いつも気づかない。しっかりしているのに恋には案外鈍感だった。わたしが告白するまでもまったく気づかなかったみたい。だから告白したときの驚きようったら!え?そうなの?みたいな。友だちや周りの人はすごくわかりやすいっていわれたんだけどなあ。付き合ってもその鈍感さは健在だった。わたしはもっと恋人っぽいことをするのが夢だったのに鈍感だし部活は忙しいしで正直なんにもできていない。唯一一緒に居られるのはお昼休みだけ。でも結局お昼を一緒に食べようっていつも言うのもわたしだった。
「ごめんな、ほんと。」 「なにが?」 「最近忙しくてさ、あんまり構ってやれないじゃん。」 「…上から目線。」 「え!ごめん!」 「ちょっとうれしい。」 「なんで?」
彼はなんのことかさっぱりという顔をしている。いまさらどうでもいいこと、わたしは亭主関白に憧れている。最近は草食系男子なんてはやりだけどそんなのいやだ。男の子にはしっかりしてほしいの。だからほんの些細なちょっとした上から目線がすこしうれしい。決してマゾヒストなんかじゃなくてね。あ、今思えば彼こそ草食系男子だった。
「純太に欲ってあるの?」 「え、なにいきなり。」 「あるの!ないの!」 「…いや、まあある程度は。どしたの?いつもよりなんか激しいね。」 「じゃあ、もうすこしわたしに我が儘いって!」 「え、」 「わたしは、疲れたあなたを癒したいの!」
純太はぽかんとしていた。同時に自分の言った言葉に自分が赤面してしまった。どうしようひとりで勝手に、
「あっはは!もう夫婦みたいじゃん!」 「…ごめん」 「いや、謝らなくていいよ!ずっと思ってたけどさ、おまえってほんと可愛いよな!やっぱそういうとこに惹かれたんだろうな。」
耳がこそばゆくてお弁当に手をつけようとしたら、もう唐揚げ一個しか残っていなかった。なんだろう、ううん、全部もっていったよね、純太。はずかしい、本当にはずかしい。最後の唐揚げを一口でいっちゃう。おいしい。
「唐揚げおいしい。」 「そっか。将来俺にも作ってくれよ。」 「…たぶん。」 「ぜったい!」
調子のってる、ぜったい。ああ、いうんじゃなかったな。
「教室まで送ってく」 「え、いいよ!」 「一緒にいたい、おれが。」 「…うん」
純太が左手をだしてきてほらよ、だって。またはずかしいこと。でもうれしいから右手をだした。教室にいたひととか廊下にいたひとみんなにたくさんみられて、たくさん冷やかしをうけたけれど、すっごくはずかしかったけど、すっごく嬉しかったな。もう確実に純太の左側はわたしのものって思ってもいいよね?
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