絆結び のコピー | ナノ

 暫くすると、何故か知らないんだけど、俺はアイスを手に持っていた。
 俺がアイスをじっと眺めていれば、隣にさっきの男の人が立っていた。俺はガリガリ君なのに対し、男性はチョコがついてるあの高めのアイス。
 俺がそれを眺めていれば、男性は俺の方を向く。

「食え。お詫びだ」
「お詫びって?」
「俺がお前を踏んだことの」

 あぁ……。と声をもらす。
 しゃくりと音を立ててアイスを口に含んだ。なんかさ、もう先輩やらげんげんやらに蹴られたりとか、踏まれたりするのが普通になって、こうやってお詫びされるのが逆に不思議に思ってしまった。慣れって怖いなあ…。
 
「あ、俺は西野優羽って言います…」
「俺はアルベルトだ」

 アルベルトとか、外人さん…? にしては日本語ペラペラじゃね…!? 俺英語なんて何もしゃべれないよ!? ディスイズペンくらいしか自信もって言えないよ!?

「外人さんなんですか?」
「まあイタリアから…」
「すげえ…」

 ガリガリ君をその名の通りガリガリと音を立てて食べる。
 畜生、俺だって外国語ペラペラになりてえよ…。畜生……。あ、ガリガリ君当たった。ラッキー。

「それよりお前はなんであんな、地面に突っ伏してたんだ」
「それは…」

 何て説明しようか…!

「しゅ、趣味です…?」

 何か色々終わったこと言ってしまった気がする。

「そうか…」

 ほらあああ! アルベルトさん悲しそうな表情してる!!
 誤解だと言いたいけど言えない!! ほかになんて説明すればいいのか分からないからだ。でもあああ! 変に誤解されたまま別れんのも嫌だ!
 俺が座っていたベンチに力を込めると、パリッと電気が走った感覚がした。

 やべえ! ミスった!

 そう思うと同時に、

――バキッ

「あ」
「あ?」

 ベンチが真っ二つに割れた。
 やっちまった…! と思うと同時に、ぐしゃっと俺は地面に転がった。
 いてて…。そう思って腰に手を当てていると、頭上に影が重なった。ふと顔を上げていれば、仁王立ちをしたアルベルトさん。やべえ怖え…。

「お前…今のなんだ?」
「さ、さぁ…? かまいたちみたいなもんじゃないですか?」

 視線をわきにずらしていう。冷や汗だらだらだぜもう…! てかアルベルトさん殺気が半端ない! 時羽にもこんな出る人居ないよ!!??

 俺が軽い死を予感していれば、遠くから俺の名を呼ぶ声がした。

「優羽…何してんだ…?」
「げんげん!」

 助かった!
 そう思っていれば、アルベルトさんはげんげんを見てから、俺を再びもう一度眺める。げんげんは何が起こってるのか分からない、そんな顔していて、俺もまだ緊張していた。

「あぁ、お前ら時羽学園の生徒だったのか」

 そう言ってアルベルトさんは、どこか納得した顔をする。俺とげんげんは相変わらず混乱した表情である。

「時羽ならしょうがねえな。お前みたいなやつがいっぱいいるんだからな」

 あぁ、異能者ってことだろうか…。
 意外とこの人はそういうのに詳しかったらしい。そう思っていると、げんげんが俺の前に立つ。

「コイツが迷惑かけたんですよね。すみません」

 そう言ってる割りには、げんげん少し殺気出てるよ! 隠して隠して!
 俺が後ろで慌てていれば、アルベルトさんは両手を少し上げて笑みを浮かべる。

「いやいや、むしろ俺が迷惑かけたしな。気にすんな」

 大人の余裕って感じだ…! 
 そんなアルベルトさんを見て、げんげんの雰囲気は少しマシになっていた。

「俺は時羽学園の東堂源輝です」
「そいつにはもう言ったが、俺はアルベルトだ」

 アルベルトさんは、どうやらどこか遠めの学校でALTをやっているらしい。自己紹介でそう言った。
 そういうとアルベルトさんは、ゴミをゴミ箱に捨てて、俺等の方を軽く見る。

「色々迷惑かけたな」
「いえ! 俺こそアイスありがとうございました!」

 俺がお礼を述べれば、彼はふっと笑みを浮かべる。

「あぁ、そうだ東堂だったか?」
「はい?」
「お前殺気は隠せるようにしておけよ」
「は、」

 げんげんが驚きで目を丸くしている。おぉ…こんな表情みるのも珍しい…。
 するとアルベルトさんは、今度は俺の方を見る。

「それと西野、英語ぐらいは少しは勉強しておけよ」
「よ、余計なお世話ですー!」

 そう叫べば、アルベルトさんは笑いながら歩いて行った。

「何だったんだあの人…」
「俺も分からない…」

 でも、何かあまり悪い人には思えなかったなあ。
 まぁ、所々普通の人ではなさそうな感じはしたけども!!

「それより優羽! お前は勝手に…!」
「ごめんなさーい!!」


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