子供は喜怒哀楽の感情に従順である。 どんなに気丈に振舞おうともその感情は隠しきれることはないだろう。 常識のある博識な子供、名前もそうだった。 人に迷惑をかけたがらず色々な感情を押さえ込む傾向のある名前はムクリと布団から起き上がる。 左右を見渡しても誰もいない。 そうだ、自分はお昼寝をしていたんだった。 『ゆめ…』 思い出せはしないけど、何か恐ろしい夢を見たことを覚えている。 いつもはシンドバッドやジャーファル、ヤムライハやシャルルカンが一緒に寝てくれるが、不意に襲った眠気は彼らの業務時間中。 一緒に寝る者がいない、誰もいないのが嫌で慌てて部屋のドアを開けた。 『わぷっ』 「名前?今起こしに行こうと思ったんですが…」 『じゃーふぁるさん、じゃーふぁるさん…!』 「…どうしたんですか?」 ひっく、としゃくりを上げて名前はぶつかったジャーファルの足元に抱きついた。 名前はどうやら泣いているようだ。 こうなったら話も聞けないか、とジャーファルはとりあえず名前を抱き上げる。 「…シン達のところに行きますか?」 『……ん…』 首をこくりと縦に降って名前はジャーファルの服にしがみついた。 それを確認してジャーファルは歩き出す。 これでシンドバッドを釣る餌もできるってものだ。 しかし、それよりも気になるのは自分の胸で泣き出してしまった名前。 小さな背中を摩りながらジャーファルは執務室へと急いだ。 「ただいま戻りました」 「おー、おかえ……名前!?」 机の上の書類なんてどうでもいいと言わんばかりに、シンドバッドは椅子から立ち上がり名前を抱えるジャーファルのもとに駆けていった。 「どうした!?ジャーファルにいじめられたか!?」 「なんでそうなるんです」 『しんどばっどさ……』 「お?」 ジャーファルの腕の中から名前が両腕をシンドバッドに伸ばす。 珍しい、とジャーファルと顔を合わせながら、シンドバッドは名前をジャーファルの腕から抱き上げた。 ぎゅ、と名前は短い腕を届かない首に回す。 「…どうした?」 首に埋まった小さな頭を撫でてシンドバッドはなるべく優しい声色で問うた。 『…ゆめ…』 「「夢?」」 『…こわいゆめ、みたんです…』 転んで怪我をしても泣かないような名前が久々に見せた涙。 他人のことで涙を流し、自分の事だと今まで泣いたことなどなかった名前が。 相当怖かったのだろう。 なかなかシンドバッドの服を離そうとはせずに体も少し震えている。 どうしたものか、と腕の中で泣きじゃくる愛おしい存在に笑みすら溢れてしまった。 名前に頼られるのが嬉しいのかもしれない。 しかし名前には笑っていて欲しいという願望の方が強い。 ジャーファルもその術を見つけあぐねているようだ。 バンッ 「失礼しまー!……王サマなにやってんですか!」 「え、ちょっとどきなさいよ馬鹿!名前ちゃん泣いてるじゃない!どうしたの?ジャーファルさんに怒鳴られたの?」 「おぉ、シャルルカン」 『やむらいは…さん』 「…シンもですがなんで私を悪役にしたがるんです」 「いや、一番お説教とかで子供泣かせそうだろ」 「失敬な」 「ほら名前ちゃんおいで〜」 「抜けがけすんな馬鹿!」 「うっさいわね!」 泣いている名前に色々な手が伸びた。 ヤムライハもシャルルカンも喧嘩はするがどちらも名前が心配なのが伝わってくる。 そんな様子に名前の涙もぴたりと止む。 シンドバッドは止まった涙の跡を指でなぞって微笑んだ。 「うん。名前には笑顔が似合うぞ」 頬にも掠るその大きな手に気恥かしさがあったのか。 直後顔を真っ赤にした名前は必死にヤムライハに手を伸ばしたのだった。 体は小さく、心は人一倍乙女 (おや) (あらあら、王ってば嫌われちゃいましたね) (名前ちゃん俺の方もおいでって〜) (…ヤムライハ、シャルルカンには渡すな) -------------- 幼女楽しいです幼女<●><●>← 皆に抱っこされたい願望全開で書かせていただきました 頭なでなで背中さすさすされたいです← あのたくましい腕に包まれたい(´ω`) しかしこれ幼女じゃなくてもできたのではと思ってしまった自分。文才ください^ω^ 幼女化は美味しいネタだと信じて疑わないのでまたこんな設定の文を書くと思います リクエストありがとうございました! _ |