誰かに会うための長い道のりは苦とは思わない。 名前は爛々と鼻歌を歌いながら白瑛の隣を歩いていた。 「あら名前、今日もご機嫌ですね」 『はい!』 今日も、と言った彼女の言葉は間違ってはいない。 毎日名前はこうして白瑛とあの部屋を目指す。 白瑛の隣にいない、名前と同じ従者である彼を迎えに行くために。 「姫様!名前!」 「ふふ、おはようございます青舜」 「おはようございま…っ!?」 『青舜!』 前方に見えた彼の影に、名前は走り出して青舜の挨拶を遮って飛びついた。 倒れそうになるのをなんとか踏ん張ってその場に留まる。 慣れたと言わんばかりに微笑む白瑛。 そんな主の姿に思わず青舜は顔を赤らめた。 しかし関係ないとばかりに名前は青舜を離そうとはしない。 「ちょ、名前…!」 『おはよ、青舜!大好き!』 朝からこのテンションで、耐えられるであろうか。 誰に何と言われようがこれが彼女の日常。 因縁のある家柄同士といえど、2人には関係ない。 そう言わんばかりに2人は想い合っているのだから。 「名前は青舜が好きなのですね」 『はい白瑛様!』 「…まったく、またお父上に怒られても知りませんよ?」 『いいの!父上は関係ないんだから。そっちこそ大丈夫なの?』 「私はいいんです」 『なにそれ』 顔を見合わせて笑う様子に、白瑛も笑みを零す。 『えいっ』 「!」 殆ど同じ身長の青舜に不意打ちと言わんばかり頬へ口付ける。 あら、と声を上げた白瑛。 目を見開いた青舜はバッと口づけられた熱の残る頬を手で覆い真っ赤な顔で名前を見やった。 当の本人名前はイタズラが成功したと言わんばかりに笑っている。 名前の性格を理解していても、こういった不意に行われる行為には慣れないものだ。 しかし笑っている名前がまた愛おしいのだから仕方がない。 「…懲りませんね」 『そりゃあもう』 「じゃあお返しです」 また小さなリップ音を立てて口付けた青舜に、今度は名前が目を見開く。 もはやここに白瑛がいることを理解しているのだろうか。 いや、それを白瑛が見ていて受け入れるとわかっていてこうしているのであろう。 一種の主への安心感とでも言おうか。 しかし常識からしたらなかなかいただけないものである。 「珍しいですね。青舜がお返しだなんて」 「たまには私だって仕返しの1つしますよ」 『…なんか悔しいなぁ』 「何がですか」 『私の方が青舜のこと好きな自信あるもん』 キスされた頬を膨らませて青舜の頬をつつく名前。 そんなことで拗ねた表情を見せる名前はまだ子どもといった所か。 青舜はまたクスッと笑って、自分の頬をつつく名前の手を取った。 「残念。私だって名前が好きですから」 甘いこのひと時を楽しみながら。 ふにゃりとはにかむ名前に、青舜に、また1つ恋心は募っていく。 甘い愛はいかがですか? (思えば思うほど) (それは甘くなっていく) ----------------- デレデレは書いててくすぐったい気持ちになります…! 咲き花の話は書く際に絶対に白瑛さんを出してしまう← というか白瑛さん的にも従者2人が可愛くて仕方ないと思っていればいいと思っています^^ 久坂さんには今年大変お世話になったのにこのような形でしかお返しができなくてすいません…orz いつかこの煌帝国組でコラボもしてみたいです(^ω^*) リクエストありがとうございました! _ |