きっとあの後、アリババさんたちは上手く母さんたちを躱してくれるだろう。
アリババさんも昔は結構やんちゃをする人だったらしく俺に似たような所を感じて結構色々と気にかけてくれる部分がある。
そう思うと昔の3人ってどんなんだったんだろうって考えたりする。
(いや、アラジンはそのままらしいけど)

でもまぁ俺が知ってる人はみんなその人だし気にしなくてもいいか、とも思った。
結局人づてに聞いたことって俺の頭の中で想像するしかなくなるしな。

と、そんな考え事をしていたら不意に足が地面から浮いた。


『げ、ドラコーン!』
「こら、人の顔を見て上げる声ではないぞハル」
『ちょ、それは分かったから降ろせって首!首締まる!』


自重で徐々に締まっていく首に軽く危機感を感じる。
しかし俺の首根っこを掴んだ堅物であるドラコーンはそれを離す気配はない。
(くっそ、変な声でも出してやろうか)


「人にものを頼む態度を教育せねばならんか?」
『それより前にこれ命かかってんだろ!』

「父親に似てお前はなかなか死なないだろう」

『……えー……』


何だその理屈。
ていうか人に態度云々言うくせにこいつもなかなか滅茶苦茶なことを言う。


『降ろしてくださいお願いします』
「ふむ」


そろそろ命の危機だ。必死に首元の布を掴みながら言えばドラコーンの声と共に俺の足がやっと地面と再会を果たした。
不足しかけた酸素を大きく息を吸って二酸化炭素を吐き出す。
ドラコーンは時に俺にこんな無理難題を押し付けてくるなかなか鬼畜な男だ。しかし奥さんは美人だ。
真面目な男だからそんな素敵な人と出会ったのであろうと分かっているが俺に課される無理難題は軽く殺意すら感じる時があるのはなぜだろう。

父上曰くドラコーンなりに俺を立派な王にするためだって言ってたけど、それにしても鬼畜だと思うのは俺がまだそんな器でないからだろうか。


「相変わらず無茶を言うなドラコーン!」

「ヒナホホか」
『ヒナホホー!お前見てたなら助けろよー…ったく』


痛い首をさらに痛め、首を上に傾けなければ見えない巨漢。
豪快な笑顔を持ってしてやって来たヒナホホに俺は分かりやすくため息をついてやった。


「まぁお前を強くするためなら俺は黙っていようと思ってな」
『無茶だって今ヒナホホ言ったじゃん…』

「シンドバッドとシエルの子だ。確かにあの程度じゃ死にはしないだろう!」
「だそうだぞハル」

『お前ら俺をなんだと思ってんだよ…』


若干項垂れると笑い声と一緒に今度はその身に合った大きな掌が頭に降ってきた。
別に嫌いなわけではないが、ただ痛い。
他の奴らならまだしもヒナホホの手は物理的に痛いから嫌いだ。


『そこまでガキじゃねぇ!』
「はっはっは!俺たちからしたら十分ガキだ!」
「違いない」

『ったく!俺もう行くからな!!』


ばっとその手を振り払って俺はまた走り出す。
―俺がガキじゃない一人前と認めてもらえるのはいつになるのか。

色々思うことはあっても、とりあえず考えることは次はどこに行こうかと言う俺の気紛れな疑問だった。





息子から見た世界情景4

(あいつもシンドバッドに似てきたモンだな)
(…シエルにもな)

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