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私達は、友達!!


ヒイラギさん宅セイラくんとのお話

「いたたた……ちょっと今回はやりすぎちゃった、かなあ」

そう呟きながら、ここ最近滞在しているエーギルに入り一息つく。先程まで良心で依頼を受けた魔物退治は、中々に数が多く1人で全てを倒すには少々詰めが甘かったと言う事か。その事を示すかの様に身体の彼方此方に傷が出来ている。無事に依頼を完遂し街の人からは心配されてしまったけど、これでまた皆が安心して暮らしてくれるのなら、この位の傷はとくに気にならない。

「とりあえず、何か言われる前に手当てくらいはしないと。…とくにセイラに見つかったりしたら、」

「!げ、……レミニス」

「あ………せ、セイラ、お、おはよう!」

いつもは私が探したりしないと会えないと言うのに、偶然バッタリ会ってしまった。セイラの手には
彼も依頼を受けたのであろう報酬が入った袋を持っている。…って、こんな観察してる場合じゃなかった。何か言われる前に、手当てを−−。

「えっと……会えて嬉しいんだけど、ごめんね。私ちょっと今忙しいから、また後で!!」

「えっああ、じゃあまたな……って帰すか!!」

「わあっせせせセイラ!?な、何で腕掴んでるの?」

「明らかに見たら分かんだろ!……お前、またこんな怪我してるし。どうせ報酬だって貰ってないんだろ」

少し怒ったように私を見るその目は、言い換えれば心配しているようにも見える。逃げる事を許さないと腕を掴むその手は、小さく見えて。私よりずっと幼いのに、セイラは年の割りに凄くしっかりしていると思う。

「ま、まあ魔物を退治しただけでも収穫はあるし、今回は私が勝手に引き受けた事だから。それに、沢山戦えば強くもなるし!怪我なんて全然平気だよ!」

「はあ………だからって、怪我して良い訳ないだろ。いっつも俺にはぐちぐち言って来る癖に、レミニスはもっと自分の事考えた方が良いよ」

「あ、あはは………」

あははじゃないよ、と呆れた視線でセイラが大きく溜め息をつく。とりあえず、行くよ。掴まれていた腕をそのままに歩き出す事に吃驚して思わず何処に行くのと声をかければ、人目につかない場所と一言。



「…こんな怪我して、いつまでも上手くいくと思ってる方がおかしいよ」

「え?」

「何でもかんでも大丈夫だ、何とかなるってよく言うけどさ、実際怪我もしてる訳だし相棒だの何だの知らないけど相方がいるって言ってるのに1人で行動してるみたいだし、結局何がしたいのかさっぱり分からないよね、レミニスって」

「え、あ、えっと………?」

器用に私の手当てをしながら、私が反応するより先にズラズラと彼が言いたい事を言われてしまい、さすがに返答に困ってしまう。何がしたいのか分からないと言われても、私はただ誰かの役に立ちたかっただけで、たまたま今はこのエーギルと言う街に滞在する様になったから、仲良くなった街の人の役に立とうと思っただけで。でも、セイラが私に求める解答はもっと深い意味でなんだと思う。

「私は………」

「?」

「うーん…何がしたいのかとか、あんまり考えてないかな!!」

「は?何それ」

「そこまで強く何がしたいとか意志がある訳じゃないの。ただ、私は自分の大事な人を、守りたいだけだよ」

「自分の、大事な人……」

「だから、強くなって、楽に皆を守れたら一石二鳥だなって思って!実際、まだまだ力不足なんだけどね」

えへへと苦笑いをしながらセイラを見れば、セイラはどこか少し思いつめた様な顔をしていて。私がそうさせてしまったのか、不安になって彼の名前を呼べば、なんかレミニスに真面目な事言われるのむかつく、と手当てをされた場所を押される。さすがに痛い!痛くしてるんでしょ。そんなやり取りが少し続く、でも不思議と嫌な感じじゃない。

「あっねえねえ、セイラ」

「何?言っとくけど、怪我を押した事は謝らないからね」

「ううん、そうじゃなくて…思ったんだけど、セイラ、私の事心配してくれたの?」

これはただの純粋な好奇心。いつも私が会いに行くと面倒そうな反応をする彼が、今はこんなにもぶっきらぼうで優しい理由が、私は知りたかった。セイラに尋ねれば、ジワジワと赤くなる両頬とプラス、なっななな何言ってんの!?バカじゃない、心配とか、何だよ、別に心配とかしてないし、れっレミニスがバカだからだろ!とさっきまで私を手当てする為に近付いていた距離は一気に離れる。言葉とは裏腹に未だ赤い顔で顔を逸らすセイラは、なんというか、凄く。

「か、」

「?………な、なんだよ」

「可愛いーーー!!」

「う、うわああああ!!?」

思わず痛かった傷なんて吹っ飛ぶ程の可愛さに私より小さな彼に抱きつく。何て可愛いんだろう、これが俗に言うツンデレ、という物なのかと1人納得しながら可愛い可愛いと彼の頭を撫でる。私にもこんな可愛い弟がいたらなあ、なんて思っていれば、離せー!!と何か彼に限界が来たのか暴れ出したので離れる。離れた後の反応は、いつものセイラだ。

「はあ、はあ……子供扱いしやがって…もう手当てしてやんないからな!!」

「ふふ、分かった分かった。もうしないよ、だから許して?」

「う、ぐ……大人ぶんな!」

「えー?でも私とセイラ、6歳も離れてるけど…….」

「ね、年齢は関係ないっ精神年齢がレミニスは低いんだよ!」

そんな事ないと思うけどなあと思いつつ、綺麗に巻かれた包帯にそっと触れながら、治療をしてくれた事への感謝を述べる。私が離れた事によって落ち着いたのか、さっき見せた可愛らしさが半減してちょっとだけ残念。そんな所がセイラらしいといえばらしいのだけど。

「本当にありがとう、セイラ。やっぱ私達って良いコンビだよね!こうやって偶然会って手当てしてくれたけど、こういうのって必然だってよく言うし。私達、何かで繋がってるのかな!」

「よく言うよ………じゃ、俺もう行くから。今度御礼してよね」

「え?あ、待って待って!今度と言わず、今するから!一緒に任務やろ?」

「はあ!?ちょ、まっ俺今終わったばっかだし!!てかレミニス予想以上に元気だし、っあーもう……!!」

去ろうとするセイラを止めつつ手を取りまた歩き出す。後ろでセイラが色々言ってるけど、それはまあ置いておいて……何だかんだ言いつつ溜め息を零しながら着いて来てくれるから、やっぱり彼は優しい。えへへと笑いながら人目のつく場所に出れば、暖かい太陽が身体を包む。怪我も手当てしてくれた、彼の仕事も一区切り、私も一区切りついた。二人の旅路を邪魔するものは何もない!

「よーっし!!私達の最強コンビ、見せちゃおう!ね、セイラ?」

「誰に見せるんだか。……まあ良いよ、やるからには早く終わらせるからね、レミニス」

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