自分の中に宿ったもう一つの命。
これを愛の結晶、生命の神秘と言わずしてなんだと言うのだろうか。

重くなったお腹には愛おしさすら感じる。
シエルはソファーに座りながら大きくなったお腹を撫でた。
ピクリと動いた気がしなくもない。
そんな愛おしさに思わず微笑むと自分の座っているソファーにもう一人、お腹の中の子にはなくてはならない存在が腰掛けた。


「だいぶ大きくなったな」

『はい』


あと一月だったか、とシンドバッドはシエルの手に自分の手を添える。


「元気な子が産まれて欲しいものだな」

『大丈夫ですよ、シンドバッドさんの血を引いてるんですから』
「ほぉ…?それはどう言うことだ?」
『やんちゃで元気な子が産まれるだろうって事です』


シエルが言った瞬間お腹の中で小さな足が外界とを隔てるシエルのお腹を蹴った。
それはシエルの手に手を重ねていたシンドバッドにも伝わり、ほら、と笑うシエルに参ったなとシンドバッド。


『きっと男の子でしょうね』
「それはどうだろうな。シエルに似た女の子かもしれんぞ」
『さぁ、どうでしょうか』


あと1ヶ月。
いろいろな思いを馳せながらこのひと月を過ごす事となるだろう。

それはここまで共に歩んできた者たちとの軌跡であり、今ここに生きる奇跡でもある。
この世界に生きる全ての人にこの喜びを伝えたくもなった。
それ程までにシエルは今満たされた気持ちでここに生きている。


「そうだ!この子の名前を考えてたんだ」
『あ、私もいくつか考えてました!』


机の上に紙を持ってきたシンドバッドと肩を並べて新たな命に付ける名を考える。
思えば名前がある幸せを教えてくれたのもシンドバッドだった。

生を受けたその日から子供には生きる権利があるのだから。


「こんな名前はどうだ?」
『それだと画数とか…こっちなんかは?』
「うーん…音の響きがイマイチだな」


あれでもないこれでもないと2人で紙いっぱいに名前を書いていく。
考える工程というのもまた楽しいものがあって頭を悩ませているものの、それを特に苦と感じることはなかった。

2人で一本のペンを使っていたわけだが、時にその手が触れてふっと笑い合う。
小さな幸福感が満ちていくのがわかる。
この幸福がちゃんとお腹の子にも伝わっていればいいのに、とシエルは切に思ったのだった。



『シンドバッドさん』
「なんだ?」

『大好きです』


自分のことも忙しいだろうにここまで真剣に自分と向かい合ってくれるシンドバッドに感謝の意を込めて。
そんな一言では表しきれないようなこの気持ちが届けばいいなと、シエルはシンドバッドの頬に口付けた。






いい夫婦の日

(シン、シエル、夕飯で……って)
((……zzz))

(まったく…仲睦ましいことで)

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