この世に存在するルフというものはマギにしか見えない、だなんて言うがシンドリアには目に見えるルフがある。
いや、正確には見えているように感じる、だ。

その色は桃色ピンク色。
人によっては砂を吐くような甘さを感じることだろう。


『シンドバッドさん』
「名前」


何度このやりとりを聞いたことか。
思わず出るため息、ジャーファルのクーフィーヤ頭からずれる。


『あ、そうだ!昨日ヤムライハさんたちとお菓子作ってたんですよ』

「ほぉ…名前の作るものはなんでも美味しいからな。楽しみにしてるぞ」
『ふふ、お仕事終わったらのご褒美です』
「そうか、ならさっさと終わらせないとな」


名前を膝の上に乗せておいて何を言う。
喉まで出かかった言葉をジャーファルは飲み込んだ。

しかし名前の手作りお菓子は原動力になる、それを知っているジャーファルは何も言わずに自分の仕事をこなしていった。
というかこの2人は同じ部屋にジャーファルがいることを理解しているのだろうか。
まぁわかっていてもこの2人の世界に割り込める者などいないだろう。


『じゃあ早く終わるように私も手伝いますね』
「名前がいれば百人力だ!」


そろそろ頭痛がしてきた。
しかし頭を抱えたジャーファルに気付くほど2人の視界は広くなかった。
互いの存在が互いに視界を狭めてしまっているのだが本人たちがそれで満足そうなのが一番厄介だ。


「しかし…名前を離したくないな」
『私もシンドバッドさんから離れたくないです…』
「なら膝の上でやるか?」
『…はい!』


いやがおうにも名前は膝から動かないらしい。
もうどうでもいいから早く仕事を進めてくれ。

人が幸せそうにしているのが煩わしいと思えたことにジャーファルは最初驚きすら感じたが既にそう考えられる領域は量がしてしまった。
今なら砂が吐ける。そんな可能性すら感じる。
元凶ともいえる2人の周りに飛び交っている桃色の空気に疼く腹立たしさ。

幸せそう故にこの怒りの矛先が見つからない。



バキィッ


「?ジャーファル?」
『ジャーファルさん、どうかしましたか?』

「…いえ……なんでもないです」



力んだ拳で折れたペン。
その音にやっとジャーファルに反応した2人だったが、ここまで来たらもう勝手にやっていて欲しい。


「すいません、しばらく席を外しますね」

『はい』
「無理はするなよジャーファル」


「……誰のせいだと……」


『何か言いました?』
「いえ」


誰のせいだと思ってるんですか。

小声で言った言葉は結局届かないまま。
ため息をつきながら部屋を出て行ったジャーファルは自分がいなくなったことによりヒートアップしているであろう部屋の光景を想像して砂を吐きそうになる。

しかし次にジャーファルが戻って来た時、部屋に充満していた名前手作りお菓子の甘い香りに思わず立ちくらみを起こすのだった。




砂を吐くほどに甘く

(あ、ジャーファルさん!大丈夫ですか?)
(安心しろ!仕事なら終わらせといたぞ!)

(………甘っ)




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シン様の膝に乗りたい(切実)

いちゃいちゃする書くのが苦手な天音です(-ω-`)
なんですかね、リアルでそういう経験がないから恥ずかしいんですよね…!
頭の中でならいくらでもイチャイチャできるんですが←
さぁこの2人がこんな風になる日は来るのか。
……おそらくここまでにはならない気がしますがw

リクエストありがとうございました!

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