今日はなぜだか知らないけど酷く喉が痛い。
朝起きてから誰かと話そうとするまで気付かなかったけど声がまともに出ない。
季節外れの風邪だろうか、しかしこういった季節外れのものだと対処が遅れてしまうと言う事実。
流石に起きてから発覚したものをすぐに治す方法なんてなくて(治癒魔法は苦手だし)。
しょうがないからそのまま授業に出たはいいもののこんな日に限ってやたらとマイヤーズ教官に当てられるもんだからたまったもんじゃなかった。
「そういうものを治してこその魔法だ!今使わずしていつ使う!」
『……』
「声が小さい!!!」
『(小さいも何も声出ないのに…!)』
マイヤーズ教官鬼畜ってレベルじゃないですって…!
そうして私は只管怒鳴り散らされながらその時を過ごした。
嫌な時間に限って…過ぎるの遅いよね…。
教官が嫌いな訳じゃないんだけど…。
あの雷魔法の鞭だけは勘弁して欲しい。
『(ふぅ……)』
「おつかれさまアラジンからの呼び方」
『(アラジンくん…それに2人も)』
「なんだよお前、風邪か?」
スフィントスくんの声にこくりと頷いた。
正確には風邪と言うか…ただ喉が痛いだけなんだけど。
そんな私の頭に何気なくティトスくんが手を置く。
「まぁ魔法を使うのも勿体ないし、いいんじゃない?」
「喋れるに越したことはねぇだろ」
『(うん)』
「じゃあスフィントスくんが治してあげればいいじゃないか」
さも当たり前のようにアラジンくんが言った。
が、何をどう考えても当たり前じゃない。
スフィントスくんが私の喉を?
つまりはスフィントスくんがわざわざ私の為に自分の魔力を削って治癒魔法を?
いくら治癒魔法が得意だからってそれは気が引けて仕方ない。
思いっきり両手を横に振りNOの意識を露にさせる。
しかしそんなスフィントスくん。ぽんと手を打って一言。
「あぁその手があったな」
『!?』
「そうだね。早く治してあげなよ」
『(え、え、…!?)』
「いくぜお名前ー」
私の意見は完全に無視らしい。
ぱぁっとスフィントスくんの杖が光り私の体を包んだ。
イガイガと変な感覚が付き纏った喉が戻っていく。
つまりは私は彼の魔法のお世話になってしまったということで。
「治ったか?」
『………あ……』
「治ったみたいだね」
「よかったねアラジンからの呼び方」
「ふっ…俺の魔法を舐めるなよ」
「調子には乗らない方がいいと思うけど」
「うっせー!」
『ごごごごごごめんねスフィントスくんわざわざ私なんかに…!』
騒ぎ出す3人に、ふと我に返った瞬間私は思いっきり頭を下げた。
さっきの喉の不快感とは違う申し訳ない方の負の感情がぐるりと一周胸に渦巻く。
でも降って来たのはさっきのティトスくんの綺麗な手とは違う、スフィントスくんのものと思われる少し武骨な手で。
「そんなもん気にすんなよ」
「そうそう。使える者は使ってなんぼだよ」
『で、でも…!』
「それよか、ごめんよりありがとうだろ」
あ、とまた間抜けな声が出て。
私としたことが、何よりも人として大事なことを忘れていた。
『…あ、ありがとうスフィントスくん』
「それでよし」
出るようになったなら、声で伝えることが一番大事。
でも、出ないような事態になることが一番ダメだと思う。
3人にまたいじられながらも私は喉にいい飴でも買いに行こうかなと呑気に考えていた。
君の声が聴きたくて
(お前の声が聴きたいから治しただなんて)
(小生意気なことするね君も)
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わかりにくいんですがスフィントスくん、実は結構照れてます
ラストの()は上スフィントス下ティトスです
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