この時間帯は子供の帰る時間NO.1だろうな。とかどうでもいいことを考えて、時計を何度もみながらウロウロと部屋の中歩き回った。…つっても、歩きまわってたのはほぼ無意識だ。 やたらうろついてる俺を、狐紀が「悩みでもあるんですか?」なんて心配そうに見てきやがって、そこで俺はようやく歩き回ってたことに気づいた。自覚すっと結構恥ずかしいぞ…。いまさら後悔しても、狐紀は心配そうなままだがな畜生!
「…くそっ」
こんなところで何してんだ、俺。 時計の針は確実に時を刻んでく。俺が時計を心配し始めてから、すでに短針はひとつ分刻まれた。ようは計、1時間ほど俺はこうしてうろうろ…。やべえ、俺ただの変人じゃねえか。狐紀に心配されるってかなりのもんだぜ。 …べ、べつに俺は良識あって美鶴に話しかけていいか悩んでるだけで、ふたりきりになるタイミング逃したとかじゃねぇ。んなことなら、さっき話とくんだった…。
「…」
狐紀が雑誌とうろつき回る俺とを見比べ、眉をひそめながらも俺を心配してるようにも見える。だからそんな目で見んじゃねえよ。そんな目ぇ向けられてっと、どうも居心地が悪かった。 もういっそ、諦めようかって考えかけた。でも美鶴が行きたそうな顔してたんだよな。きっかけはついさっきの、中頭が言っていた話。そいつが言っていたイベントに、美鶴が、微かではあるが目を輝かせてたのは鮮明に覚えてる。
いちいちアイツが、欲しそうに見てたモノとかを、毎回覚えてる俺もどうかしてるよな…。いや、でも李奈が誰かと出かけた時は、よく相手の様子をチェックしたほうがいいって言ってたが。い、一応妹の女としての言葉だとは思うが、だからこそだろうけどな…!
だから…。 ようするに、俺は美鶴を誘って出かけたいわけなんだよ。しかも俺もこれには興味はある。俺一人で行こうと思ったのに、なんだかんだで手にしたチケットは二人分だ。だからついでだ。そう、ついで。 おい誰だツンデレっつった奴。生憎だが俺は奏架のようなツンデレなんかではない。断じてな。
「誘ってみるか…」 「どうしたんですか?」
前髪をかきあげながらため息つくと、予想してなかった気配が俺の後ろに回り込んできた。後ろから問われた声に、動揺しかけたのを押さえて俺は振り返る。 心臓に悪い…未だにバクバク言っている心臓を悟られないように、平然とした様子で話題を降る。
「…どうしたんだ。堂和学園の奴らと一緒じゃ、なかったのかよ」 「あ、いえ…。中頭さんに、早緑さんが呼んでると…言われまして」
あんのクソ会長。次のSBの時ぶっ飛ばしてやる。
「……それは中頭の勘違いだ」 「そうなのですか…。それで、誘うとは、何かあるのですか…?」
う。意外と覚えてるもんなんだな…。うまく誤魔化せたと思ってた俺は、美鶴が鋭く突っ込んできて呻く。こういう無駄なことと、興味あることは覚えてるんだよな。
うっ。
黙ってるオレを、めちゃくちゃ美鶴が興味津々に見てくる。まっすぐな好奇と期待(おそらく面白いもんでも期待してんだろ)の視線に、手にもってたそれをさり気なく背中に回した。そしてそれを見ていたらしい狐紀が、声を上げた。
「あー、狸珀さんいまのなっスか? 羽田さんに隠し事?」
お前もまた余計なことを…! お前も真面目に裂くぞ! と内心つっこんだが、俺はもっと興味を示した様子の美鶴に諦める。 このままここで、美鶴と話し合ってたらそれこそ無駄な時間。おまけにうっせえ奴らまで現れたら。
か、考えただけで頭痛が…。
額に手を当てながら、俺は冷静を装ってチケットを差し出す。
「これ」 「…これは、天体観測…。あ、今日は流星群が…」 「そうだ。つっても、素人が興味本位で集まって見るだけの集まり…」 「素敵です…」
聞いちゃいねぇ。 もともと誘うつもりだったんだよ、と付け加えようとして、やっぱりやめておいた。
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