絆結び のコピー | ナノ

「大変申し訳ございませんでした」

 上でおじいさんがチョキンチョキンと枝を切っている音を聞きながら、俺はさっきげんげんの草ボールがぶつかった男の子に土下座していた。
 あれ、げんげんの投げたやつなのに、何で俺が謝ってるの。まあげんげんが無表情でいるからなんだけど。

「いや、もう良いよ」

 小さく溜息を吐かれながらそう言われる。それに小さくホッと息を漏らし、立ち上がる。

「えっと、さっきは本当にごめんね。俺は西野優羽っていうんだ。んでこっちのずっと仏頂面なのがげんげん…」
「おい、その名前でいうのやめろ。俺は東堂源輝だ」

 さっきは悪かった。そう言ってげんげんが謝る。それに相手は、いや良いって! と手を横に振る。

「俺は九アユムだ」
「アユムくんかー。じゃあ、あっくんだね!」
「あ、あっくん…?」
「え? ダメ? あ、じゃあアユりんにしようか!」
「止めろ!」

 アユりん嫌? 俺がそういえば、彼は複雑そうな表情をしてげんげんを見る。

「悪い。此奴変なあだ名つけるんだ」

 変とは失礼な。

「じゃあもう良いよ…アユりんで…」

 案外見た目に反して良い人、っていうか優しい人なのかもしれない。背も高いしね。俺が175cmで、げんげんが180cmなのにげんげんより大きいし。
 俺がそう思っていれば、アユりんは俺たちが集めた落ち葉に目をやる。

「何やってたんだ?」
「ん? 落ち葉集め。お手伝い」

 そういっておじいさんの居る方に顔を向ければ、アユりんもそちらを向き、納得する。

「じゃあ俺も手伝うわ」
「え? 良いの?」
「あぁ」

 アユりんにそういってもらえて、思わず笑みが浮かぶ。そして3人で少し止まっていた作業を再開した。




 そして、それからしばらく。沢山の枝と枯葉が集まった袋を見て、俺達は思わず笑みがこぼれてしまう。
 やばい、なんていう達成感。
 俺達が達成感に浸っていれば、おじいさんが俺達にお礼を言ってきた。
 いやいや、俺が勝手にやったことだし!
 俺はそう言うも、お礼を言われればそりゃあ嬉しいもので、思わず顔が赤くなる。

 その様子をげんげんに鼻で笑われたが、そこは無視しよう。

「これ、良かったら貰っておくれ」
「え、えぇ! そんな悪いですよ!」

 そう言って、何かの紙袋を頂いた。少しズシッとした。
 何だろうと思って中を覗けば、そこには、なんとまぁ魅力的な秋の味覚が。

「あ、ありがとうございます! 本当に良いんですか!?」
「構わんよ」
「ありがとうございます。あ、でしたらあの枯葉とかも頂いて宜しいですか?」
「あぁ、良いとも。あとは捨てるだけだからの」
「分かりました」

 そう言っておじいさんと別れ、2人は俺の紙袋の中が気になるようで、駆け寄ってきた。
 そして、中身を見せれば、少しばかりか目が輝く。

「ねえやろうよ!」
「ちゃんと後片付けもしろよ」
「分かってるって! ほら、アユりんもやろ!」

 俺がそういえば、アユりんは首を縦に振ってくれた。
 そう言って、皆で空き地を目指す。途中でスーパーに寄って、少し買い物して、空き地について早速枯葉を全部出した。

「よーし、ちきちき焼き芋大会ー」
「何が大会なのかよく分かんねぇ」
「煩い」

 げんげんにツッコミを入れられながらも、紙袋の中から、おじいさんから頂いた秋の味覚をごろりと出した。

「よーし、アルミホイルでさつま芋を包んで。」

 おじいさんから頂いたさつま芋を、皆でアルミホイルで包んでから、枯葉のなかに突っ込み、火をつけた。
 皆してワクワクしながら待つ事にする。

「いやー、秋だねぇ」
「すっかり寒くなったもんな」

 アユりんに同意してもらい、笑みを浮かべる。
 そして、焼けるまで暇だ、という事で何して遊ぼうかと思っていれば、足元に良い棒が2本落ちている。
 俺はそれを一本掴んで、アユりんの方を向いた。

「覚悟ッ!」
「はっ! 甘いっ」

 一瞬で、色んなことか起きた。
 覚悟ッ! といいながら俺が木の棒を振り下ろす。続いてアユりんが甘いっ、と短くいいながら振り返り、俺が降り下ろした棒を素手で受け止めた。

 …し、真剣白羽取りだと…!?

「…腕を上げたな、アユりん」
「おかげさまでな」
「何だこの茶番」

 ギリギリギリと力で押し合いをする俺ら2人。アユりんは相変わらず木の棒を素手で挟んだまま、半笑いを浮かべて競り合ってた。
 げんげんのツッコミを聞きながらも、俺は離れる。

「ふふふ、それでこそ勇者」
「おいこれ続いてんのか」
「この木の棒を受け取るがいい」
「悪いな」
「九も乗るな。もう止めろ恥ずかしい」

 そんな感じで、童心に返って盛り上がっていれば、いつの間にか芋も焼けていた。
(げんげんは入ってきてくれなかったけどね)

「おー! 美味そー!」
「熱いだろうから気をつけろよ」
「あちっ!」
「言ったそばから」

 俺は芋を口に含んだ瞬間、案の定というか、何ていうか。皆して笑みがこぼれる。うん、美味しい。労働のあとだから、余計に美味しく感じる。
 アユりんもげんげんもアルミホイルを剥がして、芋を口に含む。軽く笑みを浮かべる二人を見ていれば、自然と笑みがこぼれる。

「もう一つ貰う」
「九何個目だよ」
「誰か俺に一個とって」
「ほらよ」
「げんげんがデレた…だと? あぁ嘘です、ください。手を引っ込めないで」

 パチパチと枯葉が燃える音を聞きながら、俺達は見事に芋を食い尽くした。



秋の音ずれ

 



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