自分に与えられた力を何に使うか、という問いに人はどう答えることがあるだろうか。 家族? 友人? それとも大切な国の為? 千差万別、答えは人それぞれだろう。 「おーい名前!お前さっきまでどこ行ってたんだよ」 『え?普通に部屋にいましたけど……』 「は?紅覇にどっか行ってたって聞いたけど」 名前の隣に立っている紅覇をうさん臭そうな表情で指さしたのはジュダルだった。 「ごっめ〜んジュダルくん。あれ嘘」 「はぁ!?」 「だって言ったらジュダルくんも名前のとこ来るじゃ〜ん」 『別にいいじゃないですか?』 「ヤダよ〜だって一人で名前の髪弄り回したいし」 「オイオイざけんなよ…」 特に悪びれた様子もない紅覇にジュダルが突っかかる。 名前はここで争いに火がつくのは嫌なので止めにかかろうとするがジュダルの苛立ちは収まらないようだ。 「名前を弄るのは俺の役目だろ」 『いやいやいやそれも違いますよね』 「え〜?僕も弄りたいし?名前の三つ編みは日課だし?」 名前の長い前横髪を三つ編みにしているのは大概紅覇である。 しかし、稀にジュダルが気まぐれに紅覇よりも先にそれを三つ編みに来る。 毎朝名前が起きてからはその長い髪を弄ろうと2人の軽い騒動が勃発するのだった。 「名前〜ジュダルちゃん知らな…あ」 「おーババア!何してんだ」 『ジュダルさんババアは本当に失礼ですよ。女の子にババアは』 「全くホントよ!それに2人共なに名前の髪に軽々しく触っていらして!?」 ジュダルを探して名前の部屋を訪れたのであろう紅玉がつかつかと名前の部屋に足を踏み入れる。 『別に慣れたから気にしてないよ?』 「ほら名前もこう言ってるし〜」 「そういう問題じゃないわ!髪は女の命なのよ」 「ババア髪バッシバシじゃねぇの」 『どこがですかジュダルさん紅玉ちゃんの髪サラッサラですから』 「名前…!」 紅玉が名前に飛びつくように抱きつくと"わかってくれるのは名前だけよ"と半泣きになっていた。 どれだけジュダルに毎日色々言われていることか。 紅玉ちゃんこんなに可愛いのに、と名前はなぜジュダルがああまで紅玉にものを言うのか理解できないでいる。 ここまでの一連の流れを紅覇はじっと見つめていたが面白そうににやっと笑うと一思いに名前の髪を引っ張った。 『いたっ!?いたたたたちょ、紅覇さんってば!?』 「いやぁ〜髪が女の命なら、名前の髪を切ったらどうなるのかなって」 『切られても一応死にませんよ!?』 流石に長く伸ばした髪をばっさり切られたらショックではあるが"髪は女の命"というもの自体比喩であって勿論本当ではない。 いきなり髪を引っ張り出した紅覇に目を見開いた2人。 しかしジュダルはなぜかふてくされたような、何とも言えない表情をしている。 「オイ紅覇ずりーぞ」 「ジュダルちゃん何言ってるの」 『お二方私の髪をなんだと思ってるんですか』 「え?遊び道具?」 軽く言ってのけた紅覇にため息が出る。 しかし恐らくジュダルが答えても似た様なものになったことだろう。 このままでは本当に髪が大変なことになるかもしれない。いや、なる。 紅玉も思わず寒気を感じ名前も危機を感じた。 「あーもーめんどくせぇ!」 『へっ!?』 ジュダルが素足で名前に近寄り、豪快に名前を担ぎ上げた。 思わず紅覇もその手を離し紅玉も目を見開く。 名前担いだジュダルが部屋の窓辺にターバンを広げその上に名前を乗せる。 「名前は俺の玩具だ!」 『誰が玩具ですか!』 「そうよジュダルちゃん!名前に失礼よ!」 「ちょっと〜ジュダルくんちょっとズルいんじゃない?」 紅覇と紅玉がゆらりと今にも武器を構えそうな覇気を発しながらターバンに乗ったジュダルと名前ににじり寄る。 今にも飛び立ちそうなターバン。 しかし飛び立つよりも先に音を立てて開いた名前の部屋のドアに全員の視線が集まった。 バーン 「お前ら騒がしいぞ」 「あ」 「げっ」 「え」 『……紅炎さん助けてくださいぃぃぃぃ』 救世主とも言えよう紅炎の登場にその場は収まったがこの日を境に名前の髪という名の命が狙われることが頻繁に起こったという。 髪は女の命 (紅炎さん怖いです助けてください) (頑張れ) (それだけですか) ---------- 煌帝国シリーズでシリアスじゃない話を書こうとしてこうなりました。 どうしてこうなった← 紅玉ちゃんと紅覇くんの絡み方がわからなくてぎゃーってなりました(´・ω・`) でも本誌でも絡んでほしいな…! そしてこの3人の髪の毛いじりたいです(´ω`*) リクエストありがとうございました! _ |