走り出した中庭の芝生。
いつも走り抜ける中庭なのに逃げるという背徳感があると楽しくも恐ろしくもある。


「あら皇子、また逃走中ですか?」
『お、ヤムライハ!なんだまた変な実験してんのか?』
「失敬な!ジャーファルさんとシエルちゃんに言いつけちゃいますよ」
『それは勘弁』

「なら早く逃げたほうがいいんじゃないですか?私が黙ってても限界がりますし」
『さーんきゅ!』


黒い帽子に露出した胸。
ヤムライハという人物を表したわかりやすい特徴を見つけた俺は一度足を止めたがすぐにまた走り出した。
母上と仲のいいらしいヤムライハはなんだかんだで俺に甘い。
いつも変な実験をしていると俺が茶化すのだがそれが凄いということもわかっている。
(だから時間とか暇だったら一緒に手伝ってるとこだけど今はそうはいかない)

でもやっぱり、あの露出はよろしくないと俺は思うな。


「おー皇子サマ、今日もシエルちゃんと愛の逃走劇?」
『そこにジャーファルを入れてみろシャルルカン。一気に超怖ェから』
「…鳥肌立った」
『だろ?』

「じゃあ今日は時間ないんだな?」
『ワリ!剣はまた今度頼む!』


この王宮の中で俺に敬語を使わない数少ない人物の一人、俺の剣の師匠であるシャルルカン。
見かけもチャラかったこいつに俺は最初全然いい印象を持たなかったけど今ではいい師弟関係なんじゃねーかなぁと思う。
剣技は父上にも教わってるけど俺にはシャルルカンの方が向いてるだろ、と任せてくれた結果この対等で不思議な師弟関係を築いている。
しかししょっちゅうヤムライハと喧嘩をするのはいただけない。

俺を板挟みにして喧嘩をするのは毎回勘弁してくれ。


「今日も楽しそうに走るねー!手伝おうか?」
『今日はなんとかなる気がすっからまた今度!』
「えー、貸し作ってもいいんだよ?」

『ピスティに貸し作っと後が怖ぇんだよ。特に母上』

「あちゃー…そりゃしょうがないね」
『誰のせいだ誰の』


走る俺に併走するように大きな鳥にまたがるピスティ。
俺なんかよりめちゃくちゃちんちくりんな容姿だが男を何人も股にかけるというとんでもない女だ。
(まぁ口出しする気は全然ねぇけど)

俺をなにかと出汁に使っては後に恐ろしい無理難題をふっかけてくる。
それだけなら問題ないが問題なのはあの母上とジャーファルの凶悪コンビ。
ピスティと共に床に正座した数はだいぶ数えきれない気がする。


「そういえば今日はアリババくん達遊びに来てたよー!」

『マジで!?行ってくるわ!』
「気をつけてねー」


そんな声を背後に受けて。
俺はまたちょっと方向転換して違う道を走り出した。

さぁ目指すは緑射塔!




息子から見た世界情景2

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