赤になっていたのに、安心しきった顔で寝てる鈴羽を見て、盛大に溜め息を吐く。
「仕方ねえな、おい那月」
「、何?翔ちゃん」
「…手出すなよ」
「…もし、嫌だって言ったら…翔ちゃんはどうする?」
「は?那月お前、何言って」
驚いた。一瞬那月が何を言っているのか理解出来なくて。那月を見れば鈴羽の頭を撫でて、微笑んで、別に那月の彼女でもないのに…。
「翔ちゃんが鈴羽ちゃんに会うなって言った理由、分かったんです」
「………」
「僕が気に入るから、だよね。だって」
-翔ちゃんも、気に入ってるから-
「!べっ別に、そんなんじゃねえよ!!」
「翔ちゃん翔ちゃん、しーっ」
「ーっ!!、もう寝ろ!!良いか、ぜってー手は出すなよ!分かったか!?」
「うん、気をつけるね」
勢い良くそう言って、布団を全身が隠れる様に被る。ちょっと向こうからはクスクス笑う声が聞こえてきて、顔に熱が集まるのを感じた。
「(別に…そんなんじゃ、)」
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