絆結び のコピー | ナノ

 財布の中身を覗いて、アルベルトは満足気に閉じた。
 仕事を地道にやって、コツコツと小遣いが入った財布はジャラっ音を立てている。簡単に言えば、使う分だけのお金なので、小銭が多いと言った方が正しい。給料から少しずつ削り使う小遣い。これを使うものは決まっていた。
 甘党の彼が使うものと言ったら、ということだ。

 飴玉を買おうか、アイスにしようか…それともチョコレートという手もある。考えていたら、チョコレートがすごく魅力的な気がしてきた。

「チョコレイト・フフフン……」

 アルベルトは滅多にしない、鼻歌をそらんじ始める。曲はまるっきり季節外れではあるが。
 チョコレイト「デュフッ!」チョコ……あん? 人が気分良く歌ってる時に、余計な合いの手を入れやがって、とアルベルトは思った。大体、そこの歌詞はデュフッじゃなくてディスコだぞ! とも。

「……うわ…何か踏んだわ…」

 それから、今のデュフッが合いの手ではなく、足元からの悲鳴だった事に気がついてしまったので、嫌な予感を感じつつもアルベルトは片足をゆっくり上げて、目線を股下へと落としてやった。
 ……そして次に、見なかった事にしたいなぁと、心底思ったアルベルトは財布をぎゅっと握り締めた。




「おい、大丈夫か? ええと…おい、ガキ」

 ためらった末に問い掛けると、足元の物体はゴロンと仰向けになった。予想はドンピシャで、その物体はガキだった。いや、ガキと言ってもそこまで幼いわけでもなく、見た感じ唯と同じくらいか…?
 まあコイツを軽く揺さぶれば、茶髪のこのガキは眉間に皺を寄せた。

「う…?」

 男のくせに大きい目がきょろんと動いて、俺の姿を捕まえる。
 一拍置いて、コイツの腹から地鳴りみてーなグウゥ…って音が聞こえた。口角が上がってるから笑ってるように見えんだけど、困ってんだよな? 多分。こいつ、マジ大丈夫か? もしかして俺頭でも踏んで、コイツ頭でもイかせちままったか?

「……あれ、老けた?」

 心配がどこへ行ったのか、一気に殺意が沸いた。




*****




 やあ、俺の名前は優羽! 今まで俺が経験したことを正直に話すぜ!
 まあキャラが可笑しくなるからこの辺にしておくけど、何があったかと言えば、原因はげんげんである。
 いや、まあ俺が悪いんだろうけどさ…。なんかげんげんが能力使って移動しようとしたから、俺が連れってってー! とげんげんに後ろから思いっきりタックルしたら、げんげんがミスっちゃって…。まぁ兎に角それで、俺が後ろからタックルしたせいで座標がずれてしまったらしい。俺だけ変なところに落とされた。
 そしたら、急に踏まれたから死にかけたんだけど、俺を踏んだ人がさ雰囲気がげんげんに似てて、それで間違えてげんげんだと思っちゃったんだよ。そして老けたかと思ったら、よく見たら別人で……。

「すみません人違いでしたすみませんすみません…」

 相手によって顔をがっしりと掴まれ、ギチギチと頭から音がする。人間の頭ってこんな音するんだね。俺知らなかったよ。

 



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