絆結び のコピー | ナノ

 ヒュウッと吹いた風が、頬をかすめた。その風に、思わず体が震える。
 暑かった夏も過ぎ、毎日あっちーあっちーと、手で顔を扇いでたのが、ついこの間のようなのに。いつの間にか暑さもなくなり、肌寒くなってきていた。

 かさりと、足元から音がする。足元を見れば、そこには沢山の落ち葉があった。
 ふと上を向けば、おじいさんが鋏で小気味良い音をたて、枝葉を切っていた。冬に備え…って所だろうか。
 お疲れ様です。そう言えばおじいさんが笑みを返して、ありがとう。と答えた。思わずほっこりする。

 すると、向こうから足音がした。

「優羽」
「あーげんげんだ。寒いね」
「そうだな。まあもう秋だし」

 足音のした方を見れば、げんげんが歩いてきていた。げんげんはそう言うと、軽く腕を摩っていた。そういえばげんげんは寒さにはあまり強くないんだったっけ?
 それを見て、思わず笑みがこぼれる。だったら厚着しろよーとか言ってみると、うっせ、と返された。

「で、どうしたの?何かあった?」
「いや、ただ優羽を見かけたから偶々声かけただけだ」
「…っ! げんげんがやさしい…! 嬉しいこと言ってくれるなぁ!」

 バシバシとげんげんを軽く叩いてみる。
 痛っ! と叫び、変わらないいつものしかめっ面で俺を見る。屈託のないその表情に、俺が思わず笑みを浮かべると、そしてそのまま俺の背中に膝を入れる。
 いったー…!

 軽くふくれっ面で、口を尖らせていれば、げんげんに呆れられる。くっそー…。

「じゃあ、何か食べ物巡りでもする?」
「食欲の秋ってか」
「煩いな、そういう気分なんだよ」

 俺がそう提案すれば、げんげんは呆れながらの笑みで答えた。相変わらず眉間の皺は取れてないけど。そして、出かけようかと思っていれば、ふと目に入ったのは、さっきおじいさんが切っていた木の枝。そして枯葉。
 俺はそれを見て、ふむ、と顎に指を当てる。

「食べ物巡りの前に、少し手伝ってくれない?」
「は? 良いが、どうした?」
「少し、ね」

 俺はそう呟くと、おじいさんの下へ向かう。

「すみません! この枯葉の処理、お手伝いしましょうか!」

 俺がそう叫べば、おじいさんは笑みを見せて「じゃあ、お願いしようかな。」と言ってきた。
 俺はそれに、分かりました、と答え、げんげんの方を向く。

「食べ物巡りの前に、少しお腹を空かせておこう!」
「何で俺まで」
「良いじゃん良いじゃん!」

 俺はそう言うと、おじいさんに言われた袋に、枯葉や枝を詰めていく。げんげんは渋々であったけれど。
 それに思わず笑みが浮かび、げんげんの名前を呼ぶ。
 するとこちらを振り向き、その瞬間にかき集めた落ち葉をぶわっと放る。すると当然落ち葉はげんげんの方に向かい、視界が暫くの間落ち葉で埋め尽くされる。

「あははは! 忍法葉隠れの術ー! なんてねあははは!」

 俺が笑いながらそういえば、げんげんが肩や頭に乗った落ち葉を手で払い、そして数枚をぐしゃっと握りつぶす。
 あ、ヤバい。いつもより優しい雰囲気だったからって調子のりすぎた。

「いい度胸だな、優羽」
「あ、あははー…俺の度胸はミジンコ一匹分ダヨー」

 げん君はそう言うと、落ち葉を数枚集める。それをギュッギュッと丸めて、そして近くにあったススキでグルグル巻き、ボール状にした。
 ワー、げんげんキヨウダネー。
 そしてそれを数回自身の手の上でポンポンと放り、数回やったあと、パシリとその草のボールを掴み、振りかぶった。

ブンッ!

「あっぶな!」

 寸前のところでよける。よ、容赦なかったこの人…。
 そう思っていれば…。

「ブッ!」
「え?」
「あ」

 後ろから声がし、振り向けば落ち葉のボールが顔にヒットしている、パッと見た感じ俺と同年代の男の子がいた。
 って…パッと見た感じ不良? 危ない?

「テメ…」

 危なーい!!

 



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