※猫夢主
50000HIT企画フリリク 「猫の穏やかな一日」続編
ひょい、と持ち上がる私の体。 チリンと鳴るのは私を持ち上げる彼等にもらった、首に付いた鈴。 少しは成長したと思われた私の体もさすがに人からしたら微々たるものなのだろう。
「こら、コートに入ったら駄目だろ」 『にゃ…』
最近、あのアッシュグレーの人達が毎日の様に訪れる場所に立ち入りするようになった私はベンチ、と呼ばれる場所に運ばれる。 別にその手を避ければいい話なんだけど迷惑はかけたくない。 大人しくベンチに丸まってあちらこちらを走り回る色んな人達を目で追いかけた。
「コイツもだいぶ大きくなったな」 「だよね!最初見た時はこーんなちっちゃかったのに」 「輝、それちっちゃ過ぎでしょ!」
『み"っ…』
目つきの悪い緑色の髪の人が乱暴に私の頭を撫でた。 と言うより手を押し付けたに近い。 コルネ頭の人は優しく撫でてくれるようになったのに!
「ダメだよそんなぐちゃぐちゃにしたら!」 『にゃっ』
「…影山くん、猫の扱い上手くないですか?」 「ちゅーか狩屋が下手過ぎなだけじゃね?」
影山、って人は確かに随分慣れた手つきで私を抱き上げた。 ゴーグル付けた人が言うようになんだか慣れてるみたい。 わいわいと人が増えてきてちょっと抜け出したいなぁと思っていたらまた違う腕が私に伸びてくる。
その感じには覚えがあって。 にゃ、と漏れた声に反応したのは周りの人全員だった。
「お前達…あまり構ってないでちゃんと練習に参加しろ」 「げ、霧野先輩」 「"げ"とはなんだ狩屋」
「だってよーこいつが構って欲しげなんだって」
笑いながらわしわしと頭を撫でるゴーグルの人。 さっきの人より乱暴ではないしなんか気持ちいいからいいや。 ピンクの髪の人の隣にはアッシュグレーの人がいた。
でも今はそれ以上に足元に転がってる白黒のボールが気になってしょうがない。
『…にゃ!』 「あ!こら!」
思わず腕から抜け出してボールを前足で転がしてみた。 私の手によって転がるボール。 本能的にそれを追ってしまい、声なんて聞こえなくなってくる。
私を捕まえようと追いかけてくるのになんて気付かずに。
「お?なんだ猫かー?」 「「「監督!」」」
『?』
ボールが私の視界から持ち上げられて、同時に私も持ち上げられた。 あれ、と思う間もなく一際大きな掌で持ち上げられてビックリしたけどそれ以上に心地よさすら感じる。
「すいません監督。ベンチで大人しくさせます…」 「お?別にいいんじゃないか?」 「へ?」
「こいつもサッカーしたいってさ。な!」
『にゃー!』 「よーしいい返事だ!」
なんだかよくわからないけどこれからもここにいていいのかな。 眩しい笑顔に囲まれながら、私はとりあえず目の前にある白黒のボールに手を伸ばしてみた。
猫の新たな一日
(ほーらこいつもサッカーが好きみたいだぞ!) (…別にボールならなんでもいいんじゃ…) (まぁいいんじゃないか?)
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