act.11

私は私


『常ー勝ーっ 立海大!!』


澄み渡る青空の下、神奈川県大会が幕を開けた。
ミスクドの大会は関東大会前だが、県大会を挟んでしまった。

私たちのために時間を割いてくれているにも関わらず、そのような様子を一切感じさせない彼らのプレー。
レベルが違うことを嫌でも思い知る。
彼らが勝ってくれることは嬉しい。
でも、心のどこかで素直に喜べない自分がいた。
握る掌に力がこもる。

悔しい、もっとうまくなりたい。
彼らに負けないくらい強くなりたい。


「律、大丈夫か。ぼーっとしとったようじゃが」
「大丈夫、いつものことだから」
「自分でいいなさんな。
まあ、こまめに水分はとりんしゃい」
「はーい、飲み物買いに行ってきまーす」


俺コーラな、と聞こえた声を無視し近くの自販機へ向かう。
買ったばかりに飲み物をおでこにあてればひんやりとして気持ちいい。
ベンチに腰掛け、おでこにあてていたスポーツドリンクを開ける。
ぷしゅっといい音をして缶が開く。
一口飲めば独特なあまさが口の中に広がる。
歓声が遠くで聞こえる。
試合終わったのかな、なんて考えるものの足が動かない。

頭の中で渦巻くのは精市の試合してる姿。
私の知っている精市ではなかった。
彼が神の子といわれるのも今なら納得できる。
私がパートナーで本当にいいのだろうか?
きっと彼なら……。


―――君じゃなきゃ、だめなんだっ!


ふと精市にペアの相手を申し込まれたときのことが脳裏をよぎる。
そうだ、あのとき精市は他の誰でもなく私を選んでくれたんだ。
私じゃなきゃダメとまで言ってくれた。
私はまだ精市のために、みんなのためになにもやれてないじゃないか。

私がどこまでできるかはわからない。
わからないけどっ!
精一杯やってみよう、みんなのためにも、自分のためにも。
まだ始まったばかりじゃないか。


「らしくらしくない!」


飲み終わった缶をゴミ箱に入れ、伸びする。

さあ、コートに戻ろう。
今なら心の底からみんなに言える気がするんだ。
県大会優勝おめでとう、て。






11.11.23

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