私は星詠み科の生徒。未来を見る事が出来る。星詠み科の人達は皆何かしら未来を見る方法があって、その中での私は目で未来を見る事が出来る。例えば、空を見ればその日の天気が分かったりと軽いものもあれば、誰かがケガをするなどといったものまで大小様々。でも私は小さい頃からこの力をあまり使わなかった。確かに見えたら色々楽かもしれないけど、これから先何が起こるか分かってしまうなんてつまらない。…何より、凄く疲れるし。それでも難点なのは、使わないように心がけてもたまに勝手に未来が見えたりする事。 「…!次、移動教室っ…急がないと、」 遅れちゃう、と言って自分の席から立ち上がる。教材を持って時計を見れば次の授業まであと5分となかった。 「仕方ない…近道しよう」 いつもとは別の道を通り走る。外に出て裏の道に出れば教室は目と鼻の先だからきっと間に合うはず。外に出て裏道を通り抜けようとした瞬間、私は強い衝撃に動けなくなった。 「…っ!?」 「お〜?あれ、こいつ鈴羽ちゃんじゃん」 「は、なして…!!」 「ははは、かわいー。離す訳ないじゃん?なっお前ら、」 ゲラゲラと笑いながらも私を離さないこの集団に身震いがした。私が思っているよりも男の人は力が強いもので私は力が全く入らない。…もし今日星詠みをしていたらこんな事にはならなかったのだろうか。そう思うと後悔する。肝心な時にこの目は見せない。なんて役立たず。 「…ぁ…!い、やだ…っ!!」 「怖がらないでよ〜、傷つくじゃん」 どんどん壁際に迫られて身動きがさらにとれなくなる。このままじゃ、やばい。やばいって分かってるけど、体が、動かない。 「い…やだ、…!やめ…て、よっ!」 「くそっ動くなよ…!」 「は、なしてってば…!嫌っ!!」 「うるせえっ!少し大人しくしやがれ!」 「ぅあ…っ!!」 鈍い音がした後、何が起こったか分からなかった。気づいた時には頬がジンジンと痺れるように訴え、何かが伝う様な感覚、少し鉄の様な味が口内に広がった。 「…っ…」 「やっと大人しくなったか、」 瞬間的に終わったと思った。私は誰か知らない見たこともないような醜い集団に食べられてしまいんだ、そう思った。せかすように体に触れる感覚に涙が零れた。 「、!お前ら何をやってるんだ!!」 「…!やべっ生徒会長だ!逃げろ!!」 「おい、お前ら待て…!!」 体に触れた手は直に私の皮膚には触れる事はなく、服をはだけさせるだけで終わっていた。何事かと思い瞼を開けた先には同じ星詠み科の不知火君がいた。 「…不知火、君…?」 「鈴羽、大丈夫か!?」 「ど、して…ここに…??」 「鳴っても来ないから心配して来たんだ。ったくあいつら…!」 その言葉を聞いて嬉しかった。でも同時に悲しくなった。遅刻、まだ一回もしてなかったのに。そんな呑気な事を考えていた時鋭い痛みが襲ってきた。 「…いっ…!」 「!?どうした、傷が痛むのか!?」 「口、いたい…」 さっき殴られたせいで切れてしまった口が凄くヒリヒリした。血はあまり流れてはいないけど、なんとなく溜まっている気がする。 「俺が保健室まで連れて行く」 「、え?」 色々考えている間にも不知火君は私の膝の裏に腕をまわして今にも抱えそうだった。 「えっ、あ、ちょっと待って…!」 「何だ?もしかして他にも痛い所があるのか!?」 「ちが…!じっ自分で立てるから…!ケガしたのは口だけだし、保健室には私1人で行くから不知火君は授業行った方が良いと思…」 「…じゃあ、立ってみろ」 「…は?」 そう言って不知火君は腕を放し私から少し離れた。何を言っているのか分からなかったけど不知火君は凄く真剣な表情をしていた。だからきっと、笑い事じゃないんだ。 「……?あ、れ」 立ってみろって言われたから、そのまま立とうとした。でもどんなに腕に力をいれても足はまるで生まれたての子鹿の様に力が入らなくて立てなかった。 「ほらな、腰抜かしたんだよ鈴羽は」 「そう、だったんだ」 気づかなかった、まさかさっきの出来事で自分が腰を抜かすなんて。それほどまでに、心は、体は恐怖していたなんて。 