嫌いな相手を探すのは面倒だが仕事ならしょうがないと腹を括ったのが数刻前。
あいつなら自分の声を聞いてあっちから出てこれるだろ、と思っていたのだがなかなか出てこないというのが現在の状況である。


『ったく…ジャーファルさん待たせてんのに』


頭を掻いて手に持った書類を持って辺りを見回す。
餌で釣られてくれないかなーなんてことを考えながら面倒くさくなって腰を下ろした。


『…餌か…』


そういえばピスティにお菓子貰ってたっけ。
名前はおもむろに貰ったお菓子を取り出す。
小袋に分けられた焼き菓子のようだ。

自分もお腹減ったしなーと名前は袋を開けた。


『マスルールおいでー』


お菓子の1つを口に頬張りながらまるで犬猫を呼ぶような形でマスルールを釣ろうとしている。
なぜそれで釣れると思っていたのか。
周りでその様子を見ていた文官たちは思っていたという。


『あ、パパゴラス』


バサバサと釣られてきたのはマスルールではなくてパパゴラスだった。
アリババが好きだと言ったその鳥は今マスルールをボスとしているらしいが。

それがこう訳もなく飛んでくるとは。
まぁ餌を目当てに来たのだが。
飛んできたのを見つけて伸ばした腕にパパゴラスが止まる。

野生の鳥は観察能力に長けていると言うが、なぜマスルールなんかに懐いたのだろうか。


『……もしかしてマスルールってホントはパパゴラスなんじゃ』
「…馬鹿か」

『あ、マスルール』


探し人の背後から声が来て首だけ後ろに傾けた。
パパゴラスはそのまま名前の手からお菓子を貪っている。


「誰がパパゴラスだ誰が」
『いやお前が。つか何?マスルールも餌に釣られたの?』
「…そんな訳ない」

『つか面倒だからパパルールでいい?』
「断る」
『えーいいじゃん』


ほら、と腕を上げたら丁度パパゴラスがひと鳴き。


『おぉ、このパパゴラスわかってんじゃないの?』
「……数年前から俺のこと知ってるお前が言うか」

『まぁ……そっか』


餌を食べて満足したのかパパゴラスが名前の腕から飛んでいった。


『…そのままマスルールの頭に止まればパパルールになったのに』
「だからそれをやめろ」
『いいじゃん。それでアリババくんに食べられればいいんじゃない?』
「余計に断る」


笑いながら言っている名前もこれが素だから困る。
そして名前は自分の手に持っていた焼き菓子のラスト1個を口に放り込んでスクッと立ち上がった。


『忘れてた。マスルールこれにサイン』
「…大事なことは先に言え」

『まぁ細かいことは気にするなって』


はぁ、とマスルールはため息をついて渋々書類を受け取ったのだった。
しかし軽く人を素直に鳥と思ってしまった彼女の思考回路とはいかに。

こうやってこの後に訪れるかもしれないジャーファルのお咎めもうまく回避するのだろう。




通常運転

(ジャーファルさんジャーファルさん。マスルールってパパゴラスじゃないですかね)
(は?)
(まだ言うかお前は)


------------

天然少女を書くのが苦手な天音です←
パパゴラスと(一方的に)戯れるマスルールが好きです(´ω`*)
差し出した腕に鳥が乗るとかかっこいいですよねって思います。

パパルールは完全に私の中で発生したネタですw

_