絆結び のコピー | ナノ

 今は夕食の時間だ。 ちなみに夕食と書いて戦と読む。
 何故かって? それは俺の家の夕食の取り方にまず原因がある。

 俺の家は1つの皿におかずが乗っていて、好きな量を各自で取るようになっている。だから好きなだけ食べれるってこと。
 だが、それは数に限りのあるおかずの時には、大変なことになる。そのことを肯定するかのように、今夕食では戦が起きていた。

 原因は残り1つの唐揚げ。
 これはお互い好きな料理の1つであり、それぞれ同じ数を食べたが、1つ残ったのでこうなった。
 ちなみにその唐揚げの上には俺と妹ちゃんの箸。 お互い唐揚げの上で箸を重ねている。
 行儀が悪いと言われてもしょうがないが、何故かこの勝負には負けたくなかった。

「―っ妹ちゃん、ここはいっつもハードな練習を終えた俺に譲るべきだよね?」
「そっちこそ、成長期な私に渡すべきじゃない?」
「いやいや、俺も絶賛成長期だけどね」

 ぐぐぐと力を込める。

「いいや、関係ないね。それにこういうのは妹に譲るってものじゃない? お兄ちゃん?」
「じゃあそっちこそ、年上には気を使えって習わなかった?」

 お互い譲るように言うが、あぁ言えばこう言うで埒があかない。
 そして何故ここまで争ってるかと言えば、この唐揚げはげんげんが作ってくれたやつなのである。お裾分けで貰ったんだ。げんげんの料理は本当に美味しいから、妹ちゃんと争うのは逆に普通なのだ。

「ほーら妹ちゃん。手が震えてるよ? 怖いのかなー?」
「お兄ちゃんこそのばしてる腕がブルブルしてるよ?」
「気のせいじゃない?」
「いやいやそんなこと無いって!!」

 お互い顔は笑っているが、青筋が出ている。

「「いいから箸どかせよ!!!」」

 ついに兄妹喧嘩が開始される。そう思い身構えると家のインターホンが鳴った。母さんが出ると俺を呼んだ。

「優羽〜? 源輝君だよー」
「え!? げんげん!? …ってあぁぁぁぁ!」

 妹ちゃんはこのチャンスを逃がさなかった。げんげんという言葉に反応した俺の箸をどかし、自分の口に入れる。

 勝った。

 妹ちゃんがその様に勝ち誇った表情を見せる。

「くっそぉー…」

 悔しい言葉を残し、げんげんの待つ玄関に向かった。

「なぁにげんげん…」
「うおっ気持ち悪ぃ」

 俺がずるずると壁に体を預けながら玄関に向かえば、このようなコメント。酷い…。
 俺が近づけば、げんげんがどうしたと聞いてくる。

「俺は戦に負けたんだ…」
「何があったんだよ」

 まぁ良いか。そう言ってげんげんは何かを差し出してきた。

「ほれ、お裾分け」

 そう言ってポンと乗せられたのは、パックに入っている…。

「肉じゃがぁぁぁ!!」

 俺がそう叫べば、げんげんはビックリして少し引いた表情をする。そして俺が感動すれば、バタバタと妹ちゃんがやってくる。

「あぁぁ! 源輝さん!」

 妹ちゃんがやってきて俺を横に突き飛ばす。頭が壁に激突した! ドゴンいった! 痛い!
 頭を抱える俺を放っといて、妹ちゃんはげんげんに近寄った。

「源輝さんこんにちは!」
「お、おう…」

 軽く引き気味なげんげんに気付かず妹ちゃんはげんげんに近づく。

「今日素敵ですね!」
「おう…」

 じりじりと妹ちゃんが近づく。

「それで、その…源輝さん。今日は…」
「あぁ…ここに」

 そう言うとげんげんが取り出したのは、

「源輝さんのケェェェキ!!」
「ずるいよ妹ちゃんんんん! げんげん! 俺には!?」
「お前には肉じゃがあるだろうが!!」


戦の時間です

 



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -