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いつもより近付いた一日


「おはようございます、スカイハイさん」

「名前くんおはよう、そしておはよう!今日はとても良い日だ!」

「はい、とっても良い天気です!」

今日も今日とて名前くんは可愛らしい。明るい挨拶をしてトレーニングセンターに入る彼女は、言わばヒーローのアシスタント、サポーターである。HERO TVのプロデューサーであるアニエスから直々にヒーロー達をサポートしろと言われて来たのは最近の話だ。それまではよくいる1社員の彼女がこの立場になったのは、きっと名前くんが日々頑張った証なのだろう。素晴らしいよ、名前くん!

「おう、今日もよろしくなー」

「よろしくお願いします、名前さん」

ワイルドくんとバーナビーくんが彼女に近付き挨拶を交わす。その光景はいつも見るもので何ら特別変わりはない。だが何故だろうか?私は最近、そのいつもの光景を見るととても、とても二人を羨ましく思ってしまう。名前くんが二人に笑いかけているのを見ると、こっちを向いてほしいと思ってしまう。

「スカイハイさん、どうしたんですか?」

「えっ何がだい?」

「今、どこか思いつめた様な表情をしていたので……具合でも悪いですか?お薬用意しましょうか?」

「っああ、いや、大丈夫だ!私はこの通り元気満々だからね。ありがとう、そしてありがとう!!」

いけないな、ヒーローたるもの彼女に心配をかけてはいけない。さあ、今日も張り切って鍛えよう!と首にかけていたタオルを握り締める。名前くんはスケジュールの確認などをするらしく、近くにある椅子に座った。さり気なく一番彼女の様子が見やすいトレーニングマシーンに行けば、ふと見たファイヤーくんはとても笑顔で此方を見ていた。……私の顔に何かあるのだろうか?するとファイヤーくんの隣にいたドラゴンくんも、微笑ましく私を見つめていた。

それから時間は流れていき、今日は事件は未だ起きていない。平和な事は一番の幸せだ、本当ならば毎日がそうであってほしいが現実はそうはいかない。名前くんは度々このトレーニングセンターに寄ってはアニエスに呼び出され出て行ったりと慌ただしく、また私も彼女がトレーニングセンターに入ってくる度に、テンションだろうか、そういった気分の高鳴りを感じていた。名前くんが来れば気分は高まり、名前くんが去れば落ち着かない時間を過ごす。この感情は一体何なのだろうか?そう思った私は、思わず近くにいたワイルドくんに尋ねてみることにした。

「えっなにスカイハイお前名前ちゃん好きなの?」

「な、何故分かるのかいワイルドくん!!」

「いやいやお前の話聞いたら誰でも分かるって」

そんなやり取りをしているとまた仕事が一段落した名前くんがトレーニングセンターに入ってくる。好き、という単語を思い浮かべた途端、自分の体温が上がるのを感じる。この湧き上がる想いが好きという感情なのだろうか?落ち着かない私を見たワイルドくんはホラ、行けよと合図を出す。だが、一体行って何を話せばいいのかと考えると行くのは悩まれる。そんな私を横目で見たワイルドくんは、突然彼女を此方に呼び出したのだった。勿論私の心はとても、とてもドキドキしていた。ああ、名前くんが近付いてくるのが分かる。

「タイガーさん、どうかしましたか?」

「あーーーあのさ、今日名前ちゃん空いてる?実は今日俺こいつと飲みに行く約束してたんだけど別の用事が入っちゃってさ」

「私は全然良いんですけど…スカイハイさんは私なんかで大丈夫ですか?他のヒーローの方の方が、話も弾むのでは」

「いやいや問題ないって!な、スカイハイ?」

「!も、勿論だとも!!名前くんが良ければ、是非共に行きたい!」

目の前で繰り広げられる会話を眺めていれば、突然話が振られ思わず思ったことをそのまま出してしまう。これで断られてしまったらワイルドくんにまた話を聞いてもらおうと思っていると、なんと彼女からOKが出た。なんという奇跡だろう!ワイルドくんありがとう、そしてありがとう!!流石はヒーローだと感動していれば、音を立てたGPS。

「bonjour、HERO。此処から1km先で銀行強盗が出たわ、至急対処して!!」

「くっそー今良いとこだったのによ!!」

「私はトランスポーターに連絡を出します!」

そう言ってまた彼女が外に向かおうと背を向ける。他の皆も、一刻も早く事件現場に向かおうと走り出す。私も早く行かないとと思う前に、私の手は名前くんの腕を掴んでいた。驚きながら振り向く彼女に、好きよりももっと大きな気持ちが私を動かしている気がする。スカイハイさん、と呼びかけてくれる彼女に、名前で呼んでほしいと思っている。いや、それよりも今は伝えなえければいけないことがあるんだ。

「名前くん、私がすぐに事件を解決しよう。だから、終わってから一緒に…名前くんが良ければ……!」

「………勿論です。私も、すぐに犯人が捕まる様に全力でサポートします。今日、楽しみにしていても良い、ですよね?」

「!あ、ああ、勿論だよ名前くん!!共に頑張ろう!!」

「はい!!」

少しずつだけど近付いているのが分かる。早く事件を解決して、ご飯を食べに行こう。出来ればその時に次の約束もして、そうだ、ジョンの事も紹介しよう。そして、私の名前を呼んでもらいたい。今日近付いたこの距離、ワイルドくんの協力に感謝して。

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