「唇、切れてる。」
悠の言葉に雲雀は動かしていた右手を止め、唇に触れた。
「あぁ、」
ヒリヒリすると思ってたら切れてたのか、と呟いた雲雀は唇の端の傷口をなぞる。
 最近、急激に低くなった気温と同時に湿度も下がったせいで乾燥が酷いこの冬は、唇だけでなく肌の乾燥も酷い。
カサカサと潤いを少なくした湿度の低さに、雲雀は僅かながらも眉を潜めた。
「雲雀」
自分を呼ぶ声に顔を上げれば悠の手から投げられたそれは、綺麗な弧を描き雲雀の手に納められた。
訝しげにそれを見れば、シンプルな青に白文字でメーカーの名前が書かれている。
「…リップ?」
「そ。俺もこの時期はよく唇切れるから持ってんの。」
使っていいよ
そう言って書類に向かう悠に雲雀は動揺した。
「君、なに、…」
「?」
どうしたんだ?と尋ねてくるような悠の目。
思わず言葉を呑み込んだ雲雀は小さく溜め息をついた。
「…ありがたく使わせてもらうよ。」
「おー」

 
「痛っ」
帰宅路についた悠は思わず口許を押さえた。
「どうしたの?」
「唇切れた…」
「あー…」
痛いもんね、と同意を求められた悠は素直に頷く。
「嫌だなぁ」
そう言いながらもポケットからリップを取り出した悠はリップの蓋を取ろうとしたところで手を止めた。
(…そういや今日、雲雀、も…)
あ、と悠は思わず声を漏らした。
それに気付いた雪詠は首を傾げる。
「どうしたの?」
雪詠から目を反らした悠は思わず顔を赤くしながらもポケットにリップを押し込んだ。
「…なんでもない。」

 
 
意識するけど男だし…と思う雲雀と後から気付いて意識しちゃう悠



乾燥肌にご注意

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