act.2
パートナー探しは慎重に
「パートナーかー」
くじで当たったはいいけど、実はパートナーとかあまり考えてなかったんだよね。
女テニから選ぶのが無難か。
パートナー探しの為女子の練習しているコートにむかう。
「ねえ、あれ幸村くんじゃない?!」
俺に気付いたみたいでキャーキャー騒ぎだす。
気にせずにパートナーになりそうな人を探すが……
「全員がこの様子じゃ練習なんてできないね」
パートナーになったとしても集中して練習できるわけがない。
なびかない人を探すのは、なかなか難しい。
自分で言うのもなんだが、俺たちテニス部は人気がある。
その中でも俺は《特に》人気がある。
「人気者はつらいなー」
時間が経つのは早いもので、パートナーが決まらないまま一週間すぎた。
「お困りのようじゃな」
「なんだ、仁王か。赤也も柳も決まったのに俺だけまだなんだよ」
突っ伏して泣きまねをする幸村。ピヨ、とポケットから一枚の紙を幸村に差し出した仁王。
「紙?」
「そいつ見てみんしゃい。
ちょうど次の時間、体育でテニスやっちょるけ」
「ありがとう、仁王」
「プリッ」
後ろ手に手を降って教室を出ていく。どういう風の吹きまわしかわからないが、仁王に感謝して、紙に書かれた彼女を見て見ることにした。
教室を出て、テニスコートに向かう。
授業をさぼることになるが、一回くらい大丈夫だろう。だって俺優秀だし。
木の影に隠れて様子をうかがう。紙に書かれた名前をもう一度見る。
「高野律か」
仁王も一緒に授業を受けてる。俺に気付いたかと思うと、ひとりの女の子をフェンスの近くまで連れてきた。口パクで、こいつじゃ、と言ってるのがわかる。
「仁王、いきなりなに?
あたし早く打ちたいんだけど」
「もうええよ。
律、今日は俺と打たん?」
「えー、やだよー。あたしみたいな初心者が全国選手相手にまともに打てるわけないじゃん」
「加減するき。な?」
「ったく、どうなっても知らないからね!」
ラリーを続けるふたり。
初心者というにはまずまずかな。
「にお、にお!今のフォームどうなってた?」
「もう少しボール引き付けて打ってみんしゃい」
「わかった、サンキュ!」
しばらくすれば今度は女子同士で試合が始まった。
「ぎゃあああ!アウトだと思ったのにいい!!」
「っしゃ!キタコレ!!」
おもしろい子だ。
本当に楽しそうにテニスしてるだけでなく、周りまでそれが影響してる。
なびかないし、なにより他と違い向上心がある。
「仁王、ありがとう」
俺は、そっとその場を後にした。
11.01.03
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