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君しか見れないかもしれない



大好きなあの子に会う為に、鍵を使って彼女の部屋の前まで行く。扉を2、3回叩けば中からは可愛らしい声が聞こえてほんまに可愛いなあと思う。
「はい…?あ、志摩君!」
ガチャッとドア特有の音を響かせながら出て来た鈴羽ちゃんに軽く挨拶をする。結構朝早くに訪ねたものの、既に起きていたらしくいつも見る制服姿とは全く違う私服に心臓が高鳴る。これはあかんですやろ…今の季節がもう夏に近いからか服装は至ってシンプルで、正直に言えば色気感じますわ。
「鈴羽ちゃん今時間空いてます?」
「え?うん、今日は用事はないけど…」

「ほな今日は俺と過ごしません?」
「志摩君と?」
きょとんとしている鈴羽ちゃんに「ダメですか?」と再度問いかければ、慌てながら「わ、私で良いなら…!」と。ほんまにこの子は俺が好いてる事も知らずに…こーゆーのを生殺しって言うんやろなあ。
とりあえず此処で話すのもなんだからと部屋にあがらせてもらう。部屋もどことなく可愛いらしくて、鈴羽ちゃんらしいなあと思いますわ。

「今日は勝呂君と子猫丸君とは一緒じゃないんだね」
「休みまでずっと一緒ちゃいますよー、坊達は今日は奥村君といはります」
「奥村君と?珍しいね、あの2人が一緒なんて」
「まあ何だかんだで似とりますからなあ、あの2人」
「あははっ、そうだね」
たわいない会話をしながら時が過ぎてゆく。途中でお菓子やお茶も入れて話をしているとあっという間に感じる。授業中はあんなに長く感じる一時間がこんなにも早いなんてなあ、やっぱり鈴羽ちゃん凄いわ。
女の子は確かに好きや、けど違う。鈴羽ちゃんは勿論好きやけど、好きとかじゃ言えないんやな。こんな気持ち…鈴羽ちゃんが初めてや。
「なあ鈴羽ちゃん」
「うん?」
「鈴羽ちゃん、今好きな人いはります?」
「好きな人?いるよ、」
「えっ、誰や!?(まさかここで終わりとか無しですやろ…!!)」
「、?えっと、塾の皆に普段一緒に行ってる子とかそれから−」
「…な…なんや…」
安心すると共に疲れがどっと押し寄せる様な感覚に陥る。なんやその好きな人達ですか…一瞬ダメかと思いましたわ。でも逆にこれで本命はいないも同然、皆一緒。つまり俺にもチャンスはあるっちゅー事や。
「…鈴羽ちゃん、ほな」
「?、わ、ぁ!?しま…く…!?」
「こんなんされたら、どう思います?」
細い肩を掴んで少し押せば、あっという間に床に倒れて。すかさず彼女の上に行って頬をサラリと撫でれば、顔を赤くしてビクッと反応する。恥ずかしいのかさっきまで開かれていた瞳は閉じられていて、これは勿体ないなあ…。
「鈴羽ちゃん、俺の事…好き?」
「…?ぅっうん、好き…だけど…」
「それは、友達としてですか?」
「、えっ?それは、わかん、ない…」
「せや、そしたら…」
言ってから、一旦間をおけばおずおずと目を開けて俺を見る。視線を交わした瞬間に軽く微笑んで、彼女の耳元まで顔を寄せればまた体を強ばらせて。鈴羽ちゃんは鈍感やなあ…きっとこんな事された事ないんやろうな、初々しくてほんま、食べちゃいたいわ。
「…鈴羽ちゃん、好きや」
「す…き…?」
「俺は友達感覚で好きちゃう…ほんまに鈴羽ちゃんが好きなんや、」
「志摩君…」
「なあ、教えてや…鈴羽ちゃんの気持ち」
「、ぁ…ぅ…」
瞳を潤ませて視線をさまよわせながら必死に応えようとしてくれてる鈴羽ちゃんを見て、少しやりすぎたかとも思う。けどここまでしなかったら一生気づいてくれなさそうやもんなあ…仕方ないんです。
「志摩君、は」
「はい?」
「わっ私の事、いつから、好き、だったの…?」
言われて考える。そう言えば、いつから。いつの間にか鈴羽ちゃんを好きになって、いつからか目で追うようになって、話しかけて仲良くなって…一体、いつから-


-最初は、一目惚れだった-
俺は女の子が好きで、可愛い女の子も綺麗な女の子もとにかく好きで。でも本気で好きになることはなくて、ただ可愛い、綺麗、それだけやった。
勿論鈴羽ちゃんも最初はそうやった。同じ学校になって一目見て、ああかわええな…と。その後に塾で一緒になって吃驚して、嬉しくて。だって可愛い女の子と一緒に同じもの目指して頑張るなんて誰だって嬉しいですやろ?その後すぐに鈴羽ちゃんを気にする様になったんや、あの時から。

「、あっあの!」
「あ?何やねん、あんた」
「私、鈴羽…!勝呂君と、子猫丸君と、志摩君…だよね、」
「そうですけど…どうかしたんですか?」
「っ私と、友達になってくれない、かな…!」
「は…?失礼ですけど、誰と友達に来たんです?」
「皆と…3人と友達になりたくて、」
言われて目を見開いた。坊達も、俺と同じで固まってはるし…まさか俺達と仲良くなりたいなんて言われると思ってないし、坊なんて始終この顔やからほとんど皆近づこうともせえへんし…驚きましたわほんまに。
「…ダメかな、」
「別に…なってやらん事もないけどな」
「本当…!?ありがとう…!!」
「お、おう」
「(なんや…面白い子やなあ、鈴羽ちゃん…)」


「最初から、気になってたんや。可愛くて、面白くて、ほんまに全部好きや。鈴羽ちゃんの全部…目も声も、性格も手も足も全部、全部」
「…っ…!!」
「…鈴羽ちゃん?どうかし「はっはは…はなれ、て…!!」…!」
トンと肩を弱々しく押されて体を上げる。鈴羽ちゃんは自分の腕で顔を隠していた。
「か、堪忍な…嫌やった「そ、じゃ…、て…!」…鈴羽ちゃん?」
声が小さくて、聞き取りきれなかった言葉を聞き返すと同時に顔を覗き込もうとすれば、今度ははっきりと「そうじゃ…なくて…!」と聞こえた。
「い、嫌って訳…じゃなくて、ただ」
「ただ…?」
「こんな真っ赤な顔…見ちゃヤダ、ぁっ…!?」
隠していた腕を徐に掴んで床に押さえつける。突然の出来事に追いつけていない鈴羽ちゃんの顔は相変わらず真っ赤で。押さえつけてる腕も、熱い。これは期待しても…ええんですか?
「…聞かせてくれへん?」
「な、に…?」
「鈴羽ちゃんの気持ち」
「…!!、ぁ、の…」
「逸らさへんで、俺の目を見て言って欲しいんや…」
掴んでいる手を上にズラして鈴羽ちゃんの指に自分の指を絡める。繋がれた手をキュッと握って潤んだ瞳に問いかける。
「鈴羽ちゃん、俺の事…好き?」
「…っ…う…ん…」
「なら、言ってくれへん…?聞きたいんや、鈴羽ちゃんから」
「、っあ、え…!その…」


「す、き…志摩君…」
「これで両想い、やな…鈴羽ちゃん」
「…うん」

君しか見れないかもしれない

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