『ったく…人気者もイヤになるね…』
手ぶらで出てきたのが間違いだったか、と血の滴る二の腕を押さえながら数時間前の自分を嘲笑した。 国の重役ともなると、その命を狙わんとするふとどき者が寄ってくるもの。
シンドリアにいる以上こちらの者に迷惑はかけられない、と一人無防備に出て来た訳だが。 相手を警戒させない為、シンドリアの者にいらぬ世話をかけぬ為、武器を持って来なかったのが間違いだった。 人気のない路地で見事狙い撃ち、遠距離から弓を撃つ相手の姿の黙認もできない。 飛んで来る方向から相手は複数、1つに集中すれば先程の様に己の血を見ることになるだろう。
『(さて…このままじゃ人通りの多いトコには行けない…まず物陰のない見晴らしのいい場所におびき出すか…)』
意識を飛んで来る弓に集中させながら今できる最善の策を考える。 相手の姿が見えれば手負いの自分でもある程度どうにかなる、そう踏んだ名前(マギ主の場合も)が走り出そうとした時。
「ぐあっ!」 「な、なんだお前…!」 「ぎゃあぁぁ!」
『…?……!はぁ!?』
複数の悲鳴。 何事かと建物を駆け上がり見つけたのは。
なにがあったかを理解するには十分な赤い髪の巨体がそこには立っていた。
『マスルール!』
「なんだ」 『…誰も助けてなんて言ってない』 「助けたつもりはない。通り掛かったら血の臭いがした、それだけだ」
『…ふん!』 「ぐえっ!!」
嫌悪する相手に助けられてしまい、しかし助けられた事実上悪態を付く訳にもいかない。 その腹いせにマスルールが掴んでいた残党の顔面に拳を叩き込み、ふー、と息を落ち着ける。
そこらで伸びている他の残党もマスルールが軽々と片手で摘み上げ、引きずって行く。 恐らくジャーファルかそこらに突き出されることだろう。
『(というか、血の匂い以前に私の匂いも分かっただろうに)』
もし本当に血の匂いがしたからと言って、分かってて駆けつけたというのか。 何が助けたつもりなんてないだ。 実際わかっててやったくせに。
なんだか余計にやるせない気持ちになってイライラも募る。 負けたような、でも嬉しかったような。 名前(マギ主の場合も)は気絶した残党の1人の首根っこを掴みマスルールの隣に並んだ。
『バーカ』
「なんのことだ」 『わからないならそれでいいバーカ。物好き』
大きな背中に拳の1つでも叩き込みたかったが片手には残党。片腕には傷が。 しょうがないから王宮に着くまでこの拳はお預けにしておいてやる。
心中で思った瞬間にマスルールに残党を引っ手繰られ空いた手で思わず背中をシバき、傷口が広がったのは言うまでもなかった。
大きな背中小さな傷
(〜〜!!) (…今のはお前の方がバカだろう)
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龍哉様リクエスト シャル妹がピンチなのを、マスルールが助ける話 でした!
槍持ってたら多分名前(マギ主の場合も)は槍投げてましたね← そして残党滅した後マスルールとタイマン張ってたことでしょう←← また私の方も妄想を広げられる良いリクエストでした(´ω`*)
リクエストありがとうございました!
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