桜の舞い散る4月の上旬。

真新しい服は自分が進学を望んだ高校の制服であり、これから3年間この制服と付き合うことになる。
皺の1つもない制服に身を包み、学校指定の鞄を手に持った。
その中身は筆記用具などの最低限のものであり軽くはあったが、胸に秘めた期待感はとても充実している。


「『あ』」


誰もいない玄関から外に出ると幼いころから共に育ってきた幼馴染、黒子テツヤも丁度家から出てきたところであった。
重なった声に思わず笑い声を漏らし小走りで黒子の隣に並ぶ。


『おはようテツくん』
「おはようございます」


中学時代、制服がブレザーだった為学ランの黒子に違和感を覚える。
それは黒子から見てもブレザーがセーラー服になった景斗にも言えることなのだろう。

片手サイズの文庫本を手にして出てきた黒子。
相変わらず変わらないねぇと本を指差し、好きですからと返す黒子に表情にこそ出さない彼の情熱に感服する。

昔から黒子はあまり表に表情を出さない。
長い付き合いである景斗にはその表情は読めるものの彼の本心を読み取るのは至難の技だろう。
しかし黒子は人と対峙する時は本をちゃんと仕舞う。


『テツくんはやっぱりバスケ部?』
「はい。というか誠凛バスケ部の情報調べてくれたのは景斗でしょう」
『あはは、まぁそうだよね』

「で、結局景斗はどうするつもりですか?」

『…私は…どうしようかな……』


足元に視線を落とした景斗に黒子は少し表情に影を落とす。
中学時代の、そして幼い頃から彼女を見てきた黒子にはあまり軽率なことは言えない。



「…もう…バスケはしないんですか?」



ぴたりと足が止まる。
体に染みついた感覚はバスケ、の単語に良くも悪くも反応してしまう。

黒子も足を止め、目線を合わせる。
迷いに揺れた瞳。


『テツくん…私どうしたらいいのかな…?』

「決めるのは景斗ですよ」
『……そうだよね』


「ただ…」
『ただ?』


黒子は嘘を付かない。
揺るぎない決心を持っている黒子の瞳に映る自分。

やっぱり変わらないなぁと思いながらも、彼とずっとずっと道を歩んできた。




「僕はやっぱり、景斗にバスケをやめて欲しくないと思ってます」




これが黒子テツヤの本心であり願望であった。
あんまり止まってると遅刻しますよ、と手を引かれ黒子の後姿を見ながら入学式へと急ぐ。


―だからテツくんには昔から助けられてばっかりなんだよね


景斗はどうしようと考えながらも少しいい方向に考えてもいいかなと思いつつバスケットへの思いを馳せるのであった。




本日は、晴天なり







あおいはる。

(そしてそれは青春と言う)


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※黒子オチじゃないよ!

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