例え将来歩む道が決まっていたとしても、今の道をどう歩むかは自分の勝手。
ただ、並んで隣を歩くか背中を合わせているか、それだけの違いだと名前は思っていた。


『…青舜はさ、私が許嫁でよかったと思うことある?』
「え?」


白龍と楽しげに会話をしている白瑛の背中を少し遠くに見ながら、名前は青舜の顔も見ずにそう問うた。
青舜は思わず間の抜けた声を上げて名前を見やる。
しかしその表情は至って普通。
特に動揺するわけでもないその様子は、逆に青舜を混乱させた。


「どうしたんですか突然」

『…特に大した意味はないんだけどさ。うん…ちょっと気になっただけ』
「許嫁…確かにあまり深く考えたことはなかったですね」
『やっぱり?』


2人はそんなことを考える以上に傍にいたのだ。
許嫁、と言われてもそうかと納得し今もまだ白瑛の傍に付いている。
傍にいるのが当たり前、そんな存在。

夫婦で仲良く手を繋いで並んで歩いていく、なんて表現が自分たちには全然似合わない。
むしろ今は剣を取って互いに背中を預け合うような関係でありたいと思う気持ちの方が強い
それはまだ自分の心と体が未熟だからだろうか。
答えは自分の中で決めるものなのだが名前にはまだそれがわからないでいた。


『私は青舜でよかったと思ってるけど、お家柄このと色々面倒だしさ』
「…父上達は少し頭が固いですからね」
『固すぎでしょ…。なんで許嫁なんかにしたんだか』

「いいじゃないですか?これでこれからが穏便になるのなら」


笑う青舜に、なんでそんな余裕そうな顔してるのと名前は口を尖らせる。


「まだ許嫁だなんて肩書きを理解する必要はないってことです」
『……確かに…今は白瑛様のことしかあんまり考えてないしね』
「そうですね」


今はただ、大切な弟気味と楽しそうに会話をしている主の笑顔を守るために。
信念を貫く白瑛のお背中を共に守る為のパートナー。

いつかその関係が崩れるのだとしたら。


「それに、名前を許嫁だと思ってよかったと思うのは貴方と式を挙げた時だと思っていますから」

『…恥ずかしいセリフ』
「なんとでも言ってください」


聞いているこちらが照れるようなセリフに思わず顔に熱が集まる。
しかし青舜は悪びれた様子もなく、今度は青舜が白瑛の背中を見つめ名前が青舜を見やる形となっていた。


『ま…そんなところが好きなんだけど』


―私は名前。
将来は"李"の名を冠す、煌帝国の一家臣です。





アイロニーな奴等

(あら青舜、顔が赤いですよ?)
(大丈夫です白瑛様。いつものことです)
(名前っ!)
(ふふ…仲がいいですね)



----------

個人的に青舜は歯の浮くようなセリフをさらっと言えちゃう子だと思います
そして言われるのは苦手なタイプ
逆に名前は言えなくて言われ慣れてる、みたいな凸凹コンビ
そんな様子だと白瑛さんはどちらを見ても面白いと思いますね(´ω`*)

リクエストありがとうございました!

_