自分が一番集中できる時とはなんだろうか。
仕事をしているとき、誰かと稽古をしているとき、勉学に励むとき。
色々あるものの、名前が一番集中できると思っているのは勿論槍を振るっている時だった。

周りの声は聞こえなくなるレベルでは槍を振るっている。
いつからここにいたのかもわからない。
久々に仕事を抜け出して愛槍を構えてしまったのが始まり。
いつの間にやらかなりの時間が経過していたことに気付かなかったのは集中していたためだろう。


「名前!」
『!……あ』


ジャーファルの声にハッと我に帰った時には既に日は随分と西へと傾いていた。
思わず漏れた声にジャーファルはため息を付き名前は槍を振るっていた手を止める。


「どうせまた時間なんて忘れてたんでしょう」
『あははー…まぁ後で残ってやるから許してよ』

「それをできるのを知ってるからここまでほ放っておいたんですよ。でなきゃもっと早くに収集付けてます」
『うんうん。兄様はそんな風に私をコントロールしてくれるって思ってるからね』


関節を分解して槍を手持ちサイズに片付ける。
大体名前を止めに来るジャーファルは名前の仕事スピードを考えてタイミングを図っていた。

そういう意味では釣り合いの取れているとは言える。
しかしそう言った均衡をなかなかそのままにさせてくれないのが名前のペースである。


『ねぇ兄様』
「なんです?」

『…ちょっとやらない?』


そう言って片付けた槍をチラつかせる。
やる、という意味が指し示すことは手合わせしかないであろう。
時間がないから止めに来たのにこれ以上引き伸ばすつもりか、とジャーファルは首を横に振った。
しかし引き下がれるほど名前も素直ではない。
口を尖らせ拗ねたように頬を膨らませる。


『もー、兄様ってば最近仕事ばっかで付き合ってくれないじゃん』

「しょうがないでしょう仕事が溜まってるんですから」
『私が手伝えばいいんでしょ』

「酒禁止ですよ」
『それでもいいから』
「…そこまで言うなら」


特別ですよ、とジャーファルは抱えていた丸まった資料の束を地面に置いた。


『そうこなくっちゃ

―面白くないよね。』


交錯する名前とジャーファルの瞳に一瞬の殺気が灯る。
互いの面影を彷彿とさせる雰囲気。

瞬間には常人では追いつけないレベルでの命のやり取りが始まった。
とは言っても本気で命を取りに行く訳ではなく、あくまでも手合わせの息を出ない。
ただそれが常人からしたらおかしなレベルなだけ。


『兄様!』
「なんですか、舌を噛みますよ!」

『っおっと!』


遠距離から飛んできたを受け流し隙を見てジャーファルとの距離を詰めた。


『いいなぁと思って』
「何がです」

『兄妹でこういうことするの!』


そうして槍を振るう名前の攻撃を避け、ジャーファルは口元を緩める。
ニヤリと笑った名前が瞳に映り再び己の刃を向ける。

こうしてまた時間は過ぎていき、後に嘆くことになるのだが。

仕事以上にこういった事に集中してしまうのはまた血の繋がっている所以なのかもしれない。




交わるは刃と流れる血

(お、やってるな)
(…シンさん仕事どうしたんすか)
(逃げた!ジャーファルもいなかったしな)
(ここで見てたら捕まりますよ)
(……!)


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仕事人間と真面目系サボり魔←
この2人の根本にある真面目さは一緒なんだと思います(´ω`)
なので兄妹っていうのも悪くないですかね!
容姿的にも銀髪(白髪?)は一致ですしね。
またネタを考えてみたいものです。

この度はリクエストありがとうございました!
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