さて、現在私が直面している問題が1つ。

ヒント1。ここは図書館です。
ヒント2。取りたい本が本棚の上の方にあります。
ヒント3。周りに台となるような椅子はありません。
ヒント4。私の背はびっくりするほど平均値です。

もうわかると思いますが、私は現在取りたい本が取れなくて悪戦苦闘しているわけで。


『うー……どうしよ』


浮遊魔法でも使えればよかったんだけど生憎私の得意魔法ではないし実際問題暴発でもしたらそれこそ教官に何を言われるかわからない。
お世辞にも成績がいいとは言えない私がこれ以上問題を起こせば最悪退学と言うこともあり得る。

でも魔法の勉強が好きな私はこうして図書館に訪れるわけで。
そのたびに踏み台にしていた椅子は壊れそうだったからか撤去されてしまったらしい。
なんてタイミングの悪い事。
今日を逃すとしばらく図書館は休館らしく来ることができなくなってしまう。
読みたい本が目と鼻の先で届かないのはちょっとストレスが溜まりそうだ。

しかしうーん、と唸っても私の背が伸びるわけもなく。
諦めて戻ろうかなと背伸びしていた踵を地につけた時、視界の端に不意にスッと伸びてきた一つの影。


「…これか?」
『え?あ、ありがと、スフィントスくん』


視界に褐色の腕が私の探していた本を手に取った。
差し出された本とその腕の当人、スフィントスくんは私にそれを半ば押し付けると辺りを見回して一括。


「取れねーなら適当に踏み台でも作ればいいじゃねーか」
『だって…台にするものってここ本しかないし…』
「…どうにかして取ればいいだろ」
『そんなむちゃくちゃな』


そんなに背の高いスフィントスくんにはわからないだろうね。うん。
一生そんな悩みには悩まされそうにない気がする。

いいもん、私はアラジンくんと一緒に同盟でもつくるから。
あ、でもアラジンくん浮遊魔法ぐらい余裕か…。
どうあがいても私の背が低い事を嘆くという矛先は誰にも理解してもらいそうにもない。


「…その本、治癒魔法か?」
『?うん。苦手だし、ちょっと勉強しようかなって思って』

「…ふーん」


スフィントスくんが本なんて読むのかな、なんて失礼なことを考えながら。
アラジンくんからスフィントスくんの得意魔法は治癒魔法だって聞いたことがある。

きっと治癒魔法に関しては私みたいに勉強なんてしなくてもさらっとなんでもやってのけてしまう気がする。


「……教えてやらねーこともないけど」

『え?』
「だから治癒魔法。教えてやるって言ったんだけど」
『……いいの?』


まさかの申し出に折角の本を落としそうになってしまった。
それは願ってもない申し出だけど、私なんかでいいのだろうか。


「お前がいいんだよ」

『…あれ?』
「声に出てんぞ」
『え、うそっ』
「バーカ」


つん、とおでこを突かれてスフィントスくんが笑う。
とりあえず、私に治癒魔法専用の先生が付きました。





そんな建前をつけて、

(礼は弁当でいいからな!)
(…スフィントスくんもティトスくんもだけどなんでそんなにお弁当なの)
(アイツだけとか不公平だろ)

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