久々に部屋を片付けたくなる、皆さんにはそんな時がないだろうか。
それは本当に気が向いたからだったり、現実逃避がてらいつもやらない片付けをしてみたり、人それぞれだろう。

今日の名前(マギ主の場合も)はそんな気分だった。
現実逃避ではなく、ただ気が向いたから。
あまり物も置いてないしすぐに終わるだろう、と部屋のものをひっくり返したのが始まり。

やるならばとことんやりたい名前(マギ主の場合も)は侍女に用具を借り、ドア・窓を全開にして部屋の片付けを開始した。


『やるぞーっ』

「およ?名前(マギ主の場合も)ってば何やるのー?」
『部屋の掃除です!』


ピスティは露骨にゲッ、という顔をする。
瞬間、名前(マギ主の場合も)はピスティの部屋の惨劇を想像した。あれの掃除はなかなか難しいだろう。


「見習いなさいよねピスティ」
「私のあれは私が使いやすいようにしたらああなっただけだし」

「よし、私達も手伝うわ名前(マギ主の場合も)」
「ちょ、ヤムってば無視!?」


いいんですか?と聞けばヤムライハは笑いながらピスティへの薬の一種だと言う。
どうせなら他人の部屋の片付けより自室を片付けるべきだと思うが、この際突っ込まないでおこう。


「名前(マギ主の場合も)これは?」
『あー…それはもう捨てちゃいます』
「勿体なっ!じゃあ私貰っていい?」
「ピスティはそういうことしてるから物が増えるんでしょうに…」

「…えへっ!………お?」


衣類の片付けをしていたピスティが見つけたもの。


『どうしました?…あ』
「あら、懐かしいわね」


ピスティが両手に広げた衣服は名前(マギ主の場合も)がこちらに来た時に着ていた制服だった。
今やこんな所にあったのか、と思うレベルでヤムライハみたく懐かしさすら感じる。
この服が名前(マギ主の場合も)の世界のものだと知らなかったピスティは興味深そうに制服を眺めている。


「へぇー…これがねぇ」
「もうここに来て結構経つものね。…置いとく?」
『……どうしましょうか』

「じゃあ一回着てみてよ!」
『え』









その後からはあっという間。
ピスティのせがみを避けることはできず、久々に身に纏った制服は若干サイズが小さくなった気がした。


「何度見ても不思議ね」
「同じ服でもここまで違うと…って感じ」

『…そんなまじまじ見なくても…』





「名前(マギ主の場合も)、こちらにシンが……おや、懐かしいものを」
『あ、ジャーファルさん!』


ドアが全開だと必然というか、訪れる者が多くなるわけで。
顔を出したジャーファルの目に映った光景は酷く懐かしさを感じさせた。
やって来た感じからしてまたシンドバッドが逃げたのだろう。


「おーい名前(マギ主の場合も)匿って………って」


「「「『あ』」」」


噂をすれば何とやら。

次の瞬間にはジャーファルに捕えられていたシンドバッド。
ちょっと名前(マギ主の場合も)に目を奪われた隙にこれだ。
ヤムライハもため息、ピスティは笑っている。

名前(マギ主の場合も)は成り行きで捕獲現場になってしまった自分の部屋になんとも言えぬ表情でシンドバッドを見守ったわけだが。


「ところで、名前(マギ主の場合も)はなんでそれを着ているんだ?」
『片付けてたら見つけたんで』
「私が気になったから着てみてもらった」

「……ほう」
「何が"ほう"ですか」


制服姿の名前(マギ主の場合も)を見て声を漏らしたシンドバッドにジャーファルの冷たい視線が突き刺さる。
しかし彼はそんなこと全くもって気にしていない様子だった。

シンドバッドは無言で立ち上がり、何をするのかと見守っていると唐突に名前(マギ主の場合も)のベッドのシーツを剥ぎ取りにかかっている。
全員の頭に疑問符が浮かんだ瞬間覆いかぶさるような形で名前(マギ主の場合も)の腰にシーツを巻きつけだした。


『…シンドバッドさん?』
「………」

「…あー」
「なるほど」
『え?え?』


そのまま流れるように腕に名前(マギ主の場合も)を収めたシンドバッドから放たれる無言の圧力。
3人は何かを理解したのか手を打って笑い出す。


「王ってば可愛いですね」
「うるさい」
「名前(マギ主の場合も)の生足独り占めーって?」

『はいっ!?』

「お邪魔虫は退散しますよ。ただし、早くしてください」


生足って、
出て行った3人の背中に訳の分からない感情を抱きながら名前(マギ主の場合も)は自分を離さないシンドバッドと視線を交わらせた。
腰から巻きつけられたシーツ。
隠すにしては大きいそれに少し戸惑う。


「あまりそういう服を着るな」
『……ヤムライハさんとかピスティさんの方が凄くないですか?』

「…あれは…まぁ、別格だろう」


こちらの世界の服装はどちらかというと露出は多いほうだ。
まだ研ぎ澄まされているにしても、そういう感覚がマヒしているらしい。

好きな奴のそんな姿は見せたくないだなんて。
全く天然でそういうことは気付いてくれない名前(マギ主の場合も)にシンドバッドはやれやれと息を付いた。








捕食草食肉食獣

(思わず食べてしまいたいが)
(キミを狙うものは多いのだから困ったものさ)



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宇佐見様リクエスト
「周りがちゃかしつつも甘々な二人」でした!

甘々できなくてすいませんんんん/(^p^)\
甘いというかほのぼのギャグ…?
アニメ開始日という事で頑張ろうとした結果空回りに終わってしまった…!

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