これが僕らの、(風丸と半田)


おかしい

どうしてこうなった?
俺は平凡という自分の特徴(特徴なのか?)を噛み締めつつ、己の甘さ、惨めさ、不甲斐なさそれからそれからエトセトラ
まぁつまり自分の何とも言えない所が悔しくて独り寂しく泣いていたんだ(ありきたりでまた普通とか言うなよ!)
しかしどうして俺は抱き締められている?
しかも普通、中途半端、平凡からはかけ離れた人間に!(新しい苛めか?)
それが柔らかい女の子とかだったらまだ嬉しかったかも(俺はアホか!)
ああほら涙なんか引っ込んじまったじゃねぇか
なぁ、何なんだよ


「…どうしたんだよ……風丸…」
「…………」


少しだけ俺より背が高い風丸は(ちょっと悔しい)丁度俺のアホ毛の部分に顔を埋め、だんまりを決め込んでいた
おいおい質問には答えようぜ
てか後ろからだから顔、見えねーし!
どんな表情してんのかも分からない
うわ、なんか不安になるな これ
えっと…俺、平凡が嫌で泣いてただけだよな?
俺なんか悪いことしたか?
う…うざいから泣くなって…!?
ちょ、それはさすがに傷付くわ!


「か…風丸ー…」
「……なよ……」
「へ…?」


「…泣くなよ…」



うわぁぁぁぁぁぁ
みっ…耳元…っ!!
風丸の変声期前のちょっと掠れたハスキーが俺の耳元で囁いた
アホか!そんな良い声で喋るな!バカ!
じゃなくて……へ?


「な…何で…?」
「そりゃ……好きなヤツが、泣いてたら辛いだろ…」
「は………!?」


好きなヤツ?ちょっと待て、今この部室に居るのは俺とお前
イコール選択肢は俺かお前
いやいやいやさすがに自分好きーはないだろ、てか風丸泣いてねぇし
てことは………?
いやいやいや!あり得ないでしょ!だって俺男だし風丸も男だし(超美人だけど)
頭も良くて足超早くてサッカーも上手いし、オマケに顔も良い(女顔だけど、それが今は流行ってるみたいだし)そんなヤツが
俺みたいなオール3野郎(いろいろな意味で平均てことな)好きなわけないじゃん!
何?趣味嗜好まで非凡な訳?
そりゃ俺には真似出来ないわ!



「………半田…?」
「相手、間違ってない?」
「は」
「いや…だって俺だよ?あ、何か一之瀬みたいになっちゃった、じゃなくて!特徴!頭のアホ毛!!以上!!みたいな俺だぜ?元陸上部のホープ、現サッカー部の王子が何ゆえ俺…?」


うん 超正論、拍手喝采…………なんだけどなぁ…

「……風丸さん?」
「…………」


風丸 目に見える程怒ってまーす
あれー………?


「何怒ってんだよ」
「……か…」
「は?」
「バカか!!」
「なっ…!?」
「人が必死の想いで告白したのに答える前からあしらうんじゃねぇ!!バカ半田!!」
「えっえぇぇぇぇ!?」
「今日の授業中ん時からずっと心配してて、練習中も気が気じゃなくて…一人で部室に残ってるみたいだから心配で覗いてみればロッカーの方向いて一人で泣いてるし!アホか!!めちゃくちゃ胸がきゅーんてしたんだぞ!!心なしかアホ毛が垂れ下がってるし!」


ええええええ
ちょ、風丸てこんな饒舌だっけか?
てか俺のアホ毛は動かねぇよ?


「風ま「しかも思わず抱き締めちゃったしさ!しょうがないだろ!あんな姿見せられちゃ!男だったら抱き締めるしかねぇだろ!!しかも勢いで告っちゃうしな!?」
「は…はぁ…」
「そしたら"相手、間違ってない?"だろ?俺の生涯で一番カッコつけた瞬間は何だったんだよ!返せ!俺のプライド!」
「す、すみません…」
「仕方ないだろ!好きなんだから!!どうしようもないんだよ!お前なんだよ!お前が、半田が好きなんだよ!!半田じゃなきゃ……ダメなんだよ……っ」


そのまままた俺を抱き締める風丸
形勢逆転…は違ぇか
今度は風丸が泣いちまった…
俺が…泣かしたのか
ああ何だろう 胸が痛いな


「風丸…」
「うるせー…バカ半田ぁ…」
「な…泣くなよ…」


今なら 少しだけ風丸の気持ち分かるかも
あれ?じゃあ俺風丸のこと………



「か…風丸…」
「…………なに」
「わっかんねーけど…あの…その…」
「これ以上俺のプライド傷付けんなら許さない」
「いや…あの、だから」
「…はっきり言いなさい!!」
「はっ…はい!!!」


「俺!かっ風丸のこと…嫌いじゃない……かも…」
「は」
「うん…?や、何か風丸が泣いてると俺こう…辛くなるっつかなんつーか…風丸がさっき俺に言ってたことってそういう事なのかなって…や、よく分かんないけど」
「お、俺もよく分かんないけど…」
「んー…?何て言や良いんだ…?」
「え、とりあえずさ…俺のこと、嫌い……ではないよな!?」
「え!?あ…うん」
「…それなら………………………ん?」
「どした?」
「…半田は泣いてる俺を見て辛くなったんだろ…?俺は半田が好きで、だから泣いてる半田を見ていられなかった…あれ…?」
「………?」
「え……半田…



俺のこと好き?」


「っ!!!!!!!!!」
「なっ…………」
「あ…改めて言われると…何かなぁ」
「ちょ…え…マジ?マジ!?」
「ぐ…苦しいぃ…っ」
「俺は半田好き!半田も俺好き!OK!?」
「い…イエス…?」
「うわ…………うわー……」


何やら自己解決したみたいなんですが風丸さん
俺にもわかりやすく説明して


「マジ……うわー…やばいすっごい嬉しい…」
「はぁ」
「泣きそう」
「泣いてたじゃん」
「うるさいなぁ」
「泣かないでよ」
「何で」
「俺も……悲しくなる」


風丸もこんな気持ちだったのか
うん、これは辛いな

…あとさ、これ気のせいじゃないよな
さっきからちょっと気になってたんだけど

「……風丸さん?」
「んー」
「あの……俺のケツに…なんか…当たって…」
「あー………ごめん」
「いや生理現象だしな」
「…………半田のこと抱いてたら柔らかさとか匂いとかヤバくてな」
「はぁ!?」
「勃っちゃった」
「〜〜〜〜っ」
「ごめん…俺最低だな…ごめん…ごめ………っ」

泣くなよ
笑えよ そんな中途半端な顔すんなよ
それは俺の仕事だろ
お前は笑ってくれよ


「風丸」
「え…」

ちゅ

「は……!」
「嬉しいよ」
「な…何が…」
「俺のこと思ってくれて俺のことでそんなんなってくれて、中途半端な俺でも幸せにしてくれてマジでありがとう」
「半田…」
「ん…よくわかんねぇけどゆっくりで良いんじゃない?俺達まだ若いんだし」
「……なんか精神的な年齢差を感じるよ」
「そうか?」
「悔しい」
「ははっ風丸から悔しいなんて言われるなんてな」


俺が悩んでたいろいろ、どっか行っちまった


「まぁ……なんだ?これからもよろしく」
「あ…あぁ…」
「何か…はずいな」
「おう…」



これが僕らの、

「で……これの処理は……?」
「…………トイレはあっちだぜ…」
「…………行ってきます」