へ、俺のこと好きなん?


「なんで気付かないかな…。」
ガックリ、と私は肩を落としながらも項垂れた。
後ろからは帰るでー!とのお誘いの声。私は浅く溜め息をつきながらもアントーニョを追いかけた。
そういえばな!とアントーニョは楽しそうに話す。
その楽しさをどうにか伝えようとジェスチャーまで付け加えてまでいる。
私はといえばそう、と苦笑をしつつ話を聞くだけだ。いつもなら大声を上げと笑うだろうに。
そんな様子の私にアントーニョは眉を伏せた。なあ、と私の名前を呼んだアントーニョはどこか寂しげに見えた。
「…最近ほんま元気ないで?どないしたん?」
「……別にそんなことないよ?」
「そないなことあらへんやろ!…好きな奴のことなんやろ?俺、男やし力になると思うから。」
「だから……。」
「せやから俺を頼ったって!」
「アントーニョ、」
「応援したるか「アントーニョ!!」
怒鳴るような私の声にアントーニョはびくり、と身体をふるわせた。
「もう、いいよ…。」
まるで、自分にそう言い聞かせているようだった。
アントーニョは好き。だけど、気付いてくれない。私のことをどう思ってるか、といったから結局は友達止まりの"好き"なんだ。
そう思えたとたんに、今まで絶えてきた涙が、溢れだす。止めどなく溢れだした涙はまるで私の心みたいだ。気持ちがいっぱいになりすぎて、行き場のない気持ちが溢れだして、捨てられる。悲しすぎて、もっと涙が溢れ出そうだ。
「どう頑張っても、気付いてくれないし。」
「そないなこと、」
「どうせ、私は友達どまりで、」
「なんでそな、」
アントーニョの言いたいことが、手に取るように分かる。
そないなことあらへん。なんでそないなこと言うんか。その気持ちが、辛かった。
だって結局は気付いてくれなかったじゃないか。
「もっ、アントーニョのばか!!」
「ちょっ、待ぃ!!」
その場から走り出そうとした私の手を、アントーニョが止める。なんで止めるの、期待してしまうじゃないか。
「落ち着いたって!きっとそいつも、」
「気付くはずないっ…!!」
「なんで自分が泣かなあかんの!?そいつ誰な、」
「お前のことだよ!ばかぁ!!」
「へ、俺のこと好きなん?」

 
腑抜けた声を出して、俺は思わず握っていたはずの手を離してしまった。
俺の手からスルリと離れる手。
 
――私、好きな人がいるんだ
優しくて、
強くて、
普段はかわいいのに
本当はかっこよくて、
すごく頑張り屋で、
大事な人のために喧嘩もして。

 
なんやの、なんやの
全部俺のことやったんかいな。
馬鹿みたいに、嫉妬して、あいつを追い詰めもうて、
困らせて、辛い気持ちにさせて、最後に泣かせて…。
最悪やないか、
でも、あいつはそないな俺でも、好きってゆーてくれますか?
(彼が彼女に追い付いて)
(引き止めて)
(好きというまで)
(あと5秒)


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