「立てない体で、此処に置いていくなんて俺には出来ないからな、」 「わっ…!不知火君…!」 急に感じた浮遊感にさっきよりもぐんと近くなった不知火君に凄くドキドキした。耳元に、心臓の音が、する。呼吸が、髪の毛を伝って、肌に当たって。 「(なっ何だろう、これ、)」 ドキドキはするけど、何故かこの気持ちが分からなかった。これが、鯉?恋?何?分からない、でも相談するのはこの学園には1人しかいない。でも何だろう、今凄く知りたい。 「(鯉…恋…?好き…何…?)」 「どうかしたか?鈴羽、」 「ななんでもないよっ!?」 「…?そうか?」 これがもし恋なのだとしたら、私はどうすれば良いんだろう。想いを伝える?どうやって?口で?手紙で?分からない、こんな想いをしたのは初めてだから… 「着いたぞ」 「あっりがとう、不知火君」 「ついでに治療もするか」 「え!?いやそれは自分で…」 「…此処に置いて行っても良いか?」 「…お願いします」 渋々頷いた私に対して不知火君は完全に楽しんでいた。…何だか弱みを握られた気がする。 「星月先生はいない、か」 じゃあ少し此処で待ってろよ、と言い私をベッドに座らせた後不知火君は治療道具を取りに奥へ行った。 「(…2人きり…)」 そう考えた瞬間、何故か顔に熱が集まる様な気がした。 「(え、何で!?何で、熱い…)」 「治療道具持ってきたぞー、…てどうした?」 「あ、ああ!大丈夫!全然平気!」 「?とりあえず、治療するぞ」 近くにあったイスをベッドに寄せて道具をベッドに置いた。 「…えっと不知火君」 「どうした?」 「私、腕動くけど…」 そう言えば不知火君は何故か笑ってそのまま気にせず消毒液と綿を取り出した。 「あの…不知火く、」 「少し痛いだろうけど我慢、な?」 「は?いやちょっと…っ!!」 有無を言わせる間もなしに消毒液を含んだ綿を押し付けられて咄嗟に反応が出来なかった。 「あー…悪い、やっぱ痛かったか?」 「や…ただ、吃驚しただけ」 「まだ血取りきれてないからもう一回やるけど、良いか?」 「…うん」 何だかもうこうなったら不知火君は止められない気がした。じっとして動かなくなった私に不知火君はふっと笑ってまた綿に消毒液をかけた。 「じっとしろよ」 「うん」 より近くなった距離に凄くドキドキした。さっきなんかより、凄く。合わさる視線に何だかいたたまれなくなって視線を横にズラした。 「……っ…」 「…終わったぞ」 「あり、がとう…」 道具をしまいにまた奥に行った不知火君をなんとなく見ていたら、何故かまた視線が合った。 「、え」 「まだ痛むか?」 「うっううん!!大丈夫、大丈夫」 そう言えばまた笑った。 「(…もしかして…)」 「好き、だったりして…」 「何がだ?」 「えっ不知火君っ!?」 吃驚して顔を上げればいつの間にかこっちに戻って来ていた不知火君がいた。もしかして今の、聞かれて、た? 「ぁわわ…!いっ今のは関係ないの!って私何言って…!?」 「っ、ははは!!」 「や、え…?」 いきなり笑いだした不知火君にどうしたら良いのか分からなくなる。こういう時ってどうすれば良いんだろうか、とりあえずどうしていきなり笑ったのかを聞かなくちゃ何も始まらない気がする。 「不知火君、どうしたの…?」 「いや、何かお前…可愛いな、」 「……はあっ!?なっななな何が…!!」 「そうやって動揺してる所とか」 「いい、意味分かんない…!!」 心臓がもう飛び出しているんじゃないかと思う位にバクバクと高鳴っている。耳と心臓にはたしかに距離があるはずなのに、まるで隣にいる様に音が大きく聞こえる。 「(好きかもって、言わなきゃ良かった…!まだ好きかも分からないのにっ!)」 「なあ、鈴羽」 「な、に…不知火君」 「俺の事、好きか?」 ありのままの君でいて (な、好き…!?不知火君を!?) (好きかもしんないんだろ?俺を、) (ししし知らないよ…!だって初めてだから…!!) (えっ鈴羽好きな人出来た事ないのか?) (多、分…こんなドキドキはしてない) (俺にはするのか?) (……うん…) (…やっぱお前可愛いわ) (、だからなんで…!?) |